父から聞いたときは正直びっくりしたのですが、私のひいおばあちゃんは霊媒師だったそうです。
しかも嘘っぱちではなく当時のお遍路、その他でガチに修行しまくった白衣が文字で真っ黒と朱印びっしりタイプ
(といっても祖父が養子だったので父とはまったく血はつながっていません。)
父はおっちょこちょいなのか幼い頃より川でおぼれたり、階段から突き落とされたりと危ないことばかり。
ひいばあは父のことを「お前はいつもとりつかれる」
といってなんやかんやとお祓いされていたそうです。
ある日はペシペシと肩や頭を何度も叩かれ、ある日は正座で黙想させられ、呪文を唱えられ・・・
意味不明のお祓いの数々にすっかり幼少期の父はお化けが大嫌いになった模様。
でも、ひいばあの強烈なキャラのおかげで霊を見ることなく過ごすことができていたそうです。(そりゃ、キャラのほうが立ちすぎて霊がかすんでしまうよね)
ある日、父はひいばあに「今から修行するから絶対に開けるでないぞ!」
と言われ、一時待っていたけれど待ちきれず、ふすまを少しだけ開けてのぞいてしまったことがあるそうです。
ひいばあは天井から五円玉をつるし、お経を唱えだすと、その五円玉が左右に振れだしました。だんだんとその振れ幅が大きくなり、最後はびゅんびゅ~~~~ンと左右に振れるのを見て、
「まじだこれ」
と思ったそうです。
それからというもの、お化け大っ嫌い症候群になってしまった父。
ひいばあのお仕事は、港の船が出航してもいいのか、嵐が来るのか、流行り病は大丈夫か、先立たれた人の悲しみを癒すなど、人の悩みを解決する仕事だったとか。決して人を怖がらせたり大金を取ったりするお仕事ではなかったそうです。
ひいばあが亡くなった時は修行で朱印真っ黒真っ赤になった白衣を着せて見送ったそうです。こうすることで魂の徳が上がるという風習があるとか。
人のつらさを解決するためには心身ともに強くなければならないために修行を積む。
その修行の証である白装束を着てあの世に旅立つ。 かっこいい女性だったんだな~と思います。
一方、お化けがきらいすぎる父は、夏の怖いテレビ番組が始まろうものなら大慌てでリモコンを探す始末。
父が毎回私にいうのは「霊とか見ないほうが絶対にいいに決まってる。見ようとしないこと。」と私にいつも言っていました。
ただ、1度だけ、怖がりの父が霊を肯定した日がありました。
その日は私も家にいて、父はリビングのソファでうたたねをしていました。
急に父がはっと起きて座ると「おう、よく来たね。酒でも飲もう」
とにこにこしながら誰もいない空間に向かって話し始めます。
私はまだ未成年だったので「?」っとなっていると
「ん?木下今来たでしょ。」
と、意味不明な発言。
木下さんは父の会社の同期の方で、短期海外出張中でした。
「あれ。今夢見てたかな。いや、来たよ?」と言っていた次の日
木下さんが海外出張先で自殺したという報告がありました。
でも、父に言わせてみれば自殺するような人ではなく、悩みもなければお子さんも生まれて間もなく、子煩悩で幸せ真っ最中の家庭円満。
よく会話をしていた父には自殺とは到底思えなかったそうです。
夢に出てきた木下さんはスーツをぴっしりと着て、
「いや、酒はもういいよ。行かないと。」
と言って消えていったそうです。
父は
「木下はモノをはっきり言うタイプ。海外、特に夜の外出は気をつけないとという意味かもしれない。」
と私に教えてくれました。
日本しか知らないと、海外がどのくらい危険かはわかりません。
木下さんが父に伝えたかった思いを父が受け取れた、幼いながらに「心」のかたちが見えたような気がしました。
木下さん、最後に父に会いたいと思ってくれてありがとうございます。
私は、ひいばあに会ったことはないけれど、霊とかお化けとかはあって当たり前で、そのような精神の世界が生身の現実世界のように普通に存在しているんだよ、と伝えてくれているような気がしてなりません。
もともと、科学で証明されていることなんて、ほんの一握りなのに、そんな世界はないなんて断言は死後の世界を知っていると断言しているようなものです。
伝えたい思いは「令和」のように時空を超えて伝わるし、交われない気持ちは生きていても平行線のまま(分かり合おうとしない夫婦のように)
生きていようが体は死んでしまっていようが、先人が思いを伝えようとしているのであれば素直に耳を傾ける姿勢が大事で、その先の判断をするために修行しなさい、誰かの役に立つために学びなさいと、今も言われているような気がします。