NHK大河ドラマ『麒麟がくる』は2020年3月15日、第九回「信長の失敗」を放送しました。『麒麟がくる』は明智光秀を主人公としたドラマですが、この回の前半は主人公(長谷川博己)が全く登場せず、帰蝶(川口春奈)が嫁いだ織田信長(染谷将太)の話になりました。
織田信長は帰蝶との祝言を無視して、化け物がいるとされる池に行っていました。合理主義者の信長は化け物がいると思っていませんが、村人が信じているならば、村人と一緒の気持ちになり、自ら池に入って村人を安心させます。このエピソードは『信長公記』の「あまが池」の話が下敷きです。愛知県名古屋市西区には信長が飛び込んだという蛇池があります。
後の徳川家康である松平竹千代(岩田琉聖)に至っては、まだ子どもなのに将棋でわざと負けています。あの年で接待将棋を身につけています。戦国三英傑ともなると自分が優秀なだけではダメで、相手に合わせる苦労も必要なのかと暗澹たる気持ちにさせられます。
これに比べると第七回「帰蝶の願い」の明智光秀は痛快です。斎藤道三(本木雅弘)に「用はない。帰れ」と言われ、「分りました。帰ります」と帰ってしまいます。パワハラ上司に「やる気がないなら帰れ」と言われた時に真似したい行動です。
昭和の説教臭い時代劇ならば信長や竹千代を大人物と描き、光秀を優秀でも何か足らない人と描いたでしょう。その光秀が21世紀には大河ドラマの主人公として活躍します。時代は動いています。これまで明智光秀は我慢に我慢を重ねて、遂に耐えかねて本能寺の変を起こしたというイメージでしたが、昭和の感覚では「そんなことで」と思えるような理由が動機になるかもしれません。新たな光秀像に期待が高まります。
信長は帰蝶と初対面で「嫁いでくるのは蝮の娘と聞いていた。いかな蛇女かと思うたが、いらぬ心配だったようじゃ」と言います。川口春奈さんは麻薬取締法違反の沢尻エリカさんの尻拭いという不幸なキャスティングのされ方でした。しかし、最初から帰蝶役に適していると感じられます。逆に沢尻エリカさんの帰蝶が考えられません。沢尻エリカさんの帰蝶ならば、蝮の娘、蛇女らしいとなってしまいそうです。
後半は光秀の正妻となる妻木煕子(木村文乃)が登場します。史実の光秀の妻は煕子だけであり、圧倒的なヒロインになってもおかしくはありません。ところが、『麒麟がくる』では駒(門脇麦)や帰蝶が登場しており、ありきたりな登場では霞んでしまいます。かくれんぼには意表を突かれました。
煕子役の木村文乃さんと帰蝶役の川口春奈さんには共通点があります。ともに冤罪と戦う弁護士を演じています。木村文乃さんは『99.9 刑事専門弁護士 SEASONⅡ』、川口春奈さんは『イノセンス 冤罪弁護士』です。『麒麟がくる』の麒麟は民を飢えや戦乱の苦しみから解放する存在です。冤罪と戦うヒロインは麒麟のパートナーにふさわしいと言えるでしょう。
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