合計6000ALISプレゼント!?ALIS夏の読書感想文コンテストの参加記事です。
松井玲奈「カモフラージュ」です。食べ物に関連する短編集となっています。短編なので普段あまり本を読んでいない人でも読みやすいであろう、ということもあり、チョイスしました。
全部で6編ありますが、「リアルタイム・インテンション」について紹介します。(小説すばる2019年4月号に掲載)
「リアルタイム・インテンション」では、YouTuber3人組のお話です。(作品中ではYouTubeという名称は出て無いですが、動画配信サービスの代表例ということで、YouTuberという呼び方をここではします。)
YouTuber3人組(ルーペ、エム、クマ)が生放送を行い、その中で本音ダシ鍋というドラえもんの道具みたいな鍋を食べる、そうすると、3人は本音をしゃべり出してしまう。本音には、お金の話や女の話など、生々しい話が出てくる。だんだん喧嘩っぽくなり、冷静さを失い、罵り合う。そしてそれを生放送してしまい、大炎上する。
炎上の後、日本中を謝罪行脚することになり、なんとか日本一周する。後から振り返ると炎上動画のおかげで生き残れているのでは、といったお話。
クマ(動画編集を担当)が、「動画を作りたいのであって、動画に出演したくはなかった。」みたいなブッチャケをしていました。YouTuberに興味はあるけど、自分は裏方だ、みたいな感じですね。
実際のYouTuberも、もちろん一人で企画から出演、動画編集まで全部やっている人もいるかもしれませんが、裏方で動画編集するスタッフを常時または臨時で雇っている人もいると思います。とはいえきちんと分業体制を確立するのも大変でしょうから、クマみたいな思いを持ちつつ、という人もいるように思います。(動画編集が好きだけど出演はイマイチ、という人も、反対に出演したいけど動画編集は大変、という人も。)
一つものを作り上げるにはスタッフが一丸にならないといけない、ちょっとしたボタンのかけ違いでメンバーの間に溝が生じる、など、いろいろなことを考えさせてくれます。もし単に炎上した話、だったら、フーン、で終わっていた短編かもしれません。単に炎上した話で終わらないのが、この作品の凄いところです。
物語の最後は、クマが
「実はさ......」
というところで終わっています。
最後の結末を書ききってしまわず、ここで終わっているのが良いですね。周りに読んだ人がいたら、「最後、クマは、何を言ったのだろう?」と聞いてみたくなります。
私は、「本音ダシ鍋」を持ってきたのがクマであることから、クマがあえて炎上させるべく企画したんだ、みたいなことを打ち明けるのかな、と想像しました。本音ダシ鍋が本物なのか偽物なのかははっきり書かれていないですが、クマが炎上を誘導していた感があります。
皆さんは、どう考えたでしょうか?