既存の金融機関はブロックチェーンを含めた新たな技術に対して、距離を取りながらも導入を進める…という姿勢を取るところが増えてきた感じがありますね。
台湾でもいろいろな葛藤や軋轢がありながら、積極的にブロックチェーンなどの技術を導入している金融機関が増えてきました。
今回は学生向けのフィンテックコンテストを開催する銀行が、実はブロックチェーンを早くから導入していたことがわかりましたので、記事として書き留めておきたいと思います。
・華南銀行がフィンテックコンテストを開催
・華南銀行はブロックチェーン導入に積極的⁉︎
・台湾の銀行はブロックチェーンの導入に積極的?
台湾の大手紙「中國時報」が2018年10月15日に報じた記事によると、台湾の大手金融グループである「華南金控(HuaNan Financial Holdings)」が、学生を対象とした「第三屆華南金控金融科技創新競賽(第三回華南ホールディングスフィンテックイノベーションコンテスト、FinTechers)」のエントリー開始を公表したそうです。
コンテストの重点テーマは「金融MBA」と呼ばれている「行動(Mobile)、區塊鏈(Blockchain)、人工智慧(AI)」となっており、台湾全土の35の大学院・大学から5,000人の学生さんの参加を予定しているということです。
華南ホールディングスの董事長である吳當傑さんが公表したところによれば、今回のコンテストで優秀な成績を収めた学生さんには、賞金のほかに、向こう3年間、華南グループでの仕事を希望する場合は筆記試験を免除するという特典が付与されるそうです。
このコンテストはすでに2回開催されているわけですが、記事によれば、昨年のコンテストで優秀な成績を収めた学生さんが14名、華南グループに就職しており、みな成績優秀ということで、今回の特典が用意されたという経緯が説明されていました。
学生さんにとっては就職に結びつくという大きな特典があり、華南グループにとっては優秀な人材を確保することができるという、双方にとってメリットが大きいコンテストになっているようですね。
華南グループがフィンテックのコンテストを通じて優秀な人材をリクルートしようという姿勢を見せているのは、これまでにフィンテックの導入を積極的に進めているからのようです。
台湾の経済紙「工商時報」が2018年8月6日に掲載した記事によると、台湾の金融に関する官民共同組織である「財金公司」が設置した「企業金融區塊鏈小組(企業金融ブロックチェーン小グループ)」の召集人を華南銀行が務めるとともに、ここから生み出された「金融區塊鏈資訊查詢服務專案(金融ブロックチェーン情報検索サービスプロジェクト)」に初めて参加した銀行であるということです。
「財金公司」については以下の記事に書き留めましたが、2016年からブロックチェーンの開発を始めているということで、この小グループもその時期に開設されたということです。
そして、この2016年に華南銀行は「HNOTE」というブロックチェーンを活用した取引システムの試験運用をすでに開始していたようです。
「工商時報」が2016年10月に掲載した記事には、華南銀行は社内のスタッフに向けて、口座での入出金、振込、取引履歴の確認などをスマホアプリを通じておこなえるシステムの試験運用を始めたと報じられています。
HNOTEについては、公式ウェブサイトが開設されていますが、ざっと見たところではブロックチェーンに関する情報サイトのような構成になっています。
この2年間の動きについてはまた改めて追いかけていければと思いますが、2016年の時点でブロックチェーンおよびフィンテックの将来像について、以下のように語られていたことが注目されます。
期望在符合監管標準和法令規定下,發展區塊鏈重點業務應用,共創區塊鏈金融生態圈。
(政府による管理基準と法令の規定にしたがい、ブロックチェーンの重点業務への応用を発展させ、ブロッックチェーン金融エコシステムを共創することを期待している)
華南グループのフィンテック・ブロックチェーンに対する積極的な姿勢は、これまでの継続的な取り組みの結果だということがうかがえますね。
上に挙げた財金公司に関する「工商時報」の記事や僕の記事にも表れているように、台湾の多くの銀行はここ数年来、フィンテックの導入の一環として、ブロックチェーンの開発を進めてきています。
僕のこれまでの記事でもいくつかの銀行の取り組みを取り上げてきましたが、いずれも数年間にわたる取り組みが、少しずつ実ってきているような印象があります。
もちろん、法整備が同時並行で進んでいるような状況のなかで、実際のサービスへと実現していくためにはいろいろなハードルがあるだろうと推測されます。
それでも、環境整備の展開を見据えて、コツコツと技術開発・サービス開発を進めている様子がうかがえます。
そう思うと、内部で進んでいる技術開発の動きが、これから表舞台に出てくるのかもしれません。
こうした金融機関の動きにも注目しながら、コツコツと情報を追いかけていきたいと思います!