イノベーションには、常にさまざま要素が絡みあいます。画期的なイノベーションは社会的な価値観を大きく揺るがすだけでなく、企業や政府などさまざまファクターから私たちの生活に変化をもたらします。
仮想通貨は、既存の金融システムを大きく塗り替えていきます。インターネットの登場で、国という縦割りの壁は溶けていきました。また、情報格差というかつて貴族などの上流階級のみしか知り得なかった情報を今や1秒で検索することが可能になりました。
同時に、外国のニュースもリアルタイムで知ることが出来るようになりました。今度は、仮想通貨です。仮想通貨は各国のお金という縦の壁を全て溶かしていきます。また、仮想通貨を活かしたビジネスモデル「ICO」は、ブームになりつつあります。
今現在、ICOはルールが甘く、詐欺のようなネガティブな意見が目立ちますが、制度が整えばより新たなイノベーションに繋がるビジネスを行う会社が評価を得て、仮想通貨で資金調達していくスタイルがより標準的になっていくと思います。
仮想通貨は、経済の中心である「お金」のカタチを変えていきます。
このイノベーションは、働き方や価値観などを大きく動かす変換点であり、歴史に残る出来事に今、私たちは遭遇しています。
イノベーションを主導する型はジャンルごとに分けることが出来ます。さまざまな要因から発生するイノベーションのカタチを型に分けることで、性質を詳しく知ることが出来ます。
この型は、科学的な発見や技術の進歩によって新しい可能性が発生する型です。この技術が新製品やサービス開発を刺激していきます。
仮想通貨においては、ブロックチェーン技術がこの技術プッシュ型に該当します。
この型は、市場で満たされないニーズが顕在化していき、新製品やサービスの開発を促進する型です。
シャンプー・リンスのキャップ部分に、異なる凹凸部分をつけておき、触れるだけでどちらか判別できるようになったのは、このニーズプル型がきっかけです。
イノベーションによって、どの分野の技術が発展していくのか、ジャンルごとに考察してみましょう。
新技術によって、全く新しい機能を付加したり、大幅にコストを削減させるような新製品やサービスを生み出すことです。
全く新しい製品分野と市場を創造したものです。
仮想通貨は全く新しい概念であり、この市場的革新にあたります。
イノベーションの定義として、画期的なことであることは勿論大前提です。それともう一つ、しっかりと市場に流通したかどうかという点が大きな判断基準になります。
幾らものすごく画期的な発明であっても、世間に浸透していなければ全く意味を成しません。
イノベーションとは市場で成功した画期的なモノ・サービスを指す言葉であります。
その意味において、仮想通貨はまだ本当の意味での「イノベーション」とは現段階では言えません。
政府や企業が積極的に仮想通貨の導入を考えているので、イノベーションと成り立つとして推測していますが、本当に成功したのかはまだ現状では分かりません。
もしかすると、仮想通貨はイノベーションとして成功せずに、ブロックチェーン技術だけが分離して「イノベーション」として確立していくかもしれません。
もしくは、仮想通貨の中でも、あるコインだけが本物の「イノベーション」になる可能性もあります。
仮想通貨のイノベーションが新たなジャンルの組み合わせを呼び、更なるイノベーションを引き起こす可能性ももちろんあります。
仮想通貨の「イノベーション」には今後も注目です。
イノーベーションのジレンマとは、それまで安泰だと思われていた巨大企業が新たなイノベーションの登場により、名もないベンチャー企業に敗北していく事を指します。
この理由は、新たなイノーベーションに大企業がついていけなかった事が最も大きな要因です。
市場にこれまでに存在していた製品や技術を使用して発展していくことは、改善的なイノベーションと呼ばれます。
既に持っている技術の応用や開発能力の延長戦上で、誕生したものであります。
そのため、その分野において大きな発展が見込めます。
一方で、既存の技術や概念を大きく超えて、誕生した技術は、革新的なイノベーションと呼称されます。
「仮想通貨」がその代表的な例になります。革新的な技術は、既存の技術や概念が利用出来ません。
その上で、ルールや政策も全くないので、新しく政府や企業は指針を示していく必要性があります。
この大きな発展の流れに、ついていけない企業も勿論出てきます。
イノベーションのジレンマとは、過去の技術や栄光に囚われ、次に進めない事を指します。
革新的な技術を開発する場合、この概念がよく会社内で問題になります。大きな技術革新が起きた際、代替される前時代の技術を強みに持っている企業は、なかなか次の技術に移行できません。
それは、もう古くなってしまった技術が確実に一時代を築いていた証拠であり、その技術一本で資産を築きあげた会社も少なくありません。
ですが、時代が進んだ時点で企業も新しい技術に柔軟に移り変わっていかないと、前時代に置いて行かれることとなります。
巨大企業は、メイン顧客や株主の期待に応えることが至上命題になります。
そのため、どちらかと言えば「改善的なイノベーション」に注力することになり、現存のポジションをより強固にすることに努めます。
一方で、「革新的なイノベーション」は主流市場とは全く関係のないところで発生します。当初、このニーズはメイン顧客のニーズを全く満たしません。そのため、ローエンドの顧客を相手にしながら、徐々に性能をあげていきます。
改善的なイノーベーションは、競争市場であればあるほど、迅速な品質向上が期待されます。そのため、「過剰品質」と呼ばれる領域に入っても、ポジション維持のために技術開発せざるを得ません。
巨大企業が、過剰品質に陥るまでの期間も、「革新的なイノベーション」も改善的にイノベーションを繰り返していきます。
その結果、ある時点からメイン顧客のニーズがある意味破壊的であった「革新的なイノベーションである技術」でも満たされていくようになります。
こうなると、徐々に巨大市場の顧客は新たな技術をうみ出したベンチャー企業に移っていきます。
この時になって、巨大企業は「革新的なイノベーション」の脅威を初めて感じることになりますが、今さら品質を下げたものを市場に出すことは出来ません。
そんなことをしてしまえば、既存の利益率の高い同社の商品とぶつかることになり、「共食い」(利益のつぶし合い)になってしまうからです。
以上が、イノーベーションのジレンマが発生するメカニズムです。
仮想通貨の市場は前述した「破壊的なイノベーション」にあたり、銀行は「改善的なイノベーション」に該当すると考えます。
世界中が当初は、仮想通貨に懐疑的でありましたが、徐々に新技術として認知されつつあります。
一方で、これまでの金融システムを築いてきた「銀行」は、そう易々と仮想通貨に取って代わられないような何かしらの手は打ってくると思います。
その答えが、銀行と仮想通貨の共存か、はたまた決裂かはまだ分かりません。
ですが、このままいくと銀行がイノベーションのジレンマのケースに陥ることは明白であり、どのように対応していくのかが注目されています。
三菱東京UFJ銀行などは、「MUFJコイン」などの自社コインの開発に精を出して、取り組んでいます。
目先の利益にとらわれず未来の技術を寛容に受け入れていく事が、「イノベーションのジレンマ」を防ぐ最も大事なことかもしれません。