(台北にある電気街のゴチャゴチャした雰囲気が好きです。ワンちゃんも寝ています)
新しい概念やサービスについて説明するときに僕たちは、すでに広く知られている概念やサービスを使いながら説明することがありますね。
たとえば、「トークン」や「トークンエコノミー」ということを説明するときにしばしば目にする(耳にする?)のは、いろんなお店が発行している「ポイント制度」を引きながら説明するというスタイルです。
もちろん、「トークン」と「ポイント」とのあいだにはいろいろと大きな違いがあります。
なかでも、「ポイント」というのは基本的にそのポイントを発行している企業なりお店のサービスの中だけで使用可能なものですが、「トークン」は価値交換が可能であるという違いがあります。
ただ、こうした「トークン」と「ポイント」の性質の違いを、両者を融合させることで乗り越え、こうしたシステムのビジネスにおける可能性を広げていこうというサービスがすでに台湾で始まっています。
既存のサービスやシステムを拡張していくような動きは、新たな技術やサービスの普及に大きな役割を担うと感じましたので、書き留めておきたいと思います。
・ポイント管理アプリ「集點樹」にブロックチェーンを導入?
・ブロックチェーンを導入するとどうなるの?
・大学生ベンチャーの成功例?
・ポイントとトークンの垣根を超える?
台湾の大手紙「中國時報」のウェブサイトに2018年8月28日に掲載された記事によると、「集點樹」というポイント管理アプリにブロックチェーンを導入することで、「點數生態體系(ポイントエコシステム)」を構築していく方針であることを明らかにしたそうです。
「集點樹」というアプリは、公式ウェブサイトには「結合集點卡、會員卡、優惠券及廣告推播等多種玩法,行銷 All in One 簡單操作立即上手!(ポイントカード、メンバーズカード、クーポン、プッシュ広告などさまざまなお楽しみを結びつけて、オールインワンで簡単に操作。今すぐはじめよう!)」と説明されています。
(この「樹」のロゴ、なんとなくカワイイです)
「中國時報」の記事には、「只要填入商家電話號碼,就可以開始啟動自動集點(お店の電話番号を入力するだけで、自動でポイントを集めていく)」と書いてあるので、サービスと提携したお店のポイントを一括して管理できるシステムになっているそうです。
公式サイトによれば、サービス開始は2016年。2年間のうちに700以上の店舗と提携し、15万人以上のユーザーを獲得しているということですから、すでに一定の広がりを持っているサービスのようですね。
今回は、このサービスにブロックチェーンを導入することによって、新たなサービスを提供していくということのようです。
すでに動いているポイント管理アプリにブロックチェーンを導入することによって、どのような新しいサービスが生まれるのか?
この点については、台湾の大衆紙「蘋果日報」の2018年9月2日付の記事で以下のように説明されています。
(写真のみなさんが、このサービスの運営メンバーです)
以區塊鏈技術推出線上集點服務,主打防範資安問題外,再透過自己發行的虛擬通貨「樹幣」,整合各不同店家的點數,進行自由移轉
(ブロックチェーンをオンラインのポイントサービスに導入することで、セキュリティの問題を解決するほか、自らが発行する仮想通貨の「樹幣」を通じて、違うお店のポイントを統合し、自由な移動を進める)
ここからは、セキュリティの問題解決と同時に、ポイントの統合と移動、つまり「価値の移動」を実現することが目指されていることがわかりますね。
さらに、台湾の経済紙「經濟日報」のニュースサイトに掲載された記事には、「集點樹」を開発・運営している「樹賴科技」の創業者でCEOである詹凱傑さんが、以下のように説明しています。
消費點數本身其實就具有一定的價值,是一種類似虛擬貨幣特性的功能,只是過往受限於可用通路、活動時限以及紙本作業,在生活中有太多的點數價值被浪費掉,所以我們希望以『代幣-樹幣』的方式,整合所有合作店家的點數價值,讓消費者可透過收集或購買樹幣,作為不同店家點數價值轉換的中介幣、基準幣。
(ポイントはそもそも一定の価値を持っているものであり、一種の仮想通貨と似たような特徴を持っていて、ただ通用する範囲や有効期限や紙ベースになっているというだけである。生活のなかでは多くのポイントが無駄になっているので、私たちは「トークン−樹幣」の方法によって、すべての協力店のポイントを結合し、消費者には樹幣を集めるか購入してもらって、違うお店のポイントの価値を移転するような仲介トークン・基準トークンにしたいと考えている)
お店ごとのポイントのあいだにトークンを挟むことで、ポイント間の交換を可能にするようなプラットフォームを作っていくということのようですね。
こうした「価値の移動・交換」を可能にすることによって、今まで無駄に消費されたり、有効期限が切れて消滅したりしていたポイントの有効活用が可能になると期待されているようです。
2018年9月3日の時点で、「集點樹」の公式サイトにはまだこのあたりの情報が上がっていないので詳細はわかりませんが、ポイントとトークンの交換時にかかる手数料がどの程度か、協賛店舗がどの程度広がりそうなのかによって、サービスの普及具合が変わってきそうですね。
「集點樹」の取り組みが注目されているのは、サービスの新しさと実績にもよっていると思いますが、それに加えて、このサービスを開発・運営している「樹賴科技」が、CEOである詹凱傑さんをはじめ、主な運営スタッフが台湾大学の学生だったころに立ち上げられたスタートアップだったということも注目されているようです。
「經濟日報」の記事には、主要スタッフが「台大資工所2B (Blockchain & Big data) Lab」の出身者で占められていると書かれています。
この「2BLab」の情報を見つけられなかったのですが、「集點樹」の公式サイトには台湾大学での長期的な取り組みに関する情報が上げられているので、まさに学内ベンチャー・学生ベンチャーとして始まったのだなということがわかります。
台北にあるシェアワーキングスペースの「Kafnu台北」の第1期の利用会員として、シェアスペースのメリットについてインタビューに答えるなど、スタートアップの旗手として注目されている様子も伝わってきます。
(ちなみに、Kafna台北の公式ウェブサイトはこちら。クリエイティブな雰囲気に溢れていますよ)
いろいろな角度から注目されているスタートアップの取り組みにブロックチェーンが導入されるということで、各種メディアから注目されるに至ったのかなと感じます。
「集點樹」はポイントそのものをトークン化するのではなく、ポイント間にトークンを介在させることによって、ポイントの有効活用を目指すサービスのようです。
このあたりは、台湾でも仮想通貨をめぐる法整備がまだ進行中で、トークンの位置づけに不明瞭な部分がまだ残されているという現状を反映した工夫であるように感じます。
ただ、こうした取り組みを通じて、それぞれのお店がそれぞれに発行していたポイントが「価値の移動」を実現することができれば、実質的にポイントがトークン的な機能を持ちうることになります。
こうした方法が法的に容認されていくかどうかという課題はあるのかもしれませんが、他方で、既存のポイントサービスの枠組みをそのまま活用できるということは、サービスの普及という面でもメリットが大きいのではないかと思います。
「トークン」と言われると警戒感を示す人々も、「ポイント」と言われると一転して集めたいという心理が働く…と思うと、こうした方法が持つアドバンテージは大きいように感じます。
「經濟日報」の記事には、将来的には香港や中国でのサービス展開を目指して、関係業者との相談を始めていると書かれています。
台湾での広がりも含め、こうしたサービスがどれほど受け入れられていくのか…今後の展開をコツコツと追いかけていきたいと思います!
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