今回は「世の中に売り出すマーケティング編」をお届けします。全体の目次はこちらになります。
キャッチコピーを決める
いまの世の中はサービスが溢れてしまっていて、新しく何かが生まれたとしても、一瞬でそのサービスが「自分にとって役立つのか」が理解されないと、なかなか世の中に浸透していくことが難しい時代になってきたと感じます。
そのサービスをあらわす一言=キャッチコピーが100点満点だったら、100%の理解度で対象となる人々に伝わり、もし、そのキャッチコピー50点だとしたら、50%でしか伝わらないので、浸透率が大きく変わってきてしまうというようなイメージです。
そんな前提で出てきた候補が下記になりまして、
アニメファンが公式アニメ記事を翻訳
みんなの「Tokyo Honyaku Quest」実験中
翻訳クラウドゲーム「Tokyo Honyaku Quest」実験中
アニメファンが公式アニメニュースを翻訳、みんなでクエストをクリアしよう
キミの翻訳を世界に届けよう!
アニメファンのための「Tokyo Honyaku Quest」
上から「公式感や実験感を強調」、「ゲーム性やエンタメ感を強調」、「自分の翻訳が世界に広まるワクワク感を強調」で、どれが正解でどれが不正解というわけではないのですが、私たちは、翻訳者が主役でありグローバルな世界が舞台であることも伝わる、3番目の案を採用したのでした。
ここで決めたキャッチコピーはサイトのトップページで掲載されています。
初期ユーザーを集める
「ホンヤククエスト」のサービスにおいてもっとも重要な登場人物といっていいのが、コンテンツを翻訳してくれるトランスレイターたちです。英語ネイティブで日本語も読める一定の翻訳スキルを持ったを方たちをいかに集められるか、最善手はTOMのFacebookページを活用することでした。
TOMのFBは北米・英語圏中心に2,000万人の「いいね」がついており、オタク文化を愛してやまない人たちが見てくれている媒体です。黎明期からTOMのFacebookページを育ててきたファンと、翻訳者とのコミュニケーションを香港出身でバレーボールの元香港代表選手だったタンが共同で担当し、「日本語のクイズ」をテーマに投稿し、Facebookグループへ誘導していきます。日本人から見ると何の変哲もない内容に見えますが、アニメ好きで日本語に興味津々なファンにはウケるという一例です。
2019年8月現在、1,200名を超える候補者が集まり、候補者には下記のようにGoogleフォームを活用した30分のガチの翻訳テストを行ってもらいパイロット版参加の条件としました。結果25名のファンたちがパイロット版で活躍してもらうことになっています。また、タンが率先して各人と1人1人面談を行っています(たまたま東京に住んでいた方もいてランチもご一緒したことも)。
ちなみに、「ホンヤククエスト」では、ハイレベルな人だけに限定して翻訳するよりも、もっと幅広いファンに気軽に翻訳に参加してほしいと考えていて、実証実験を終えたら、翻訳スキルによる参加条件を徐々に緩和していく予定です。
カスタマーサポートとツールを導入する
あらゆるサービスにはお客様=カスタマーがいます。カスタマーからのお問い合わせには単に回答するだけのでなく、コミュニケーションをとることでサービスの方向性、次に実装すべき機能の優先度を絶えず調整していくための情報を得ることができます。
ただ、メール、お問合せフォーム、Facebook・Twitterのような各種SNSなど、カスタマーとのタッチポイントが複数になると、誰がどのお問い合わせに対応していて、いまどんなステータスなのかが煩雑になり、カスタマーサポートをスムーズに回すのがだんだんと難しくなっていきます。
そこでおすすめしたいのがZendeskです。さまざまなタッチポイントを1箇所にまとめ、1件のお問い合わせを1つのチケットにして、担当者と現在のステータスがひと目で分かるようになるので、毎日一定数以上のお問い合わせにミスなく対応するならマストなツールといえます。
「問い合わせが来て一回目に返信するまでの平均時間」がわかったり、「(設定すると)問い合わせ対応のやりとりの満足度を図れる」など、かゆいところに手が届く仕様になっていて、カスタマーサポート自体のPDCAサイクルを回せるようになっている点もポイントが高いです。また、ヘルプセンターといって、「よくある質問」をWiki形式でエンジニアでなくても内容のアップデートも行えるので、同じような問い合わせはカスタマーの自己解決を行ってもらえるようにも誘導ができます。あとはなんといっても(プランによりますが)費用が1アカウント月5ドルと格安なので、オススメ中のオススメです!
プレスリリースを打ちイベントを開催する
サービスを作っていて、もっともドキドキする瞬間はプレスリリースやイベントでのお披露目のときではないでしょうか。あるサービスが世の中に出てくるまでには、裏側ではたいてい多くの人や、思わぬたくさんのタスクがバタバタと展開されていて、世の中にお披露目されたときの反響や評判で苦労が報われたり(報われなかったり)するものです。
2019年7月12日、「ホンヤククエスト」の実証実験の開始をPR TIMESを通じてプレスリリースしました。ありがたいことに、30媒体近くのメディアで取り上げられました。TOMのコーポレートサイトにも掲載しています。
土本さん・三瀬さんをはじめ、3社の広報にもサポートいただきました。bitFlyerは金光さん、TOMからは創業メンバーでコーポレートオフィサーの秋山が担当しました。
今回この記事を書いている理由のひとつにもなっていることですが、本来サービスの裏舞台というのはスポットが当たらず、利用者やクライアントに近いポジションを担っているプロデューサーやマーケティングやSNS運用や営業や広報といった役割の人だけが注目されがちです。しかしながら、ここまで書いてきたように、デザイナーやエンジニア、それをとりまとめるPMやディレクター、連携する企業をまとめるための契約書をつくる法務・経理・総務をはじめとしたバックオフィスのメンバーなど、さまざまな役割の方の支えがあって、こうしたサービスが世の中に出てくるのです。
2019年7月18日、bitFlyer Blockchain、イード、TOMの3社の代表が集まり、記者会見イベント(厳密にはbitFlyer Blockchainの不動産関連の提携発表の別パートでのお披露目)を行いました。写真の奥に記者会見でよくある各社のロゴが掲載されたパネルボードがあると思いますが、資料作りに加えてこちらの画を撮るために、bitFlyerの三瀬さんたちが徹夜されて組み立てられたと聞いています。こうしたひとつひとつの頑張りは普段注目されることはないですが、まさに今回の記事を通して、「たしかにこういうパネルボードも勝手にできあがるわけではないよな」と裏方にも思いを馳せてもらえたら嬉しく思います。
“賊軍”の彼らを“官軍”にしたい――世界中のファンがアニメ記事を翻訳する「Tokyo Honyaku Quest」の意義
検証項目を設計する
ウェブサービスは、ありとあらゆる数値がログとして取得できて、分析できるところが面白いところでしょう。独自に開発実装しなければ取りづらいデータもありますが、ほとんどの場合、Google Analyticsなどの無料ツールで取りたい数値が取得可能です。
「ホンヤククエスト」でも、検証項目を出して、それぞれにデータを取得&分析ができるように設定しました(念のため申し上げると、個人を特定するような情報をとっているわけではありません。個人情報のプライバシーは遵守しています)。
これらの検証項目を毎日・毎週・月単位で数値を追ったりグラフで遷移を出していくと、どれくらいサービスが成長しているのかがひとめで分かり、目標に対しての達成度なども図れるようになります。
今回は、実証実験時に最低これくらいの数値を達成できない場合は、撤退もやむなしというデッドラインも設けて本気で取り組んでいます。結果は神のみぞ知るですが、やるからには全力でやりきろうという気持ちで、いままさにこのプロジェクトを進めている真っ最中です!
以上、新しいサービスはどう作られているか、その舞台裏をなるべく限界まで公開してきました。プロジェクトの開始からパイロット版サイトの完成まで、追体験できていたとしたらとても嬉しいです。
実証実験の検証は2019年内いっぱいを予定しています。2020年には、翻訳の依頼主、そして翻訳をしたいファンを拡張させていく予定です。こちらの記事をご覧になったみなさまや、みなさまの周りに、「私もホンヤククエストで翻訳してみたい」「ちょうど翻訳の発注をしたいと思っていたので依頼主になってあげるよ」という方がいたら、ぜひお気軽にご相談ください。最初は日英翻訳のみとなりますが、コンテンツの対象は、アニメ・マンガ・ゲーム・ラノベといったオタク系コンテンツ、アニメの公式Twitter、Vtuberなど幅広く受け付けておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。ここまで長々とお付き合いいただきありがとうございます。
お問い合わせはカスタマーサポートまでお気軽にどうぞ!
次回はおまけパート「番外編」をお届けします。