(台湾のエバー航空のキティジェット。僕には少し恥ずかしいです^^;)
ブロックチェーンに限らず、新たな技術を既存のサービスに組み込んでいく試みがいろいろなところで展開されていますね。
以下の記事などで触れているような金融業や医療・保険業への新技術導入は、「FinTech」や「InsurTech」といった言葉が生まれるほどの代表的な分野ですが、こうした産業以外にも多様な活用が試みられています。
そうした動きのひとつとして、今回は旅行業への新技術導入の動きを目にしましたので、少し書き留めておきたいと思います。
・台湾のRabbitJetsがアクセラレーターと提携
・RabbitJetsが目指していることって?
・「トラベル×ブロックチェーン」は広がる?
台湾の経済系ニュースサイト「鉅亨網」が2019年1月18日に掲載した記事によると、旅行プラットフォームを運営している「RabbitJets」が、ブロックチェーン専門アクセラレーターの「ABA」と提携して、独自トークン「RJcoin」を発行するということです。
記事によれば、RJcoinは以下のような用途が期待されているようです。
「RJcoin」トークンによる取引プロセスは一般的な取引の流れと同様ですが、さらにユーザーは「フレンドの推薦」と「節約」を通じてRJcoinのキャッシュバックや関連費用の割引を受けることができ、各ユーザーは旅行費用の15%〜25%を節約することができる予定です。
(透過代幣「RJcoin」交易過程與一般交易流程相同,使用者還能透過「好友推薦」和「節能」獲得 RJcoin 回饋並折抵相關費用,預估每位使用者約可省下 15%~25% 的旅遊費用。)
ここでまず、「「RJcoin」トークンによる取引プロセスは一般的な取引の流れと同様」とありますが、2019年1月19日現在、RJcoinトークンは台湾の仮想通貨取引所である「ACE Exchange」でIEO(Initial Exchange Offering)の実施が予告されています。
ACE Exchangeは以下の記事で少し触れましたが、今回、RabbitJetsと提携したABA(Asia Blockchain Accelerator)やブロックチェーン・仮想通貨専門ファンドである「ACE Blockchain Fund(ABF)」と提携して、ブロックチェーン産業育成のためのエコシステム構築を目指しています。
今回のRabbitJetsとの提携とRJcoinの発行・IEOの実施も、こうした産業育成の一環としておこなわれていることがうかがえますね。
今回、ABAと提携して独自トークンを発行するRabbitJetsは、上に挙げた「鉅亨網」の記事に以下のように紹介されています。
「RabbitJets」はブロックチェーン・IoT・AIの技術で構築した「グローバルスマートトラベルエコシステムシェアリングプラットフォーム」によって、「スマートホテル」(リアルタイム空室情報、スマートロック)、「Dapps透明化オンライン予約」(評価と信用機能)、そして「サードパーティサービス」(保険、飲食、チケット)など3つのシステムを融合し、ブロックチェーンスマートトラベルエコシステムプラットフォームを構築している。ローンチ以来、すでに業者と協力して31万か所以上の部屋を提供し、ユーザー数ものべ400万人以上に達している。
(「RabbitJets」是由區塊鏈、物聯網、AI 技術建造的「全球智慧旅遊生態系共享平台」,整合「智慧旅宿」(即時房訊、智慧門鎖)、「Dapp 透明化線上旅遊預訂」(評價與信用功能) 與「第三方服務商」(保險、餐飲與交通票券) 等三方系統,打造區塊鏈智慧旅遊生態平台,線上以來已經與業者合作賣出 31 萬多間房間,使用人次多達 400 多萬人次。)
RabbitJetsの公式ウェブサイトを見ると、2015年からサービス提供を開始した宿泊予約プラットフォームであり、部屋のオーナーと旅行者それぞれの利便性向上のために多様な技術を採用しているということのようです。
また、ACE ExchangeでのIEOに合わせるように、IEO専用のウェブサイトも公開されていて、ページ冒頭には以下のようなフレーズが掲げられています。
RabbitJetsは一度に一ブロックずつ、スマートトラベルを実現するためにブロックチェーン、IoT、機械学習を活用したフェアで透明性の高い分散型プラットフォームです。
(RabbitJets is a fair, transparent and decentralized platform that utilizes Blockchain, IoT and Machine Learning to Enable Smart Travel, One Block at a Time.)
多彩な新技術を組み合わせることで「スマートトラベル」を実現するとしていますが、この点については、IEOの専用サイトに公開されているホワイトペーパー(白皮書)で詳細に説明されています。
(ホワイトペーパーは日本語版も公開されていますが、内容を読んでみると表現の怪しい箇所が散見されるので、以下、中国語繁体字版を基に見ていきます)
ちなみに、英語版
ホワイトペーパーによれば、RabbitJetsはブロックチェーンによるスマートコントラクトを活用することによって、ホテル予約に以下のような機能を導入すると説明されています。
・入札システム(競價系統)
・仲裁システム(仲裁系統)
・ブロックチェーン・IoT融合システム(結合區塊鏈技術的智慧IoT系統)
・スマートコントラクトに基づく省エネ決済メカニズム(基於智能合約的節能結算機制)
・信用システム(信任系統)
・サードパーティサービスプロバイダシステム(第三方服務商系統)
部屋のオーナーとユーザーである旅行者双方にとって、価格、部屋の管理、決済といった関連業務全般の「スマート化」を実現することが目指されているといえますね。
とりわけ、「信用システム」はオーナーとユーザー双方が「スコアリング」されることによって、さまざまな特典やマイナスが反映されるようになるという、SNS的な要素が取り入れられているところは注目されます。
また、一定のスコアを保有している人は「仲裁委員」になることができ、オーナーとユーザーの間でトラブルが発生した時には、仲裁委員による仲裁で解決が試みられるというところは、ブロックチェーンの理念が反映されているようなシステムですね。
サードパーティの拡大はまだこれからという段階のようですが、ブロックチェーン・スマートコントラクトの活用がどのように拡大していくか…これからの展開が楽しみです。
RabbitJetsのホワイトペーパーからうかがえるように、旅行業でのブロックチェーンの活用は、データ処理、安全性、透明性などの面で有望な分野のひとつかなと思います。
たとえば、以下の記事で取り上げた台湾の「OwlTing(奧丁丁)」はブロックチェーンの活用を進めていますが、事業のひとつとして旅行業も手がけています。
情報集約の必要があり、かつリアルタイムに情報を把握する必要があるような分野で、ブロックチェーンをはじめとした新たな技術の融合によるサービスのバージョンアップが目指されているようですね。
こうしたサービス展開が果たしてスタンダードになっていくかどうか…機会があれば実際に利用しながら、コツコツと情報を追いかけていきたいと思います!