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廊下 #3 愚かな選択

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  • ULIBUDDHA/black
  • 2019/10/21 05:15

 

 

・・・・・・・・

つまらない隠し事をしていた。

 

つまらないと言ったけど、

僕にとって、本当は、つまらなくなんてない。

 

これは、もう僕の中で、

今、一番重大な問題になってしまっている。

 

でも、多分、僕じゃなくて、みんなから見ると

かなりつまらない、どうでもいい軽い問題だと思われそうだ。

 

そんなふうな、つまらなくもなくつまらない・・

 

そんな、隠し事をしていた。

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

シナリオ

 

ここは、居酒屋チェーン「○ンズ」

 

関西圏で、当時一世を風靡した居酒屋チェーンだ。広く大きな店内と、今では考えられなくなったファミレス並みの大駐車場を備えている。

 

そう、舞台は、車で酒場に向かう人が、まだいた時代

 

社の同期と、後輩一人。

男ばかり三人で飲んでいた。

 

バカみたいな話をしながら、ふらふらになるまで飲むことが、

この面子の、飲み会でのお約束だった。

 

 

よっぱらい達で満員になった店内は、

うるさく、ざわざわとし、安酒場独特の空気感が漂う。

 

 

そんな、定まらない時間と空間のなかで、

この出来事は、さも、何者かが書いたシナリオのように満を持して成立する。

 

 

 

「しっかし、ホンマにタバコ吸わへんのんすね!」

酔いつぶれた後輩が、たちわるく言った。

 

 

「完璧やめれたわ。もう吸いたくもならへん」

得意げに、言い返す。

僕も、かなり酔いが回っていた。

 

 

「じゃー、一本だけ吸ってみてくださいよう」

ふざける、後輩

 

 

「アホか、お前は。いらんわ!」

 

 

「吸ったらどうなるんすか?いけるんすか?」

先輩に怒る?ざんねんな後輩・・

 

 

~さんざん、こんなバカみたいなやり取りを続けた。

 

酒の場では、往々として訳の分からない気まぐれが起る~

 

 

「いけるわ!かしてみいやボケなすー」

なぜかキレてタバコを吸う残念な僕がいた。

 

 

気まぐれは、時として禁断の世界への扉を開かせる。

 

 

ただ、その時は、酔っていたせいか、

思ったより美味くもなく、ただ単に吸っただけ。

 

全然大丈夫!

それが、半年ぶりに喫煙した感想だった。

 

 

「ふ~、酒の場の一服は上手いね~」

 

「さすがっす」

 

「なにがやねん!」

 

 

 

 

楽しい飲み会だった・・

少なくとも、この時はそうだった。

 

Content image

 

 

 

 

○○○○○○

 

 

 

 

 

二日酔い

 

 

昨日は、完璧に飲み過ぎた。

 

土曜の夜だったんで油断した。

 

二日酔いで頭が重い・・

 

今日は、彼女が、一緒に映画を観に行くって言った日だった。

 

チケットも、前売りで席番も決まってるから忘れたら殺すって言ってたな、

 

とにかく、お風呂に入って

 

ムースで髪を固めてっと・・

 

 

お風呂から上がって、色々とデートの準備をしているうちに、

二日酔いも、昨日の事も、すっかり忘れている僕がいた。

 

 

では、出発!

 

僕は、自慢のロータリーエンジンに火を入れた。

 

気のせいか、アイドリングが、いつもより少し高かった。

 

 

いまでも、なぜだろう・・

この日の事を、不思議なくらいおぼえている。

 

 

 

 

 

○○○○○○○○

 

 

 

 

ハッとする

 

ご機嫌に、カーステから流れる音楽

B’zの稲葉さんと一緒に大声で歌いながら車をとばす。

 

待ち合わせは、彼女の家の近くのコンビニだ。

 

最近、男友達とばかり遊んでいたんで、

今日は、もう、今からトキメキが止まらない。

彼女の方も、きっと、かなり期待している事だと思う。

 

 

 

はっきり言って、

この時の僕たちの恋愛は、とても未熟だった。

今思えば、お互い自分勝手に相手を振り回していた。

21歳と19歳の二人は、セックス中心で恋をしている。

 

でも、こんな、幸せの中にに戻れたのも・・

 

あの時の・・

 

あの、陰陽師みたいな、アノ人のお陰だった。

 

あの・・

おまじないのように、印を切ってもらった数日後に

僕は、倒れた。

 

過労で、肝臓が座布団のように腫れていたらしい・・

医者に、エコー画像を見せてもらったが、肝臓の原形を知らない僕には、

正直、あまりよく分からなかった。

 

 

とにかく、二週間ほど入院できたので、あの地獄から解放された。

退院後の僕に、会社は流石に、35時間の労働はさせてくれなかった。

 

助かった・・思いもせぬ展開であの地獄から抜け出すことができた。

 

しかし、アノ人。

あの、陰陽師みたいな女の人は、僕との別れ際になんて言ったんだろう?

 

「ありがとうございます。・・・・・・・・・・・・ね。」

 

どうしても、アノ人の後半の言葉がおもいだせなかった。

つい最近の事なのになぜだろう・・

 

 

そんな事を、考えながらコンビニの駐車場に着いた。

バンパーが低いので、いつもの車止めの無い

端っこの駐車場スペースに入る。

 

 

と、直ぐに、彼女が来た。

て言うか。コンビニから出てきた。

 

ハッとする、ミニスカの長身。

 

そいつが、乱暴に勢いよく僕の車に乗り込んできた。

 

僕は、遅刻したらしく。早く映画館へ向かえと怒られた。

 

Content image

 

 

そんなことより、彼女の太ももが気にる。

スポーツカーの狭い助手席に座った彼女の姿は、圧巻だった。

長く綺麗な脚。もともと、毛深いらしい彼女。

しっかりとムダ毛処理をしたばかりの、あの、ぼつぼつ感が、

当時の僕のフェチ心を掴んで放さなかった。

 

「いつ、剃ったん?」僕

 

「朝やで」彼女

 

「ちょっと触ってもええ?」僕

 

「ええよ」

「ええけど、早いかな、映画間に合わへんやろ」彼女

 

ちょっと怒ってるみたいだが、まんざらでもないようだ。

 

会って5分で、太ももを触っていた。

そして、ついでのようなキスをした。

 

「んっ・・」彼女

 

彼女は、もう目が、とろけたようになっている。

彼女は、舌先がとても・・

 

ヤバ!

 

ここは、真昼のコンビニの駐車場なんだ。

 

互いに、スッと引き放す。

 

端っこの駐車スペースだけど、

この車の窓にはスモークは、貼っていない。

 

誰かに、見られたかも知れない・・

 

 

まあいいや。

大した問題ではない・・

 

気持ちを切りかえて、映画館へ向かった。

 

悶々とする車内。

互いに、求め合う気持ちでいっぱいだった。

 

そう、思っていた。

 

立ち上がりの加速。

 

アクセルを踏み込む。

 

パァーン。

 

都会に鳴り響くバックファイヤーの音が、気分を盛り上げた。

 

なぜだろう・・

この日の事を、不思議なくらいおぼえている。

 

 

もしかすると、

僕の人生でのすべての選択肢が、

あの廊下の先へ繋がっているのではないかと言う思いにのみ込まれる。

 

Content image

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

人間の屑

 

 

あの映画のせいだ・・

 

 

恥ずかしい事なんだけど。

 

僕は・・

 

愛車のフロアマットの下に、

マイルドセブンと100円ライターを隠し持っている。

 

ちなみに、21歳の成人です。

 

 

ただ、僕は、ただ禁煙に破れた成人なのです。

 

 

 

「ヘビースモーカーがタバコを止めるってことは、麻薬中毒者が、麻薬を止めることより、まだ難しいことやねん、すんごい意思の力がいるからな・・」

「これが出来た人は、何でもできる・・」

 

そう、僕は、何だって出来る・・

 

なんて、半年前に、馬鹿みたいに言わなければよっかった。

 

 

そして、今のところ、彼女は、

まったく持って、そのことに気が付いていない。

 

 

何んせ、本当に半年間ものあいだ、一本も

タバコを吸っていなかったんだから・・

 

 

半年タバコを吸わなければ、

苦しさとか、禁断症状とか、

もう、そんなのは、まったく感じない領域に入る。

 

 

つい最近までは、

別に、無理して吸わなかった訳でもなかったし、

自分でも、完全にタバコと決別できたと自覚していた。

 

 

そう

ジャックが、僕に呪いをかけるまではね。

 

 

 

おかげで、それからの僕は、当分の間

 

彼女と会うたびに、

 

セックスの快楽をとるか?

 

タバコを吸う快楽をとるか?

 

そんな、自分勝手な、人間の屑のような二択に迫られる事になる。

 

いつでも、この選択が最優先された。

 

時には、悪びれてワザと喧嘩を売って早々に帰った。

 

仕事を理由にしては、嘘をついて彼女の期待を裏切った。

 

 

すべては、

一つの小さな真実を誤魔化すだけのために・・

 

 

 

僕は、堕ちた。

 

器の小ささについては、太宰のソレを超えていると思った。

 

しかし、なぜだろう・・

そんな風に、彼女を粗末に扱えば、扱うほど、

彼女は、僕に夢中になっていった。

 

対人関係でのパワーバランスが変わるとは、

こんな事を言うんだろうと感じたりもしていた。

 

こんなものが、経験をともなう深い理解になって欲しくはない・・

何か、違うはずだ。

 

それでも、また禁断の時間はやってくる。

 

 

 

 

いつの間にか、

彼女は、僕の言いなりになっていた。

 

 

 

 

つづく

 

 

#2へ     #4へ

 

 

この未熟な文章を最後まで読んでくださった優しさに心より感謝申し上げます。

 

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