アマゾンプライムで見た。
AV女優を一見平気そうにしている女の子。
初めてその道に一歩を踏み出す女の子。
母親がAV女優だった(そして父親はAV男優だった)ことが、学校で発覚し、悩む女子高生。
の3人が主人公で
もしかしたら、しょうもないVシネマみたいな感じだったら
途中でやめようと思っていた。
が、ちゃんとした文芸であり、ちゃんとした芸術だった。
途中までは、その三者はAVに対する姿勢において別々のスタンスをもっている役回りなのかと思った。
受容、葛藤、傷つきみたいな。
作品だから、本当はひとりの中にあるすべての側面を登場人物に分けるのかと思った。
だけど、それは単純な考えで、初めに表面に見えたものがどうであれ、
そしてその濃淡にどんな差があれ、
入れ子状に全員の中に全部があるのが見えてきた気がする。
ラスト近く、葛藤の中でAVに踏み出した女性の父親が死んだ。
女子高生が母親の代わりに来ましたと、その通夜の席に来て
彼女の父親がこの人であったことがわかる。
女子高生の手に絵の具がついているのを見た腹違いの姉(葛藤の中、AVに踏み出した女性)が、
父親の描いていた絵や、好きだった画家の画集のある部屋に連れていく。
その画家こそ、女子高生が愛してやまない画家であり、
美術の才能にあふれていた彼女が作風を踏襲していた画家だった。
これはしっかり伏線が張ってあり、この子が進みたいのは美術の道だということははっきりしていたし、好きな画家の名前もからかい半分の同級生たちに聞かれていたので、
唐突な辻褄合わせ的なラストにはなっていなかった。
彼女の中の中核的な部分、画家としては挫折したAV男優だった父親の中核的な部分が、光の中で呼応するシーンだった。
AV、AVというけれど、それはただ典型的でわかりやすいだけで、
自分の中核的な部分に輝いているものを生きられなかった人は、とどのつまり同じ課題をかかえて現実を生きている。
その現実の自分の姿が、世間で蔑まされる種類のものであろうと、
むしろ賞揚されるようなものであろうと(学校の先生とか。ゲロゲロ)、
本当は同じことなのだ。
賞揚されると気がつかない人もいるので、余計に始末に悪い場合すらある。
つまり、僕も同じということ。
追伸 AVの撮影シーンは、メタAVとして、そこらのAVよりもよほど、エロティックだった。
追伸2 ああ、ストーリーの解説を読むと、性を商品化した生き方が、人との出会いにより(変化に向けて)動き出していくと書いていた。なるほど、言われてみれば、そういうストーリーなのに、そこにフォーカスしてなかった自分を感じた。僕がフォーカスしたのは、好きな画家がいて描きたい世界があった女子高生の内面だけで、他の様々な人間関係に殆ど心を動かされなかった。そういう自分の特異性を感じた。