アクロニムという単語は日本語になっていませんが、日本語版アナグラムが存在するように日本語でのアクロニムも成立するはずです。
日本語の場合はかな・漢字・ローマ字などいろんな字があるので3通りのバージョンが考えられますよね。
まず漢字の場合、例えば日教組とか公取委とか高野連とかいう形で、主に団体の名前としてよく見られます。ただ、アルファベットと違って漢字は表意文字ですから、略語を見ただけで想像がついてしまいます。
これは英語の acronym からはちょっとかけ離れている気がします。
ならば表音文字であるカナの場合はどうか? 例えば賃上げの記事でよく見るベア。これ、ワケ分かりませんよね。これがベース・アップの略だと知った時は非常に驚きました。元の英語の base up は2音節、短縮したベアも2音節なので、外国人は多分略す意味が分からないでしょう(笑)
この手のカナ・アクロニムは他には滅多に見ません。
最後にローマ字。そう英語ではなくてローマ字の日本語。──代表格は NHK(日本放送協会)でしょう。他には YKK(吉田工業)かな? そう言えば昔は株式会社を略すのに co.,ltd. ではなく KK と書いたもんです。そういう風に日本語をローマ字にして略すのがハイカラだったんでしょうね。
ただし、さすがに外国人には NHK では何のことやら判らないので、彼らは海外では JBC と名乗っているそうです。
最近では日本語をローマ字にしてアクロニムを作る例はかなり減ってしまいました。むしろ JT とか JR とか JA とか JRA などと英語に訳してからアクロニムにするのが普通です。
やたらとJが多いのは日本だから当たり前と言えば当たり前ですが、昔はそれほど多くなかったんですよ。サッカーのJリーグ発足以来一気に増えた気がします。
さて、本来の英語のアクロニムの話に戻します。
一時期ものすごくよく使われたアクロニムに NEET があります。すでにニートで日本語になっていますよね。
Not in Education, Employment, or Training、つまり学校にも行ってないし職にも就いてないし、さりとて職業訓練を受けているわけでもない人のことですね。主に若い人を指し、学校は卒業してる(上の学校に進む気もない)のに就職する気もなく、就職するための努力をする気も起こらない人たちのことです。
同じような分野のアクロニムに DINKs というのもありました。Double Income, No Kids、つまり共稼ぎで子供のいないリッチな夫婦です。最後の s は複数形の s で、夫婦2人なので複数形になっています。
ところで、これをもじった SITCOM というアクロニムがあるのをご存じでしょうか?
同じ SITCOM でも前回書いた situation comedy じゃないですよ。Single Income, Two Children, Outrageous Mortgage、つまり稼ぎはダンナのみで子供は2人、おまけに巨額の住宅ローン、の意味です。
いやあ、面白いっすねえ、こういうの調べ出すと。
他にもこんなのがあります。
会社で伝言メモに「○○さんから TEL あり。PCB 」って書く奴がいるんですよね。もちろんこれが Please Call Back のアクロニムであることは解るのですが、果たしてこれは英語として正しいんだろうか?と気になり始めました
Call の目的語がないのがなんか気持ち悪いのですが、しかし PTO (Please Turn Over:裏面もご覧下さい)でも目的語は落ちているしなあ…、と長年疑問だったのでこの際調べてみました。
先頭に載っていたのはやはり汚染物質の PCB でした。見たこともない難しい単語なので元の形は書きませんが、これが一番有名でしょうね。
以下読んで行くと面白いのですが、Pakistan Cricket Board とか Panama City Beach とか Packet Control Block とか、まあ様々な例の続くこと!
そして、遂に発見しました。Please Call Back ──かなり下のほうではありますが、ちゃんと載っているではありませんか!
ね、面白いでしょ? じゃ、今日はここまで。See you later! 次回に続きます。
え、See you later のアクロニムは SYL かって?
まさかと思うでしょ? でも、ちゃんと載ってました。
じゃあ See you again のアクロニムは SYA かって?
ダメダメ、それは Shut your ass のアクロニムらしいです(笑)
※ Shut your ass!:うるせえ!
直訳すると「ケツの穴閉じろ!」ですが、相手の口のことを悪し様に言った表現のようです