ご覧のような茅葺き屋根の山門が世界的に有名な、京都東山・法然院(ほうねんいん)。
「不許葷辛酒肉入山門」と書かれたこの山門はくぐれるのですが、お寺の建物の中は普段非公開。
しかし、春と秋のそれぞれ1週間だけ伽藍(建物)内が特別公開されます。
この特別公開は、いろいろ癒やされたり考えさせられたりしてとても好きなので、よく行っています。
例えば昨年も。
ということで、今年もこの特別公開を訪ねました!
今回は、「奉祝 天皇陛下御即位 令和元年度 第55回京都非公開文化財特別公開」の一環として特別公開されています。
特別公開の寺社では、学生ボランティアの方がいろいろと説明してくださいます。
よく分かってありがたい。
京都ではおりに触れてこのような特別公開があるのです。
この時にしか見ることができない文化財なので、京都フリークの人にはたまりません。
特別公開をを目当てに全国どころか世界から観光客が来られますが、僕は地元京都在住なのでお散歩感覚です。
法然院は京都盆地の東の端、東山の麓にあります。
すぐ近くに哲学の道、北には銀閣寺と、このあたりは京都でも大人気の観光地ですが、法然院は非公開なので、山門付近以外はひっそりとしています。
先の山門をくぐって、境内に入ります。
振り返って山門を見ると、緑に覆われていて和みますね。
山門の下の参道の両脇には、砂で何やら絵が書かれています。
これは白砂壇(びゃくさだん)。楓と銀杏の葉が書かれていました。
秋らしいです。
白砂壇の意味とは?
水を表わす砂壇の間を通ることは、心身を清めて浄域に入ることを意味している。
法然院オフィシャルサイト
ほんと、心身が清まってゆくようです。
参道を進むと、建物入口手前の手水にも粋な配慮がされています。
本堂。
ご本尊の阿弥陀如来坐像や法然上人立像などが中に安置されています。
本堂の外までは通常でも拝観できるのですが、中へは普段は入れず格子窓からご本尊を拝むことになります。
今回は中に入って、手を合わせることができました(本堂内の撮影は禁止)。
方丈庭園。
11月初旬ですが、まだまだ緑が美しいです。
池にかかる橋は、この世と浄土を渡す橋だそうです。
池の水は境内からの湧き水で「善気水」と呼ばれています。
この善気水を使ってお茶を沸かせて、休憩室で無料で飲ませてくれるんです。とても親切。
この写真を撮っている場所から振り向くと、そこには重要文化財である狩野光信筆の襖絵があります。
ここはとても優雅な空間です。
こちらは花手水。
華やかで素敵。
さて、庭園など伽藍内も素敵なのですが、個人的にこの特別公開のメインイベントはこれです!
メインイベントはご住職の法話です。
法然院のご住職は梶田真章氏。
お寺の内外で幅広く活動されている、とても有名な方です。
毎回興味深い話を伺えますので、楽しみにして来ています。
どんなお話かと言うと…。
資料だけで、これだけの量!
ご住職が作られた資料は、何枚にも渡って両面印刷でみっちりと書かれています。
もう、法話の域を超えているような…。
お話の内容をまとめます。
日本は災害の多い国で、昔からよく災害が起こってきた。
それは残念なことだが、皆で協力して災害を乗り越えて来たということは日本の人々の素晴らしいところである。
仏教は色々な考え方、宗派がある。
修行をして自ら悟りを開くのか、信心をして悟らせていただくか、それとも何も考えず踊っていればいいとするのか。
いろいろな考えが共存し、排他的でないのは日本の仏教の特長。
好みに応じて、宗派を選ぶことができる。
仏教は先祖を供養する場として発展してきた。しかし、今の世になって、先祖を供養したり、子や孫に供養してもらったりという考えが薄くなってきた。
そのような今の世こそ、どのような仏教が自分にとって望ましいのかを考え直す時期かもしれない。
仏教の歴史、特にどのような理念で各宗派に別れていったのかを話しておられました。
質疑応答を含めて40分以上。
もう法話というより仏教についての講義のようなお話しと資料でした。
短い時間ながら少し深く仏教を知ることができ、勉強になりました。
法話が終わって、ところどころにある蹲や手水が気持ちを癒やしてくれます。
方丈庭園には鹿おどしもあって、カコーンと気持ち良い音を奏でていました。
法然院の御朱印は、細字で達筆な筆跡。
「獅子谷 法然院」と書かれていますね。
獅子谷とは京都の東山のふもと鹿ヶ谷のことです。読み方は同じ「ししがたに」です。
現代は観光客で賑わうこの地域。
その名の通り昔は鹿が住む山の麓の緑に囲まれた、静かで修行に適した地だったのでしょう。今も猪はよく出るそうですが。
緑がしっとりとして、心が和む法然院。
そして梶田真章貫主の考えさせられるお話。
やはり法然院は素敵な場所です。
4月はじめと11月初旬のそれぞれ1週間だけ伽藍内が特別公開されますので、機会があれば訪ねてみてくださいませ。
Camera: PENTAX K-3II with SIGMA 17-70mm F2.8-4