(自生していた「龍眼」の実。ライチみたいな食感で甘くて美味しいですよ)
開発と発展に向けた世界的な共通課題として「持続可能な開発」という考え方が共有されて久しいですね。
国連が掲げる「Sustainable Development Goals(SDGs)」を世界各地で、世界中の人々がどのように実現していくのかということが求められています。
そうした時に、これを環境保護と経済活動を絡ませた「グリーンエコノミー(中国語では綠色經濟、绿色经济)」という形で実現していくことを目指し、ここにブロックチェーンを組み込んで行こうという動きが現れてきています。
ちなみに、SDGsとブロックチェーンとの関係については、MALISさんのこちらの記事などをご参照ください。
今回は、中国でこうした動きを展開している企業の活動を目にしましたので、記事として書き留めておきたいと思います。
・能鏈科技は「グリーンエコノミー×ブロックチェーン」を目指す⁉︎
・能鏈科技が展開する2つのサービスって?
・産官学協働組織との提携も⁉︎
・「グリーンエコノミー×ブロックチェーン」は世界的な先進分野⁉︎
中国のテック系ニュースサイト「动点科技TechNode」は2018年8月29日に、「能链科技:用区块链的方式,激励你为环保事业添砖加瓦(能鏈科技:ブロックチェーンの方法で、環境保護事業に少しでも貢献できるようにしていく)」という特集記事を掲載しています。
記事では能鏈科技について、2016年8月に創立された、「绿色金融(グリーンファイナンス)」と「绿色经济(グリーンエコノミー)」のデジタル化をブロックチェーンによって実現する企業として紹介され、以下のような事業を展開していると説明されています。
目前,其有两类产品,一是 to B 的绿色金融联盟链,二是 to C 的绿色共识公链,旨在“链”接物理世界和数字世界,赋“能”绿色经济和可持续发展。
(今のところ、能鏈科技にはふたつのサービスがあり、ひとつは企業に対するグリーンファイナンスコンソーシアムチェーンであり、もうひとつは消費者に対するグリーンコンセンサスパブリックチェーンである。その意図は、現実世界とデジタルな世界を「つなぎ(链接)」、グリーンエコノミーと持続可能な発展を「エンパワーメント(赋能)」する)
「環保(環境保護)」という現実世界における取り組みに、ブロックチェーンというデジタル技術によって構築される「グリーンエコノミー」、「グリーンファイナンス」を掛け合わせることで、持続可能な発展を実現していくサービスを展開していることがうかがえます。
「グリーンエコノミー」については、日本語で読める情報もたくさん出回っていますので、ここで詳細は書きませんが、国連のグリーンエコノミーに関する特設ウェブサイトには、「An inclusive green economy is one that improves human well-being and builds social equity while reducing environmental risks and scarcities.(包括的なグリーンエコノミーは、人類の福祉を向上させ、社会的平等を構築し、環境リスクとその欠乏を抑えるものである)」とあります。
そのような経済のありかたを、金融的な方法論によって実現していくのが「グリーンファイナンス」であり、能鏈科技はそうしたシステムの構築をブロックチェーン上に実現していくことを目指しているといえますね。
記事中に挙がっていた2つのサービスのうち、まず、「绿色金融联盟链(グリーンファイナンスコンソーシアムチェーン)」(長い…)については、具体的な投資対象として「电动汽车(電動自動車)」が挙げられています。
記事中、電気自動車の開発には多額の資金を調達する必要があり、現在では「ABS(Asset Backed Securities、資産担保証券)」などが活用されている事例が挙げられていますが、そうした資金調達方法には、時間的・金銭的コストや分配の不均衡などの問題があり、十分な投資がおこなわれていないという現状があると指摘されています。
そこで、こうした環境に配慮した新たなサービスへの融資をスムーズに行き渡らせるために、能鏈科技は「全球首个基于区块链的绿色资产信息登记平台(世界で初めてのブロックチェーンに基づいたグリーン資産情報登録プラットフォーム)」を構築したということです。
また、もうひとつのサービスである「绿色共识公链(グリーンコンセンサスパブリックチェーン)」(これも長い…)については、「绿色智能合约(グリーンスマートコントラクト)」という言葉で説明されています。
能鏈科技の公式ウェブサイトによれば、このスマートコントラクトには環境保全にかかわるあらゆる行為を書き込むことによって、行為の「定量化」と「通证化(トークン化)」、つまり「行為の数値化」を実現することで、環境保護に向けた具体的な行為実行の促進につなげていこうというプロジェクトだということです。
また、具体的なシステムについては、能鏈科技と同じく中国に創設されたブロックチェーン開発企業である「格林元素基金会(Green Element Fund)」との提携で開発された「格林元素公链(Green Element Chain、GEC)」をベースとしているようです。
格林元素基金会の公式ウェブサイトを見ると、「Blockchain Consensus × Green Consensus」や「The World's First Green Public Chain」といったフレーズが並んでいて、能鏈科技の目指すところとビジョンを共有している様子がうかがえます。
実際に、格林元素基金会の運営メンバーページには能鏈科技のスタッフがテクニカルサポーターとして挙げられています。
中国のブロックチェーン開発企業間の提携によってグリーンエコノミーの実現が目指されている様子が垣間見えますね。
また、能鏈科技は企業間の提携だけではなく、産官学協働組織との連携のもとで「グリーンエコノミー×ブロックチェーン」の取り組みを進めているようです。
ブロックチェーン関連のニュースサイト「Hi区块链」が報じた記事によれば、2018年6月11日に能鏈科技は中国の政府機関である「生态环保部(Ministry of Ecology and Enbironment)」の指導下に結成された産官学協働組織である、「绿色消费与绿色供应链联盟(Alliance of Green Consumption and Green Supply Chain)」と提携して、「绿色消费与绿色供应链区块链专业委员会(グリーン消費・グリーンサプライチェーンブロックチェーン専門委員会)」を開設したということです。
この取り組みについては、能鏈科技の公式サイトにプレスリリースが掲載されていて、中国の政府機関が認めたブロックチェーンの展開様態のひとつとして位置付けられています。
この委員会の目的について、プレスリリースには、以下のように説明されています。
该专业委员会将协同各利益相关方推进区块链技术在绿色消费与绿色供应链领域的应用,推动全社会对于绿色消费和绿色生产的共识与实际应用,打造可持续发展的生态体系。
(この専門委員会は各ステークホルダーと協力し、グリーン消費とグリーンサプライチェーン分野におけるブロックチェーン技術の活用を推し進め、グリーン消費とグリーン生産のコンセンサスと実用化を促進し、持続可能な開発のエコシステムを構築する)
「绿色××(グリーン××)」という表現が連なっていますが、「環境保護×ブロックチェーン」の取り組みを、産官学連携のもとで広範囲に展開していくための拠点となっていくことを目指しているようですね。
ちなみに、この提携と専門委員会の設置は、2018年6月9日に北京で開催された「第二届中日环境高级别圆桌对话会(第2回中日環境ハイレベル円卓対話会)」の席上でおこなわれたということです。
対話会の様子を伝える「人民網日本語版」の記事はこちら。
この対話会には日本の環境大臣政務官やJICAの代表者も出席していたということですから、専門委員会の設置は、日中における環境問題に対する提携にも関わりのある動きとして位置づけることができますね。
…環境問題にかかわることは多様な分野に広がっていますから、こうした動きを追いかけていくための前提となる知識が多様で、表面的な動きしか書き留められませんね^^;
なので、深い話を知りたい方には冒頭に挙げたMALISさんの記事をおすすめします!
そのうえで、とりあえず表面的なところからもなんとなくわかったことですが、「持続可能な開発」が世界的な課題として掲げられ、あらゆる地域、企業、人々がその課題解決に取り組むことが求められている現在にあって、
こうした課題に直接かかわる「グリーンエコノミー×ブロックチェーン」、「環境保護×ブロックチェーン」は優先的に発展していく分野であるように感じます。
能鏈科技の取り組みが一企業のプロジェクトではなく、中国のブロックチェーン関連企業や産官学協働組織と連携し、より公共的なプロジェクトとして進められていることからも、こうした感触を裏付けているように思います。
それだけに、これから世界各地で、いや、今まさに世界中で多様なアイデアが生み出され、実現に向けた動きが生まれているのだろうと想像します。
フォローすべき範囲は国際機関からスタートアップまでに広がっているので、全体的な動きを追いかけていくことはなかなか大変ですが、なるべくキャッチできるように、コツコツと情報を追いかけていきたいと思います!
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