試験前に「指を10回を鳴らす」だけで成績が21%アップ
原子の人類は、 先行きが見えない状況を生き抜くべく、あるシンプルな指標に目をつけました。それが、「反復」です。
同じ時期に同じ場所で
果実を実らせるバオバブの木、
特定のエリアを一定の周期で回遊するオオカモシカ、
特定の季節にパンデミックを繰り返す感染症。
不確定性が高い環境では、 同じタイミングで何度も目の前に現れる事象に注目し、より正確な予想を立てられたものだけが生き残ります。抽象を嫌う獣は「反復」を具象のサインだと捉えたわけです。
その結果、獣の内部には「反復」 に強く反応するセンサーが備わりました。 何度も繰り返されるものに魅力を覚え、「反復」に対してモチベーションを高めるようなプログラムが実装されたのです。
宣伝は必ず単純で反復でなければいけない。「与論に影響を与えるのは、問題を単純な言葉に変えて繰り返すことができる勇気のある人物だけだ」この言葉通り、ナチスのプロパガンダが類のない成功を収めたのは周知の事実。どれだけファクトにもとづかない言葉でも、何千回となく見せつければ真実に変わる、というわけです。
「マイ儀式」つくりの2条件
獣はどのような無意味な儀式にでも反応します。テニスのラファエル・ナダルがいつも2本のボトルから交互に水を飲むように、陸上のミシェル・ジェネクが試合前に不思議なダンスを踊るように、実際のタスクには直接的な関わりがない動作でも構いません。
儀式を作る際に大事なのは次の2点です。
①「この動作をしたら大事な作業に取り組む」と決めておく
② 決めた手順を何度も繰り返す
実用性が高い「儀式」を作る方法です。
朝一は簡単なタスクから手をつけると集中力が加速する
朝に1日のタスクを全て書き出し、簡単なタスクをリストの先頭にまとめ、その順番通りに作業を進める。
①行動を変えたい時には、自分が取った行動だけを記録する
②結果を出したい時には、結果への過程だけを記憶する
・貯金を増やしたければ、貯金額の増減だけを記録する
・タバコをやめたければ、タバコを吸わなかった日数だけを記録する
・運動を続けたければ、ジムに行った日数だけを記録する
ここを間違えると記録の効果は激減します。記録をつける時は、必ず行動と結果の対応を取ってください。記録の効果が出るまでの目安は最低でも2ヶ月です。即効性はないテクニックなので、数日で効果を実感できなくても諦めずに続けること。
8〜9割の確率で耐えられる我慢が、心を強くする
具体的には次のような行為が挙げられます。
・好きなお酒をちょっとだけ我慢する
・利き手ではない方の手でマウスを操作する
・背中が曲がっていることに気付いたら背筋を伸ばす
普段から小さな忍耐を積み重ねておけば、まったく違うシチュエーションでも集中力が出やすくなるという事実です。好きな酒を少しだけ耐えたり、慣れない動作でマウスを操作したりと、一見すると何の意味もなさそうな日常の我慢が、あなたの集中力の土台を底上げしてくれます。
「小さな不快」で集中力が上がるのは、先の「記憶」で見たメカニズムと同じように、自己への信頼感を育む働きがあるからです。日常的に小さな我慢を繰り返していると、少しずつ獣の中に、「自分には未来の結果を左右する力があるのだ」との感覚が生まれます。「誘惑に耐えた」という小さな成功体験のおかげで、人生のコントロール感覚が高まった状態です。
この新たな感覚が「未来の成功を左右するのは自分なのだ」との認識に繋がり、そのぶんだけ目の前の誘惑に耐えようとするモチベーションが上昇。結果的に集中力がアップしていきます。
言い換えれば、「小さな不快」とは 筋トレのようなものです。
・仕事を止めて休憩したくなったら、あと5分だけ続ける
・ふとスマホをチェックしたくなったら、あと5分だけ目の前の作業を続ける
・腹筋運動をやめたくなったら、あと5回だけ続ける
・読書に集中できなくなったら、あと5ページだけ読む
作業を止めたくなったら、とにかく5の数を使ってタスクを続けてください。このルールを守るだけでも、あなたの生産性にはかなりの差が出ます。
「作業をする気が起きない・・・」その気持ちがよぎったら、すかさず脳内で「5、4、3、2、1」と心の中でカウントダウンをスタートし、そのあいだに、とにかくタスクに取りかかってください。これで必ずしも仕事に取りかかれるとは言いませんが、何の対策も取らずに作業を先延ばしするよりは確実に生産性が上がります。
具体的には次のような行為です。
・状況:「書類を作らねばならないが取りかかれない」
・対策:「頭のなかで5からカウントダウンを始め、0になるまでにとりあえずキーボードを叩き始める」
・状況:「運動したいのに気持ちが上がらない」
・対策:「頭の中で5からカウントダウンを始め、ゼロになるまでにとりあえずその場でスクワットを始める」
カウントダウンが効くのは、獣の時間感覚が刺激されるからです。
「5のルール」を使う際は、「固定式ビジュアルリマインダー」の要領で常に目の届く場所に置いておくのがおすすめです。
「仕事を止めたくなったら、あと5分だけ続ける」
「作業に取りかかれないときは頭の中で5からカウントダウン」
などと書き出し、視界に入る位置にセットしておきましょう。
・儀式1「8時になったらデイリータスクの中から、最も簡単にできそうなものを選んで最優先に取り組む」
↓
・儀式2「簡単なタスクを終えたら、今度は最も難しい作業に取り組む」
↓
・儀式3「難しい作業を終えたら、 外に出て10分だけランニングする」
・儀式1「夕飯を食べ終わったら、 15分の瞑想をする」
↓
・儀式2「15分の瞑想を終えたら、『報酬感覚プランニング』のシートに明日の計画を書き込む」
↓
・儀式3「『報酬感覚プランニン』を終えたら、 ダラダラせずにすぐ寝る」
スタッキングを行う際は、すでに身についた儀式の中に新たな行動を組み込むのも効果的です。例えば、現時点で「運動をする→ 瞑想をする」といった手順が儀式化されているなら、「運動をする→読書をする→瞑想をする」といったように、あなたの行動を間に挟み込ましょう。
・儀式が自動化されるには、最低でも週に4回は行う必要がある
・6週目までは徹底的に反復をしないと、それ以降は元に戻ってしまう
「ひとつの儀式を週4以上のペースで6〜8週間は行う」と考えておくと、何の指標もないよりは、確実にモチベーションが上がります。
「なりたい自分になる」ためには物語が効く
物語を通して人は自分を見出していく
あなたが「私は根本的に読者家なのだ」と自己を定義していた場合は、事態が大きく変わります。 もし集中が続かなそうな状況に襲われたとしても、反射的に「読書家」という自己像を守ろうとする意識が働き、 本の内容をに意識を戻す確率が自然に上がります。
ヒトのこのような振る舞いは、 専門的に「認知的不協和」と呼ばれます。矛盾した状態に置かれた人間は本能的に不快感を抱き、 本人も気づかぬうちに態度を変えてしまう、そんな現象を指す言葉です。
ランニングに集中したければ「私はランナーだ」と自分を定義し、仕事に集中したければ「 私は仕事をやり抜くタイプの人間なのだ」と自分を定義する。
(「思い込みを捨てれば何でもうまくいく!」といったアドバイスも見かけますが、個人の世界観がそう簡単に再定義できるなら苦労はありません。私たちが抱く世界観とは、長年の暮らしで少しずつ構築された生活習慣病のようなものであり、改善するには相応の時間が必要になります。)