Web3.0の定義を考える[厳格版]

もずく・Ð・図解屋です。


よくわからないままに「Web3.0」という言葉だけがひとり歩きしているクリプトチェーン界隈、ALISの『うぇぶさん』イベントでみんながWeb3.0をどう解釈しているのかお互いに理解を深めていきましょ!



実は私、図解屋を名乗る前は「もずく🌠Web3.0」と名乗っていたほどのWeb3.0フリークです(フリークは嘘です)。

ということで、私の記事は三部作の大作になりそうです。

 1. Web3.0の定義を考える[厳格版]

 2. Web3.0の定義を考える[ゆるゆる版]

 3. ALISが目指すべきWeb3.0とは


はじめる前に、Web3.0について以前に私が書いた記事を貼っておきます。Web3.0とdDppsの記事の最後からさらに詳細な記事にリンクしています。






Web3.0の定義を考える[厳格版]


さて、第一部では私の考えるWeb3.0の定義についてポエ散らかしていきます。


まず大前提として、Webが2.0から3.0にバージョンアップする契機となった技術は「Bitcoin」であるとします。

言い換えると、Bitcoinの登場がなければWebが3.0にバージョンアップすることはない…という考え方です。

そうすると、「Web3.0の定義は?」という問いは、「Bitcoinが初めて実現したことは何か?」という問いからスタートできます。


※以下はあくまで私(もずく)の解釈です


■ Bitcoinが初めて実現したこと


Bitcoinの核となるアイデアについてはサトシ・ナカモトのホワイトペーパーに書かれているわけですが、ここで提案されているのは単に「ピュアP2Pにおける電子コインの不正使用(二重支払い)の解決」でした。

ピュアP2Pというのは、サーバという役割が存在せず、個々の端末が直接通信する仕組みのことです。

サーバがないということは中央機関が存在しないということなので、電子コインの不正使用を監視する見張り役がいないということになります。

Bitcoinの革新は、そのような監視体制のないピュアP2Pの上で電子コインの取引を成立させたことにあります。


その後、サトシ・ナカモトのBitcoinのアイデアは一般化され、技術的な部分はブロックチェーン(Blockchain)と呼ばれ、そのブロックチェーンによって成し遂げられたことの一つがトラストレス(trustless)という言葉で広がっていきます。

トラストレスとは「誰かを信用する必要がない」ということですが、Bitcoinにおいては「P2Pの参加者間の自律的な合意形成(コンセンサス)によって、中央機関(信用しなくてはならない第三者)の介在なしに電子コインの不正使用を抑制した」ということになります。

その後、Bitcoinの後続(アルトコイン)の登場によって電子コイン以外の用途でブロックチェーンが利用されるようになり、“トラストレス”の意味も「非中央集権・分散化(decentralization)」という広い文脈の中で使用されるようになっていきます。


そしてEthereumの登場により、ブロックチェーンの上でスマートコントラクト(smart contract)を動かすというアイデアが持ち込まれます。

スマートコントラクトとは、プログラムによって契約を自動的に生成・承認・履行する仕組みであり、これによってブロックチェーンの用途が一気に広がります。

Webが3.0にアップグレードするきっかけを与えたのはBitcoinですが、その方法を具体的に示してみせたのはEthereumだといえそうです。



一方、Bitcoinが成し遂げたことは学術的にも議論されはじめ、クリプトエコノミクス(cryptoeconomics)という名称で呼ばれるようになります。

クリプトエコノミクスは、経済学の一分野であるメカニズムデザインmechanism design)の亜種に位置づけられ、狭義には、BTCやETHのようなトークンによるインセンティブ設計を仮定したメカニズムデザインと定義してよさそうです。[参考URL

広義のクリプトエコノミクスを一言で説明するのは難しいのですが、m0t0k1ch1さんの定義(更新版)を引用しておきます。

あるシステムに対して、暗号学によって裏づけられた経済的合理性に従った選択をプレイヤーが重ねた場合に、そのシステムが達成したい性質を自律的に具備・維持できるようなプロトコルをデザインすること。


さて、ここでやっと“トークン”という言葉が登場しましたが、Bitcoinをきっかけに(主に日本で)再び注目を集めているのがトークンエコノミーです。

トークンエコノミーとはトークン(コミュニティ通貨)の循環による小さな経済圏のことで、概念としてはかなり前から存在します。[参考URL

ブロックチェーンによってコミュニティ通貨の実装と流通のコストが大幅に下がり、独自のトークンエコノミーを目指しやすくなりました。

※なお、トークンエコノミーという言葉は行動療法の一手法の名称としても使用されてきたので、2000年台より前の情報を検索するとそれしか出てきません。


Bitcoinで扱われたトークンは電子コイン(いわゆる暗号通貨:cryptocurrency)でしたが、後続のブロックチェーンプロジェクトでは通貨以外の用途や機能を持つようになり、トークンや暗号資産(crypto assets)と呼ばれるようになります。

Bitcoinの核となるアイデアもクリプトエコノミクスの議論のスタート地点も「トークン報酬によるインセンティブ設計」にあることからわかるように、この“トークン”という要素もBitcoin以降のトレンドから切って離せない要素といえます。

なにより、Bitcoinといえば仮想通貨(暗号通貨)というイメージが強いですしね。



■ Web2.0とWeb3.0の違い


以上、足早にBitcoinが初めて実現したことと、そこから一般化して広がってきた概念について述べてきました。

改めてキーワードを順に挙げてみると、

・ピュアP2P
・ブロックチェーン
・トラストレス
・スマートコントラクト
・Decentralization(非中央集権・分散化)
・クリプトエコノミクス
・トークン
・トークンエコノミー


このうち、Bitcoin以降に新しく持ち込まれた技術・概念、つまり、Web3.0とWeb2.0を差別化するものは、
・ブロックチェーン(スマートコントラクト含む)
・トラストレス
・クリプトエコノミクス
・トークン(クリプトークン)
です。

ただし、“トークン”については、ブロックチェーン技術(さらに広い意味での分散型台帳技術)によって実装されたものを指します。

“トークン”という概念自体は古来から存在する一般的なものですし、コミュニティ通貨として過去に類似するものも存在しますので、混乱を避けるため、以降ではクリプトークンと呼びます。



ここでもうひとつ触れておきたいのが、Web3.0における「Decentralization」の扱いです。

「Web3.0=Decentralizedなウェブの世界」という定義も見かけますが、これでは不十分だと私は思っています。

Decentralization(非中央集権・分散化)は確かにBitcoin以降に大きく注目されている概念ですが、(言葉はともかく)その思想(志向)はウェブやインターネット、オープンソースソフトウェアなどの歴史に度々登場しています。

本当の初期を除けば、ウェブの歴史とは強大な中央集権から解放された世界を創り上げるための戦いであると言っていいような気がします。


例えば、Web2.0は、個人が簡単に情報発信できるようになったという意味ではDecentralizedされたメディアの形です。

また、少ない元手で起業できるようになったこともWeb2.0の恩恵であり、巨大な資本力を持った大企業を打ち負かす企業が現れたのもDecentralizationの現れでしょう。(まあ、その後、いくつかの新興企業はそのまま大企業になりましたが…)

Web1.0も、技術的には少し敷居が高いですが、個人が世界に向けて情報やデータを発信できるメディアを手に入れたという意味では革新的でした。


つまり、DecentralizationはWeb3.0の専売特許ではなく、Web1.0でも2.0でも志向されてきたものであり、しかし果たせなかった夢である…と。

そして、Web3.0でもおそらくDecentralizationは完成しないと私は予想しています。

この先、ウェブが4.0になっても5.0になっても、完全にDecentralizedな世界を実現するのは難しく、だからこそ挑戦しつづけていくのだと思います。



■ Web3.0の定義[厳密版]


以上の前置きをした上で私がWeb3.0を定義すると、

Web3.0とは、Bitcoin以降に登場した新しい技術・概念であるブロックチェーン・トラストレス・クリプトエコノミクス・クリプトークンを基盤としたDecentralizationへの再挑戦である

ということになります。


ただし、ブロックチェーン自体は単なる技術なので、同じことが可能な技術があればブロックチェーンに拘る必要はありません。

また、クリプトークンについても、それによるインセンティブ設計以外の方法でトラストレスな取引が実現できるのであれば、クリプトークンが無くても構いません。

そして、トラストレスという概念自体は、信頼すべき第三者(≒中央集権)を必要としないということなので、Decentralizationの概念に含まれると考えられます。

したがって、Web3.0をより簡潔に定義しようとすれば、これら3つのキーワードは省くことができます。


ということで、改めてWeb3.0を定義すると、


Web3.0とは、クリプトエコノミクスによるDecentralizationへの再挑戦


となります。


なお、Web3.0を理解するためにはクリプトエコノミクスがわからないといけないわけですが、実は私もよくわかっていません。

しかし、Bitcoinの革新的なアイデアはクリプトエコノミクスという形で学術的に一般化されつつあり、「クリプトエコノミクス」というキーワードを除いてWeb3.0を端的に定義づけるものはないように思います。




三部作に分けることでサラッとポエ散らかそうと思っていたのに、例によって長くなってしまいました。

第二部は、「いやでもWeb2.0ってそんなに明確な技術とか概念で定義されていたっけ?」というところから始まる話です。

[第二部へ]



公開日:2019/01/04
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難しいことをできるだけ簡単に説明することにもずく生命を賭けています/魔法使いオズモン/Web3.0な世界に期待/Trust日本Telegramアドミン/Twitter: @mozk0x
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