ブロックチェーンを利用したサービスがいろいろと生み出され、ビジネスが拡大していくためには、何が必要でしょうか?
たとえば、スタートアップによる多様なチャレンジが新たな技術やサービスを大胆に生み出していきます。こうしたチャレンジをサポートしていくアクセラレーターや金融機関の動きも大切ですね。
加えて、既にネームバリューのある企業・伝統的なやり方でビジネスを展開し成功してきた企業がさまざまな形で参入することもまた、大切な要素のひとつだと思います。
僕がこれまでに書いた記事でも、アリババグループのAlipayHKの取り組みや、中信商銀・陽明海運・奇美実業といった台湾の有名企業間の提携が話題になっていました。前者は日本でも話題になりましたね。
こうした流れに連なる動きとして、台湾のマイクロソフトがブロックチェーンに関する提携を発表した記事を目にしましたので、少し書き留めておきたいと思います。
もくじ
・マイクロソフトが神州數字・熱酷と提携!
・中国の「神州數字」って?
・「熱酷」の役割とブロックチェーン専門投資会社のかかわり
・今回の提携はブロックチェーンの可能性をどう広げていくか?
台湾マイクロソフト(台灣微軟)の公式ウェブサイトに掲載された記事によると、2018年6月28日に台北で記者会見を開催し、マイクロソフトが中国のブロックチェーン開発企業である「神州數字」と、台湾のクラウドマネージングサービスプロバイダの「熱酷」とのブロックチェーンに関する戦略的提携(區塊鏈策略合作)を結んだことを発表したようです。
記者会見の様子は、台湾の三大紙のひとつである「自由時報」のニュースサイトやガジェット系ニュースサイトの「TechNews科技新報」などでも報じられていますが、一番詳細なマイクロソフトの記事を中心にまとめていきます。
(一般紙も含めたいろんなメディアで報じられていることからも、注目を浴びていることがわかりますね。)
「マイクロソフト×ブロックチェーン」といえば、BaaS(Blockchain as a Service)としてのMicrosoft Azureですよね。
詳細は公式ウェブサイトや日本語の情報にお願いするとして(詳細に説明できる自信がないだけです…(^^;)、
ブロックチェーン技術や関連サービスをクラウドで提供するプラットフォームですね。
台湾でもたとえば、「IBFT」というコンセンサスアルゴリズムを開発したAMISという企業が、コンソーシアムブロックチェーン(聯盟區塊鏈)の構築にMicrosoft Azureのサービスを利用しています。
(AMISについては、こちらの記事に書きました)
BaaSにはMicrosoftのほかに、Amazon Web Services(AWS)やIBMもプラットフォームの公開をおこなっていますね。
そうした競合がいるなかで、中国の神州數字がMicrosoft Azureを選択したことで今回の提携が実現したようです。
記者発表中、台湾マイクロソフトのゼネラルマネージャーの孫基康さんは、今回の提携によって、「Microsoft Azure可強化神州數字區塊鏈服務的安全性及運算處理速度(Microsoft Azureは神州數字のブロックチェーンサービスの安全性と計算処理スピードを強化することができる)」と述べたようです。
一方の「神州數字」にとっては、2018年5月に公開されたブロックチェーンアプリ開発サービスである「Azure Blockchain Workbench」に触れたことが、今回の提携へと向かうきっかけになったそうです。
(Azure Blockchain Workbenchについては、こちらの公式ウェブサイトをご覧ください(^^;)
今回の記者会見に合わせて来台した神州數字の創業者である孫茳濤さんによれば、「Azure Blockchain Workbench可大幅縮減神州數字區塊鏈基礎結構開發時間(Azure Blockchain Workbenchは神州數字のブロックチェーンの基礎構造の開発時間を大幅に短縮しうる)」ということです。
記事によれば、神州數字はフィンテックに関する技術開発をおこなっている企業で、2014年からブロックチェーンの技術開発を開始したそうです。
神州數字(China Binary Sale Technology)の公式ウェブサイトによれば、「區塊鏈領域,智慧硬體及區塊鏈底層技術服務(ブロックチェーン領域、スマートハードウェア、ブロックチェーン基層技術サービス)」を提供しているようです。
具体的な製品として、ブロックチェーンを通じてデジタル機器を結びつける「XKey」や、仮想通貨取引所にクラウドブロックチェーンサービスを提供する「MasterDAX」などを展開しています。(XKeyについては中国の「鳳凰網」のこちらの記事、MasterDAXについては、こちらが公式ウェブサイトになります)
今回の記者会見で、孫茳濤さんは、「神州數字相當看好台灣及東南亞區塊鏈的商用開發市場(神州數字は台湾および東南アジアはブロックチェーンの商用開発マーケットとして相当期待ができると見ています)」と述べています。
僕も記事で取り上げたオーストラリアの仮想通貨取引所「BitRabbit」も、東南アジアへのサービス拡大を目指して台湾進出を考えていました。(こちらです)
中華圏におけるブロックチェーン・仮想通貨のサービス拡大は、台湾から東南アジアへというルートが確立されつつあるようですね。
台湾マイクロソフトと神州數字の2社に加えて提携先となったのが「熱酷(High Cool)」です。
「熱酷」についてはウェブサイトが見つけられず、詳細がわからないのですが…記事によれば、「雲端管理服務提供商(Cloud Management Service Provider)」として、特に「公有雲(Public cloud)」の提供企業として、今回の提携に欠かすことのできないパートナーのひとりだったようです。
また、今回の記者会見には提携を発表した3社のほかに、「源鉑資本(Kyber Capital)」というブロックチェーン専門投資会社のCEOである胡一天さんが同席していたようです。
源鉑資本は公式ウェブサイトによれば、多くの台湾のブロックチェーン関連企業に投資をおこなっているようです。
僕の記事でこれまでに取り上げた企業に限ったとしても、AMIS、CoolBitX、DTCO、MaiCoin、OwlTingなど、多彩なサービスを展開している企業が挙がっています。
(企業名のリンクは、僕の関連記事に飛びます)
それぞれに特徴的な専門分野を持った企業が提携することで、ブロックチェーンの技術を使った多様なサービスを、グローバルなフィールドで展開していこうというビジョンが見えてくるメンバーですね。
実際に、記事には、「三方區塊鏈策略合作將有助金融、電商、娛樂等產業轉型升級,商機立足亞太、放眼全球(三者のブロックチェーンに関する戦略的提携は金融・電機メーカー・エンターテインメントなどの産業をバージョンアップしていくことを手助けし、ビジネスチャンスをアジアからグローバルへと広げていく)」と書かれています。
この提携自体が台湾と中国の企業による「ボーダー」を超えたものになっていますし、そこから見据えるフィールドは台湾から東南アジアへと向けられています。
マイクロソフトが提供するAzureというプラットフォームは既にグローバルに展開されていますが、それを各国・各地域のブロックチェーン企業が活用することで、自らのビジネスチャンスをよりグローバルなフィールドに広げていくステップになっていく様子を、今回の提携から具体的に感じることができますね。
BaaSからどのようなブロックチェーン技術・サービスが広がっていくのか…中華圏でも展開されるこうした動きも、コツコツ追いかけていきたいと思います!
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