痛々しく、切なく、瑞々しく、リアル。不出来なリアルは確かにそこにあるリアル。ヒリヒリしながらも、不穏を隠しながらでも、確かにそこに生きている。爽快さや痛快さではない、純粋に人を生きている。それが描かれている。
三つの短編からなっていて、どれもが素晴らしいのだけれど、出てくる前途ある若者たちは、見ていて愛おしさと同時に苦みをも抱えている。そういやこんな風に生きていたんだっけ、と青春から遠ざかるほどに、懐かしさを呼び起こしてくれる。
誰もが通る道。避けては通れない環境の中で、それでも前に進むしかないわけで。圧倒的な世界の中で、自分の周囲という狭さを確実に生きていく切実さを感じた。おすすめっ。