僕のNOTE
ALISとNOTEは原理というか哲学というか、思想というか、そういう根底的なところに違いがあり、その結果が仕様の違いに表現されていると思う。
NOTEは飽くまでも円経済圏の中で、電子によって文章を無料で見たり、有料で買ったり、投げ銭をしたりするものだ。
無料記事を見ることやいいねを押すことはアカウントがなくてもできる。
有料記事購入や投げ銭も、アカウントがなくても、クレジットカードなどで決済できる。
NOTEにはプロの作家が何人もいる。
有名作家の執筆中の草稿が読めたり(後で本になって店頭に出る)、出版不況のあおりで本が売れないためにNOTEにやってきた作家もいる。(最近では、乙武さんが「私の本が売れないので」と事情までカミングアウトしてやって来た。)
今の出版業界は本当に厳しくて、新刊本はよほどの売れ筋でないとすぐに店頭から消えるし、倉庫代と売り上げのグラフが交叉して、倉庫代の方が高くなると断裁してしまう出版社も多い。
僕がNOTEに出しているいくつかの評論や小説は製本版が売り切れて増刷がなかったり(出版社が倒産したものもある)、既に断裁されて、アマゾンマーケットプレイスでは古本を高値でしか購入できなかったりするものだ。
ここが奇妙なところでもあるのだが、僕のような売れない「作家」(それで生活できない者をそう呼ぶのはどうかと思うが)の少部数の本は、新品が絶版されてしまうと、少部数にコアなフアンがついているため、いったんベストセラーになったもの(世の中に部数が多い)より、高値で取引きされるようになる。
僕の本でも何千円とか何万円とかいうものもあるが、それを読者が買ってくれても古本なので著者には一円も印税が入らない。
そこで僕は改訂増補版などをNOTEにリーズナブルな価格で出し、電子で読めるようにすることを思いつき、NOTEを始めたのである。
NOTEなら手数料を除いた全額が著者に振り込まれる。
紙の本を流通に載せると著者には、最大でも小売り価格の10パーセントしか印税が入らないので、NOTEは大変効率がいい。
ただし、日本ではまだまだ電子で買うという習慣が定着していないためか、紙の本より売り上げは随分悪くなる。
また僕は「過去に雑誌に掲載されたが、単行本に収録されていないためにその雑誌が店頭から消えた後はアクセスできなくなっている作品」も、NOTEで読めるようにしている。
ほとんどのものは短いので今のところだいたい無料にしている。
それで、僕という人間の書く文章が気にいってもらえたら、有料のもの(本1冊分など)を購入してくれたらいいという思いだ。
あまり期待してなかったことだが、無料の記事で心動かされた人が投げ銭をしてくれる例も時々ある。
中には、バブルの頃にコンクールで優勝し、原稿用紙たった5枚で100万円もらったエッセイもあり、これも無料だ。
同じものはALISにも出した。
まずはこの作品をもとにNOTEとALISの機能との違いを検討してみよう。
NOTEはアカウントを持っていなくても「いいね」ができるのでこの作品には100以上の「いいね」がついている。
しかし、無料で読んで「いいね」を押してくれるだけ。または紹介していただけて他の読者の呼び水になったことがあったが、「投げ銭」はごく稀である。
ALISなら、この作品を読んだ人が、「よかった」と感じて「いいね」を押してくれさえすれば、その人が円で自腹を切らなくても、僕に仮想通貨ALISが入る。
それどころか「いいね」を押してくださった方にも少しだがALISが入る。
だから、無から価値を創り出しているのであり、誰も円を用いないで、通貨が増えるわけだ。
ただし、このシステムをとる限りは、同一人物が何度もいいねを押すことを厳密に避けなければならない。
だからALISではアカウントを持っている人しか、いいねができない。
僕が4000人以上の友達のいるFacebookで「NOTEに貼ったよ」と宣伝したとき、NOTEに読みに来た人は心動かされたら、アカウントがなくても「いいね」を押してくれるのだが、それは収入にはならない。
同じく僕が4000人以上の友達のいるFacebookで「ALISに貼ったよ」と宣伝したとき、ALISに読みに来たとする。
その時、その人が既にアカウントを持っていて、しかも心動かされたら「いいね」を押してくれるだろう。そしてそれは円を消費しないで、僕とその人にALISという仮想通貨による価値を生み出す。
ただし、その人がアカウントを持っていなければそれはできない。
そして、自分自身も何かを発表しようとしている人や、自分も仮想通貨に関心のある人以外は、普通は、アカウントをわざわざ作らないだろう。
ひとまずこれがNOTEの無料記事と、ALISの記事(有料にはできない)の違いであろう。
NOTEで無料記事にしていた場合どれだけの人が投げ銭してくれるかが円による収入。
ALISの記事はどれだけの「アカウントを持っている人」が「いいね」を押して、無から価値を作り出してくれるかが、仮想通貨ALISによる収入になるわけだ。
今日はまず、この「フリー(無料)の場合の相違」についてだけ改めて整理するところまでにしよう。
この考察は作品の質はどちらが高まるかなど、様々な側面からしばらく続きます。