とけいはお笑いが大好きです。
M-1 グランプリは時間がある時、絶対に準決勝から見ます。
これだけでお笑い通であることが分かる人にはわかってくれるはずです。
さて、とけいが文に関する仕事に関心を抱き始めたのは「舞台脚本」からでした。ですが更にその前に、一度だけコントの台本を書いてくれとお願いされたことがありました。
結果として、当時のとけいには納得するものが出来ませんでした。
お笑いと言ってもその流れはお話(ストーリー)に沿ったものであり、
その中でさまざまな落差・ギャップから笑いは創りだされていきます。
そしてこの落差が大きくない限り、「爆笑」は生まれません。
今回ご紹介する「構成が神がかっているコント」は、その振れ幅がものすごく大きく純粋にすごいと思ったコントであります。
それでは作品を一つずつ見ていきましょう。
ですが、その前にお話しておきたいことがあります。
「小説とお笑い」
ここでのお笑いは主に「コント」の脚本を考えていきましょう。
またコントの場合は、あえてストーリーを破壊させておもしろく見せているパターンもあります。
ここで例を挙げて考えてみましょう。
<設定> ファミリーレストラン
小説の場合
起 ファミリーレストランでお気に入りの1品を注文する
承 店員がメニューを間違えて持ってくる
転 なぜか自分のメニューは横のテーブルの人が食べている
結 その自分のメニューを食べている人は生き別れた兄さんだった
このようにストーリーを大きく転がして、話としてのうねりを作ります。
その中で綺麗に波をつくってまとめ上げていきます。
お笑いの場合
起 ファミリーレストランでお気に入りの1品を注文する
承 店員がメニューを間違えて持ってくる
結(転の深堀り)
だんだん間違うメニューが荒くなり、玉ねぎ1玉などもはや材料に
お笑いの場合、基本ベースは1つの事を深く話題にしていきます。
細かい1つのトピックを深堀して、ボケを転がしていくほうが面白くなるからです。そしてその方がお笑いとしても作りやすく、短い尺におさまりやすいです。
お笑い優先の台本にするとストーリーの「起承転結」が結までに至らず、最後の大オチを「転」のシーンのまま、終わるケースが実は多いです。
笑いの頂点を迎える「転」の段階でコントを終えるほうがおもしろい印象のままコントを終えられるということが大きな理由です。
ストーリーの「起承転結」をきっちりと作ったコントは、話の方に引っ張られがちになってしまい、お笑いの方に目がいきにくくリスクを伴います。
全く違うジャンルです。
さて、この前置きを知ってもらった上でタイトルにつけた
「構成が神がかっているコントとは」どのようなコントなのでしょうか?
1.大前提としてコントとしておもしろい
ストーリー構成がいくら良くても、普通に面白くなければ「お笑い」ではありません。
この場合、脚本が良くても「お笑い」として面白くないケースもあるということです。そのくらい「お笑い」は難しいです。
2.コントの中に、ストーリーの「起承転結」が全て描かれている
特にテレビの中で見られるコントは短い尺のものが多く、ストーリーとして成り立っているコントをお目にかかることは結構少ないです。
ストーリーの「起承転結」が全て描かれていると話は綺麗になりますが、お笑いとしては難しくなる傾向にあります。
その欠点をどう笑いに変えて、「結」まで持っていくか。
作り手の腕の見せ所です。
3.お笑いの大オチがストーリーの「結」であり作品としても成り立つ
「結」の部分のストーリーの終わりが、お笑いの大オチとして組み込まれています。
そのため、お笑いとしても面白い。作品として面白い。
この条件に当てはまっているコントのことを「構成が神がかっているコント」とこの記事では表現しています。
さあ、ようやく本題です。
このコント。
実は以前にも紹介したすぎて、話の中にむりやりねじ込んだ事があります。
今までみたコントの中で、一番感動したコントです。
・圧倒的なストーリー構成
・2人の演技力の高さ
・留守番電話の機能を活かした秀逸な場面設定
バラエティー番組で見ない日はない「バナナマン」のお二人。
彼らが評価を得ていったのは、ずば抜けたコントの面白さ。
基本的にロングコントを得意とする二人は、毎年未だにコントライブを開催しています。そのチケットは人気のあまり、プラチナチケットと化しています。
このコント「ルスデン」は、留守番電話のメッセージを遡っていくことでストーリーが動きだすコントです。
その日、携帯電話を家に置き忘れてしまっていたが
あまり気にすることなく上司と飲みに行っていたサラリーマンの日村。
深夜2時にベロベロになって帰ってきます。
携帯電話を家に忘れていたこともあり、家の固定電話に留守番電話のメッセージが残っていました。
その1件目の伝言、友人の設楽から残された一本のルスデン「変な奇声」が
日村の耳につよく残ります。
そこから動いていく「ルスデン」からのコント。
ぜひお楽しみください。
25分を越えるかなり長尺でありながら、普通にお笑いとしてもものすごく面白い。ストーリーを最後まで見終えた人は、「お笑い」とは別の感情を抱くと思います。
ありふれた日常を切り取ったコントでもあるので、非常に設定が分かりやすくすぐにのめり込めます。
そしてその圧倒的な脚本をベースに2人の演技力がキラリと光ります。
あなたはこのコントを見たら、きっと「ルスデン」の履歴確認をすることでしょう…!
わずか4分未満のショートコントでありながら、1本の映画を観たような感覚になるようなコント。
コントと呼ぶよりは「作品」と呼ぶにふさわしいコントです。
ピン芸人の「マツモトクラブ」さんのコントは、全体的に主人公をマツモトクラブさんが演じるのではなく、他の主要人物を演じることが多いです。
今までのピン芸人は「主人公=その芸人」の構図が普通であり、コントの見せ方自体が斬新であります。
このコント「弔辞」も主人公は「亡くなった友達」でありツッコミの役割。
その友人のために弔辞を読むマツモトクラブこと「なべちゃん」がボケになります。
コントは「なべちゃん」がヘンテコな弔辞を読む場面から始まります。
その内容を「亡くなった友達」が天の声としてツッコミを入れていきます。
さて、その弔辞の真意とは…?
たった3分22秒でありながら、ストーリーの「起承転結」が全て描かれており、お笑いとストーリーの面白さが融合した傑作です。
ここまで話として綺麗なコントは見たことがありません。
マツモトクラブさんの演技力が、もはやコントの域を通り越して映画のような感覚を与えてくれます。
幼馴染の友情の素晴らしさを再確認できるコントだと思います。
最後はよしもとから3人組トリオであるパンサーを取り上げたいと思います。
切れ味鋭いオチが見事なコントです。
脚本を書いている菅さんの構想力に脱帽の一言です。
3人のキャラを活かしたコントです。
銀行強盗のニュースを見ていて物騒になったと警戒している向井。
そこに遅れてやってきた菅の姿が明らかに銀行強盗の姿。
そのことを不審がる向井を横目に旅行に行きたくてしかたない尾形。
最後の一言で全てが繋がる話の構成に
もう一度、絶対に見たくなるコントになっています。
話がかなり作り込まれています。
一言一言に意味があり、切れ味が鋭い作品になっています。
1度目と2度目では、見るほうの感覚も変わる
非常に味わい深い出来になっています。
そのセリフの使い方に高い構想力を感じました。
お笑いはさまざまな要素が絡み合って笑いになります。
もっと語りたいのですが、要望があったら書きたいと思います。
・お笑い通が語る。発想が神がかっているコント3選!
・天才!その世界観が素晴らしいお笑い芸人
など書こうと思えば無限に書けます。
他にも面白い小説などの特集も需用があれば記事にしてもいいかなと考えています。
いかがでしたでしょうか?
本当に見てほしいコントを挙げましたので、秋の夜長にぜひご鑑賞ください。
それでは。