「書籍が完成して、印刷を開始した後に誤植が見つかる」著者にとっては悪夢です。私も以前執筆した本で、この悪夢に直面しました。発売前に誤植が分かっていても、書店にそのまま並べなければならないので、増刷時に修正するまでは辛かったです。
本のエンドロール(安藤裕介著)は、本をテーマにした本です。
本が読者の手に届くまでの道のりは長いです。著者、出版社、印刷会社、製本会社、取次、書店、と多くの人・会社が関わっています。この本は、印刷会社という、普段はあまり表舞台に出てこないところに焦点をあてた、という特徴があります。私も実際に本が作られるところは見たことがありません。
私の印刷会社のイメージは正確に印刷する、カラーなら特色をきちんと出す、というものでした。なので、営業を主人公にしたことには驚きました。
読んでみると、その良さが分かりました。営業を主人公にしたことで、出版社の編集者、DTPオペレータ、印刷部門の職人、ベストセラー作家など、様々な人が自然に登場してきますし、また各自の立場や考え方の違いも面白かったです。
ストーリーとしては、主人公が仕事をしつつ、周囲の人と協力したり衝突したりしながら成長していく、というよくありがちな展開です。冒頭の「印刷を開始した後に誤植が見つかる」のような、仕事でのトラブルを乗り越える、というようなストーリー展開です。
とはいえ、印刷業界をあまり知らない身からすると、ストーリーが分かりやすくて読みやすかったのは良かったと思います。
出版業界の現状(本の売上が減っている)も書かれています。ここは読書好きとしては辛い部分ではありますが、目を背けずに取り上げたのは素晴らしいかなと思います。
本のエンドロール、こんな人におススメだと思います。
●本・読書が好きな人
●お仕事小説が好きな人
●就職・転職を考えている人・悩んでいる人
恋愛要素はほとんどナシですが、仕事とは何だ?という要素は結構あったので、就職・転職を考えている人にも良いように思いました。