前回の続きです。
前回はクリスペの存在意義を考える前提で、トレーディングカードゲームが実は当初の目論見と違う方向にずれて発展したことを書いていきました。
発展したこと自体は大変すばらしかったのですが、我々はTCGの設計者が思い描いていた未来を見ることはできなくなってしまいました。
そしてトレーディングカードゲームも紙からデジタルに移行しつつあるわけですね。
TCG(トレーディングカードゲーム)からDCG(デジタルカードゲーム)へ。現在、紙のカードゲームは大抵がデジタルカード版を遊ぶことができます。
DCGはやはりe-sportsの方向に向かっていきます。それがメジャータイトルであればあるほど。
e-sportsみたいにかっちりせずにカジュアルな遊び方もできるけど、「e-sportsモード」で勝つことが最終目標みたいなもって行き方にどうしてもなっていきます。
やっぱり、ショービジネスとしていかないといけませんからね。
勝者をヒーローとして羨望のまなざしで見てもらえるように、演出する必要があります。
そのため、土台として「すべてのカードが使用可能になる」ハードルはどうしても低くなっていきます。
少なくとも、「一つのデッキを組む」くらいの資産は無課金であっても全然余裕で与えてくれるような設定。その上でアバターを使用したり、沢山のカードを使用したい人には課金をお願いするようなビジネスモデル。
そのため誰でも現時点の最強デッキを作ることは可能という段階からの争い、つまりほぼプレイング100%で勝敗が分かれるゲームしか遊べなくなるというわけです。
自由が故の不自由なわけですね。皮肉なもので。
多分この流れは止められません。別に悪いことではありませんから。
そこで真打クリプトスペルズの出番というわけです。
前回僕が上げたトレーディングカードゲーム発展の分岐点
・全員が全種類のカードを所有していることが前提となっている
・プレイヤー同士のトレードが制限された
・インターネットによる情報の氾濫
の3つについてクリプトスペルズは他のゲームと逆の方向に進んでいるし、進み続けることができると思っています。
もう一回宣言しておくと、「どちらが正しい」ではないのです。
どちらの世界も見れたら僕の知的好奇心はもっと満たされる。そして、そういう世界を見たい人は他にもいると思いたいし、そういう人にはクリプトスペルズというゲームの体験ががきっと財産になると思っています。
つまり、現在のトレーディングカードゲームを基準にした場合、クリプトスペルズが行う施策はすべて間違いに見えるはずです。
では具体的に見ていきます。
・全員が全種類のカードを所有していることが前提となっている
→販売数制限により全員に十分なカードが行き渡らないような設計。
PaytoWin、不平等なカードゲームを実施。
・プレイヤー同士のトレードが制限された
→ユーザー同士のトレードは自由。運営からの販売価格もオークション形式であるため、価格はプレイヤー自身が決めている。
・インターネットによる情報の氾濫
→そもそもトッププレイヤーと同じカードが手に入らないのでデッキをコピーできない。そもそも流行っているカードゲームではないので情報があまり出回らない。
という状況になっています。見事に分岐点の向こう側に立っていますよね。
当初この方針が批判を集めたこともありましたが、去年の6月からサービス開始してもう10ヶ月です。会社の経営状態とかはわかりませんが、ゲーム自体は今現在破綻せずに続行できている状態です。
これで新しい体験ができた・・・と思いきや、ちょっと違うなと思いませんか。
「実際やってみると、案外普通なカードゲームだったな」
と思いませんか。
違うことといえば、レジェンドを持ってないくらいのもので、あとはまあ、そんなに他のゲームと変わらないと。
個性の伸ばし方が足らない。せっかくのコンセプトが生かしきれてない。
そう思いませんか。
以下次回に続きます。