また便乗で申し訳ない。
僕は10年以上塾講師をしていたのでこういう話題は好きだ。
が、ここでは解答を〇にするか×にするかという話は置いておこう。
僕がここで書きたいことはこれだ。
ミカヅキさんのコメント、思いも寄らなかった、なるほど!そうか!!と思った。
この場合必要なのは「まずは九九をしっかり暗記しよう、話はそれからだ。」と言ってあげれる先生なのだ。この段階の子に計算結果が同じだからといって式の意味も同じだというわけではない、なんて話をしても意味が無いのだ。
九九をしっかり暗記したうえで、それでも逆に立式するようであれば、そこで初めて式の意味を考えてみよう、という話をするべきなのである。
僕は、自然に考えたらこんな式になる訳が無い、ここまで全て逆に書くなんてわざとやっているとしか思えない、僕に挑戦するつもりでやっているのであれば×だ、その上で論破してやる、という発想しか出てこなかったのだが、なるほどそうか、そういうこともあるのかもしれない、と思わされた。
この解答をした子に対して僕が式の意味ということを懇々と語ったとしてもポカーンとするだけだろう、何故ならそんな意図は全く持っていない解答だからだ。
塾講師をやっている頃ずいぶん、何がわからないと言っているのかわからない事案に悩まされて、かなり修行してわかるようなつもりでいたが、まだまだのようだ。
相手の思考を理解することが出来て初めて教えることが出来るのである。
逆に僕は九九を習った頃に、導き方がわかっていることを暗記するなんて無意味だ、と思って暗記を拒否していた。
ここで、理解しているということと、それを使うということは別で、使う段階では暗記しておいた方が良いこともある、と先生が言ってくれれば良かったのだが、先生からは面倒だから暗記を嫌がっているだけに見えたのだろう。
お陰で僕は未だに九九を暗唱したり単純な筆算をするのがとても遅い、センター試験など時間勝負が必要な試験で結構痛い目にあった。理解のズレが生んだ教育の失敗である、面倒だから言っているのではないのに「覚えるまで家に帰れませんよ」なんて言葉では僕の、暗記は無意味だ、という固い意思は曲げられなかったのである。
つまり何が言いたいかといえば、この解答を〇にすべきか×にすべきかなんて議論は大人の遊びでしかないということだ、子供にとって必要なのは何故この子がこの式を書いたのかという議論なのである。
ということをミカヅキさんのコメントを読んで気づかされた。このコメントを読む前は僕も〇にすべきか×にすべきかしか考えていなかった。ここで、やっぱり職員会議の結果、全部〇にするね、良く出来ました、と採点を直されたところで、この子の九九の暗記が中途半端であるということは何の変化もしないのだ。
もう塾講師をしていないが、またするようなことがあったら教訓にしたいと思う。
ところで、僕を含め、そもそも逆に書いてしまう気持ちがわからない、という人達が何故式が逆なことをそんなに気持ち悪いというのか、を非常に端的に表現していて凄いなと思ったコメント。「被乗数が求める答えの単位と一致している」こんなに短く逆の立式が気持ち悪いことを説明できるなんて。
この話はしないでおこうと思っていたが、やっぱり少しだけ。
8cmの3倍は何cmですか?
3×8
これは流石にあんまりだと思う。
仮にこれを〇にするのであれば、
8+8+8
と書いた解答はどうであろうか、掛け算を使えなんて書いていない、当然〇だ。
では、
3+3+3+3+3+3+3+3
と書いた解答はどうであろうか、×だろうか、×では筋が通らない〇にすべきだ。
だがこれは正解か?僕の感覚では立式としては明らかに不正解だ。
8×3も3×8も8+8+8も3+3+3+3+3+3+3+3も答えは一緒だ、答えが一緒になるからといって式の意味も同じであるという訳ではない。
8×3=8+8+8であり、
8×3は8+8+8である。
しかし、
8×3=3+3+3+3+3+3+3+3ではあるが、
8×3は3+3+3+3+3+3+3+3ではない。
というのが僕の見解だ。
8×3=3+3+3+3+3+3+3+3これだって、本当は、
8×3= 3×8
=3+3+3+3+3+3+3+3
こう書く方が良いと思っている。
とはいえ×にするか〇にするかは、予め立式とは何を意味するのかの定義と採点基準を明確に示しておくべきだと思う。そのことについて授業中に言及していたのであれば×にされても致し方ないところだとは思う。
それは先生の見解に従えということか、という話になるが、まあそうだ、先生の見解というより数学のローカルルールのようなものに従った方が良いということだ。
例えば
y= 2x + 3 というグラフを皆さんどう描くだろうか。
おそらくこう描くだろう。「普通」はこうだ。
だが、こう描いても間違いではない、x軸をタテ、y軸をヨコにしても別に良い、ただ普通はこうは描かない、何故なら一般的にx軸はヨコ、y軸はタテに描くローカルルールがあるからだ、こんなルール決めることは子供の学習の妨げになるだろうか、僕はそうは思わない、軸を好きに決めて良いですよ何て言っていてはものすごく不便だ、やはり統一しておいた方がわかりやすい、だが数学的にはどちらでも正解だ。
どちらでも正解だからどっちで描いても良いだろ、と僕はあまり思わない。
それはそうと、式は×、答えは〇にすべきだ、式が間違っているから答えも×というのは試験と採点というものの有り方に反している、必死に解こうが、勘で書こうが、鉛筆を転がそうが、正解が書いてあれば〇、というのが試験というものだ。
そういえば昔、年に数人はどうしても授業が噛み合わない数学出来ない子ちゃんがいて、そういう子は大抵、本当は数学なんて教えたくない数学嫌い、と言っている文系の先生に回すと多少数学が伸びたりしていた。
僕はただ「九九覚えよう」と言えば良いだけのところで、8×3と3×8はどう違うかという話をわかりやすくしようと努力していたのだろう、噛み合っていない、それは点数が伸びない訳だ。
やっぱり面白いなぁちょっとまた塾講師をしたくなってきた。