なんと死刑台への階段の数と言われる第一三回で終わりです。
第一回から第七回までは各10ALIS。
第八回から第一三回までは値下げ断行、各5ALISです。
(本日の小説本文)
随分と長い時間、雨に打たれて立ち尽くしていた。とうとう雨は止み、霧も晴れてきた。
またのっそりと行列が動き始めた。さっきまですぐ前は学生風の若い男たちのグループだと思っていたが、明るくなった光の中、いつのまにか中年女性の二人組に変わっていた。
山と空の接するところがすぐそこに迫ってきた。空は随分明るくなり、晴れ間が見えていた。最後の数十メートルは一気に駆け登った。遮るもののない開かれた空についに自らの頭を突き出した。
山頂から眺め渡すと眼下には遥かな雲海が続いていた。
手ごろな岩の上に腰掛けて水を一杯飲み、カロリーメイトを一本頬張った。続けてもう一本頬張り、かわいた口腔内に引っ付くのを水で喉に流し込んだ。
しばらく休憩した後、火口を一周することにした。父の遺灰を撒くにふさわしい場所を探すという意味もあった。
火口を覗き込むと、真夏だというのに一部に雪が解けずに残っている。火口の形の関係で影になり、日照時間の少ない箇所に雪が残ったのだろう。あそこをスノーボードで滑っていけば二度と出られなくなるのだなと思うと愉快な気がした。
そんなことを考えながら歩いていると、知らぬ間に一周を終えてしまった。
そこで今度は測候所のアルミニウムの足場に昇ってみることにした。足場はベランダのように空に突き出している。雲海を背景に人々が写真を撮っていた。すこし順番を待ってから手すりに近づいていき、遥かに広がる雲海を眺めた。
(えっ? 実話だったの? さあ、それはどうかな。 小説はいつも虚実皮膜です。)