昨日まで開催されていた「COMPUTEX TAIPEI2018」では、ブロックチェーンを活用したさまざまなアイデアが提供されていました。
以前の記事にも書きましたが、これからのブロックチェーンの発展がどのような方向で進んでいくのか、これからが楽しみなイベントになったと思います。
そうした楽しみな動きを担う存在として、台湾でまた新たなスタートアップが動き出しています。
先月、ホワイトペーパーが公表された新しい企業ですが、CEOやCOOをはじめ、多くの創設メンバーが、台湾の有名企業「鴻海集團(ホンハイグループ)」の出身者であることから、今回のイベントでも注目を集めていたようです。
今回は、このスタートアップのプロジェクトについて、少し書き留めておきたいと思います。
・鴻海を飛び出してブロックチェーンの「大海」へ
・ioeXのプロジェクトって?
・「エラストス」と「分散ハッシュテーブル」
・ハードウェアの商品展開も!?
・技術者も分散化して発展!?
ブロックチェーンに関する台湾のニュースサイト「動區動趨BlockTempo」が報じたところによると、2018年6月5日に「ioeX」というスタートアップが「分散型ネットワーク(去中心化組網)」に関する記者会見をおこない、IoTに対するアプローチを展開していくことを明らかにしたそうです。
この記者会見を開いたのは、CEOの洪啓淵さんです。ioeXの公式ウェブサイトによれば、彼は鴻海集團(ホンハイグループ)のスマートフォンODM部門のマネージャーを長年務めていたようです。
ウェブサイトのスタッフを見ると、COOの王俊傑さんや技術部門のチーフである林君豪さんも鴻海での在職経験があると書かれています。
鴻海と言えば、2016年にシャープを買収した企業として日本では知られていますね。企業としてはスマートフォンのODM/EMSの大手企業ですから、洪啓淵さんはその中核にいた人物ということになります。
記事のなかでも、洪啓淵さんが鴻海の出身であることが明記されて報じられていましたから、企業のブランドイメージとして大切なポイントなのでしょうね。
ioeXはブロックチェーン技術をIoT(Internet of Things、物聯網)に応用し、IoTにおけるデータ通信にかかる膨大なコストを低減させ、トランザクション(transaction、價値交換)の問題を解決することを目指しているようです。
公式ウェブサイトにはホワイトペーパー(白皮書)が公開されています。(中国語版はこちら、英語版はこちら)
ホワイトペーパーによれば、ioeXは従来のOTA(Over The Air upgrade)サーバー・リレーサーバーによるIoTのネットワーク方式に変えて、ブロックチェーンをベースとした「分散型P2Pネットワーク(Decentralized Peer-to-Peer Network、去中心化的點對點直連傳輸組網)」を構築するとしています。
その技術を「Carrier」と名付けていますが、ホワイトペーパーによれば、その内実は「エラストス(Elastos、亦來雲)」というプラットフォームに「分散ハッシュテーブル(Distributed Hash Table、DHT、分散式雜湊表)」を加えたものだと説明されています。
「エラストス」は「中国版イーサリアム」とも呼ばれる「NEO」というスマートコントラクトプラットフォームをベースとするプロジェクトとして、日本語で読める情報も出てきていますね。
先に挙げた記者会見では、ioeXのCEOとともに、「エラストス基金会」の創業者である陳榕さんも同席していました。
また、「分散ハッシュテーブル」は、ブロックチェーンのそれぞれのブロックのなかに書き込まれている「ハッシュ値」を管理するデータ構造である「ハッシュテーブル」を、世界中に存在する「ノード」によって実現しようというものです(う~ん…間違ってはいないと思いますが、厳密に正確とはいえないような(^^;)
ioeXはこの「分散ハッシュテーブル」を、固定IPと動的IPによって構成される2種類のノード(「公網節點(Boostrap Node)」「設備節點(Peer Node)」)で実現するとしています。
デジタルガジェット系記事を配信する「數位時代」が配信した記事によると、ioeXは香港のODM企業であるEverexと提携して、一年のうちに100万台のノードを敷設する計画であることを公表しています。
ioeXはIoTにかかわるシステムを構築するだけにとどまらず、実際の製品を開発する企業とも手を組むことで、サービスの実現に積極的にかかわっていこうという姿勢を持っていることがうかがえます。
ここに挙げた「數位時代」の記事は、「COMPUTEX TAIPEI2018」の場におけるioeXの動きを伝えていますが、文中にはノード敷設の計画とともに、具体的なサービスの実現についても言及されています。
具体的にはセットトップボックス(機上盒)やスマートスピーカー(智慧喇叭)の製品化が予定されていて、実際にヨーロッパでの商品展開を考えていると伝えられています。
また、スマートホテル実現のサービスを提案しているRabbit Jetsと提携して、ioeXのシステムを導入したIoT製品を使用した営業展開も考えているようです。
ioeXは、「Internet of Everytihng」の略称としてつけられた会社名だと説明されています。システム構築とリアルな製品開発・提供は切り分けて事業展開をおこなっている企業も少なくありませんが、「すべて」をネットに結びつける企業として、具体的な商品展開を考えているところが注目されますね。
新しい技術であるブロックチェーンにかかわるスタートアップは、それまでにICT分野で多様な経歴を積み重ねてきた人々が立ち上げている印象があります。
僕も記事にしたことがありますが、たとえばGoogleやアリババ(阿里巴巴)に在籍していた人々がブロックチェーン業界に飛び込んでいるというようなことが、日常的に起こっているようです。(過去記事では、GBAという取り組みや、BitRabbitの事業展開などについて書きました)
鴻海のスタッフだった人々が立ち上げたioeXは、こうした世界的な潮流のなかに位置づけられる、台湾発のスタートアップとして注目に値する存在だと思います。
ioeXのホワイトペーパーに掲載されているロードマップを見ると、今年のうちに1か月単位でさまざまなプロジェクトが進行していくようです。
このロードマップに示されていることが本当に実現していくのかどうか、そのプロセスの中でどのようなことが生じてくるのか…これからの具体的な動きから目が離せません。
台湾のブロックチェーンをめぐる新たな動きとして、これからも注目していきたいと思います!
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ioeXもブースを出していた「COMPUTEX TAIPEI2018」と関連して、以下のような記事も書いています。
COMPUTEX TAIPEI 2018でブロックチェーンに熱い視線が注がれていますよ!
台湾発の仮想通貨取引所BitoPro、MAX、スタービットがいろんな動きを見せています!
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