さて、今回は私のオリジナルカクテルをご紹介させていただきましょ。
以前の記事でも書いたがバーテンダーを少しだけさせてもらったことがあり、カッコつけてオリジナルカクテルを開発するのに没頭してたこともあったのです。
その中でも一番思い入れのあるカクテルを皆さまにぶちまけてやろうと思います。
読み方は【さい】です。
何故、この名前なのかは追って説明するので最後まで読んでくれたら嬉しいのです。
レシピはこちら。
桜リキュール 10
ピーチリキュール 15
アプリコットリキュール 5
アマレット 5
グレナデンシロップ 5
生クリーム 20
※ドーバーよりサントリーの桜リキュールの方がしっくりきます。
上記をシェークしてカクテルグラスに注いで完成。
(ベルローズの花びらを一枚落としたら可愛い雰囲気出せますね。)
何故このカクテルが生まれたかと言うと、誰にでも居る幼馴染。
その人がキッカケなのです。
彼女の名前は紗衣ちゃん。
幼稚園の頃から仲良しの女の子。
周りからも茶化されるくらいの仲良しで子供ながらに好きだったのです。
しかし、少しずつ大きくなるにつれ、周りからのからかいに恥ずかしくなったのか、紗衣ちゃんは俺と一緒に居る時間を少しずつ減らしていった。
そして、小学校高学年で俺が転校することになり、紗衣ちゃんが家に来てくれました。
「また帰ってくるよね?」
目を潤ませながら聞く彼女に黙って頷くと、彼女は良かったと満面の笑みを見せてくれました。
高校生になり、田舎に帰った時、彼女は可愛くなっていて、照れに照れて目を見て話すのがしんどかったなとシャイボーイなインド人はコミュ障状態です。
そして、専門学校の卒業期の冬に田舎に帰り、紗衣ちゃんに会おうと思って、携帯に連絡しましたが出ません。
仕方なく家に顔を出しに行きましたが出て来たのはお母さんだけ。
俺の顔を見たお母さんは急に泣き出しました。
『紗衣、入院してるの。会ってあげて。』
お母さんの反応である程度、状況を理解した自分は翌日、紗衣ちゃんが入院している病院に行きました。
病室に入って開口一番紗衣ちゃんは怒りました。
「何で連れてきたの!こんな姿見られて喜ぶと思ったの!」
彼女は泣きじゃくりながらお母さんを睨んでは涙を流しての繰り返しでした。
これは、まずいと思い部屋を出てお母さんと二人きりにさせて、待つこと20分程…
お母さんが病室から出てきました。
「今日はごめんなさい。でも紗衣が日を改めて来て欲しいって言ってるからお願いしても大丈夫?」
お母さんも疲れ切ってる表情だったので、笑顔で大丈夫ですと返すのが精一杯でした。
何よりも帰り道でお母さんから聞かされたのは、紗衣ちゃんは余命宣告を受けており、その当時で2年もつかどうかとの話だったのです。
改めて、日を変えて彼女に会いに行きました。
思い出話に花を咲かせ、バーテンダーになりたいと夢の話をしたり、彼女が好きだった桜餅を花見しながら一緒に食べたいなと伝えたのです。
「体調が良ければ少しくらいは外に出れるみたいだから春もまた来てくれる?」
彼女の言葉に絶対約束すると指切りを交わして帰りました。
就職前の春休み。
約束を守るため、彼女に会いに田舎へ帰ったのです。
桜が咲いている中、彼女が食べれるかどうかも分からず桜餅を買ってカバンに忍ばせました。
病室に居た彼女は冬よりもまた痩せていて、言葉を一瞬失ったのです。
「毎回、約束守ってくれてありがとうね。」
あの時と同じように彼女は笑いました。
その笑顔も忘れられません。
「ごめん、外出れないみたい…」
窓から一緒に花見をしたいと言う彼女の近くで舞い散る花びらを見て、涙が出るのを堪えました。
「来年も一緒に見れたらいいな。」
涙を流しながら彼女の手を握り思った事を伝えました。
二人してボロボロ泣いて、小さく指切りを交わし、その日はサヨナラをしたのです。
仕事を始め、忙しさに追われて少しでも彼女との約束を守る為にカクテルの勉強をたくさんしました。
当時は、少しだけでも元気付けるつもりだったのですが約束は守らなきゃ彼女が何処かに行ってしまう気しかしなかったのです。
そして、桜餅風味のカクテルを作ることもでき、冬休みに田舎に帰りました。
紗衣ちゃんの家に挨拶をしに行って、お母さんがいつものように玄関に出ます。
俺の顔を見てお母さん泣き崩れました。
「紗衣がね…紗衣がね…」
それだけで全てを悟り、自分はドラマみたいに膝から崩れ落ちました。
声にならない声が頭の中で響き渡ります。
落ち着いたお母さんに促され、家に上がりました。
彼女の遺影が微笑みかけています。
その笑顔がまた綺麗で涙が溢れて止まらなかったです。
また顔を出しに来ていいかとお母さんに許可をもらい、市街地に酒を探しに行きました。
大荷物になる事も厭わず材料をかき集めたのです。
そして、翌日。
お母さんにそのカクテルを振る舞いました。
お母さん号泣です。
「紗衣、絶対喜ぶよ…」
その言葉だけで満足でした。
そしてお母さんにこのカクテルの名前に彼女の名前をつけていいかと許可を取り、その名前を付けました。
これがこのカクテルの生まれた経緯です。
マルガリータみたいに立派なものじゃないけど彼女が生きた証なのです。
このカクテルを作るとき紗衣ちゃんの話をしたりします。
お客さんからは、本当に紗衣ちゃんのこと好きだったんだねって言われたりしました。
今は彼女の生きた証を美味しいって言ってもらえるのが彼女へ出来ることかなと思っています。
バーテンダーじゃなくなったけど、ずっとずっと忘れられない人です。
書いてる途中ガン泣きだったのでここら辺で終わります。
ほんと美味しいから!
おわり!