2019年5月18日、GaudiyにDAppsゲーム『Cryptospells』のコミュニティが開設されました。
ゲーム向けのコミュニティといえば、チャットサービスのDiscordが有名ですが、これまでは『Cryptospells』でも使われていました。今回、新たに開設されたGaudiyのコミュニティがDiscordとどのような違いを生んでいるのか、その効果について分析してみたいと思います。
『CryptoSpells』(以降、クリスぺ)は、ブロックチェーンを用いたTCG(トレーディングカードゲーム)です。日本の会社が開発・運営しています。
ERC721規格で発行されたカードをブロックチェーン上に記録することで、ユーザーの所有権が証明されます。カードはサービス内のマーケットプレイスを通じ、自由に売買することができます。
サービスをより良いものにしていく上で、ユーザーの声に耳を傾けようとする企業は多いかと思います。しかし、効果的な意見を集めて、活用していくのは難しいというのが実情ではないでしょうか。
アプリであれば、ストアのレビューを参考にすることになりますが、どうしてもクレーム中心で不具合への対応が多くなりがちです。また、Discord等を用いて公式のコミュニティを立ち上げるケースも増えてきているかと思われますが、コミュニティを活性化させるには参加者のボリュームや運営の負担等が必要となり、なかなか現実的には難しい状況と言えます。
一方で、Gaudiyに開設されたクリスぺコミュニティでは、チャットルームとして設けられた「クリスペ改善班」に、ユーザーから多くの意見が寄せられていました。バグの報告はもちろんのこと、使い勝手の良くなる機能やもっと楽しくなりそうな機能等、様々な観点から意見が飛び交っています。
ユーザーとして感じたことが運営に直接届くだけに止まらず、それらの意見が実際に反映され、サービスがより良くなっていく実感を得ることに喜びを見出す、そういった好循環が生まれている印象を受けました。
また、「企画(募集を目的として掲示板のようなもの)」としてもフィードバックの募集が行われており、単なるクレームには止まらない意見やアイデアが続々と集まっていました。
Gaudiyの性質上、建設的な意見が集まりやすいと思われるため、サービスの検証に時間をかけてリリースを遅らせるよりは、多少不完全な状態でも早めにリリースをしてしまい、ユーザーとともにブラッシュアップを重ねていくというスタイルの方がお互いにとってもメリットが大きいのではないかと感じました。
さらに、ユーザー自ら「企画」を立てることが可能で、例えばコミュニティ内の報酬として手に入る独自トークンで購入できる「ギフト」として用意されているオリジナルグッズのアイデア募集等が行われています。実際に採用されるかもしれないと思うと、アイデア出しにも熱が入りそうです。
こうしたユーザー主体で盛り上がるケースが発生することもGaudiyの特長です。「コミュニティ内の報酬を得たい」「コミュニティの価値を高めたい」というインセンティブ効果により、「サービスをより良くしたい」という思いが一層高まり、自律的かつ建設的な活動につながっているものと思われます。
良質なサービスのユーザーコミュニティは盛り上がりを見せ、ユーザーコミュニティの盛り上がりがサービスをより良いものへと押し上げる。こうした相関関係自体は認められますが、実際にはコミュニティを盛り上げるということの難易度の高さが障壁となるように思えます。結果として、公式からの告知やクレームの集積に止まってしまうケースが多いのではないでしょうか。
その点、Gaudiyのクリスぺコミュニティでは、ゲームをより楽しむためにユーザー自ら企画や交流を活発に行っている印象を受けます。
例えば、チャットルームの「攻略情報」でゲームの攻略情報を共有しあったり、「バトル部屋」では自主開催の大会の企画・参加募集等が行われています。また、「企画」でも同じく自主開催の大会についての意見募集やコミュニティ限定カードの名称や絵柄等を予想する募集が行われていたりします。
このような企画・交流がユーザー主体で活発に行われる点も、やはり前述の通りトークンコミュニティサービスであるGaudiyならではの特長と言えそうです。
最後に、カスタマーサポートの領域でGaudiyがもたらしている効果について取り上げておきたいと思います。
企業によるコミュニティ運営において期待される役割としては、これまでにも触れてきた「ユーザーからの意見の集積」「ユーザー同士の交流の活性化」等の他に、「不具合やクレームへの対応」が含まれるかと思われます。実際に、クリスぺでも前述の通りDiscordを公式のサポート窓口として使用されていました。
しかし、いざコミュニティ上で全てのサポート対応を運営側で行うとなると相当な負担が予測されます。これはコミュニティ活用に限った話ではないですね。どのような手法を採用したとしても、ユーザーと向き合い真摯に対応するということはサービスを運営する上で欠かせないことであると同時に、どうしてもマンパワーを割かざるを得ない事案となります。
ところが、Gaudiyのクリスぺコミュニティでは、そうした不具合や疑問点へのフォローであったり、クレームやトラブルへの対応について、運営が介在することなく、ユーザー同士で完結させているケースが見受けられました。
最も大きな事例としては、とある対戦イベントにおいて特定のユーザーによる不正が行われたのではないか、という事象が発生した際にユーザー同士によるトラブルへと発展したのですが、その沈下のために動いたのが、同じユーザーの1人だったのです。本来なら、運営自ら仲裁に入る状況であり、沈下しようとしてまた炎上するといった事態にもなりかねないのですが、Gaudiyのクリスぺコミュニティでは、ユーザーの手によって安定を取り戻しました。
ユーザー任せで楽をする、という視点に立ってしまうのも良くはないですが、コミュニティを通じて頼もしいパートナーを味方に付けることができるのは間違いなく、ユーザーとの共創を高いレベルで実現するための場として、非常に強力なサービスと言えそうです。
また、GaudiyにはWiki機能も備わっています。これにより、コミュニティに参加するユーザー同士でクリスペ、およびクリスぺコミュニティに関する様々な情報がまとめられ、疑問・質問等もWikiを見れば解決するという仕組みが構築されようとしていました。
こうしたことは、コミュニティの価値向上を軸にユーザーによる自律的な活動を促進・誘発するGaudiyだからこそもたらされる効果であり、結果として運営のカスタマーサポートに要する負担は大きく軽減できるものと想定されます。
いかがでしたでしょうか。
Gaudiyがクリスぺコミュニティにもたらした効果について、大きく3つに分けて紹介しました。
改めて、それらの効果をもたらすGaudiyの特性についてまとめると、それはGaudiyがトークンコミュニティサービスであるという点が大きく関係します。
Gaudiyでは、ユーザーは自身が利用しているサービスのコミュニティに参加しているということに加えて、コミュニティが発行する独自トークンにより、「コミュニティ内の報酬を得たい」「コミュニティの価値を高めたい」というインセンティブ効果を帯びることとなり、そのため「サービスをより良くしたい」という思いが一層高まるので、自律的かつ建設的な活動を生み出すこととなります。
この特性が、Discordを始めとする他のコミュニティサービスとの大きな違いとなっており、他に勝る自律性、アクティビティ、貢献意識の高さにつながっています。これこそが企業とユーザーの共創において、欠かせない要素と言えるのではないでしょうか。
実際にひとりのクリスペユーザーとしてGaudiyのクリスぺコミュニティに参加してみると、なんとなくゲームに触れているといったレベルから(当方、笑われるぐらいの初心者ユーザーです。。。)、他のユーザーの意見に目を向けるだけでも理解や興味が深まっていく実感がありました。自分でも発言することで評価を得られたり、貢献することができるようになると、さらにハマってしまいそうな気がします…。
今回はクリスぺコミュニティを事例として紹介しましたが、今後、他のあらゆる企業のサービス、プロダクトにもGaudiyが活用されていくことを期待したいですね。