父の遺体は自宅の居間に、翌日までまる一日寝かされていた。親戚や知り合い、近所の人などが、ぽつぽつと現れては、線香だけあげて帰っていった。
中に見たことのない女がいた。歳の頃は五十歳前ぐらいに見えた。目鼻立ちがしっかりしていて美人である。
鼻の頭が少し丸いのが特徴といえば特徴だった。その鼻は鋭利な美しさを少し損なってしまっているようでもあり、奇妙な色気を醸し出しているようでもあった。
喪服を来た姿は、余計に色気を有していた。その女は父の遺体の傍らに正座してしばらく泣いていた。
それから今度気がつくとまるで家族のように台所の椅子に座っていた。
「友子さん。いつもお手伝いに来てくれている……」と母が僕に紹介した。
「ああ、あなたが友子さんですか」