強制ロスカットとは、トレーダーの含み損が一定以上に大きくなったとき、FX会社がトレーダーのポジションを強制的に解消させる仕組みのことをいいます。このままポジションを持ち続けていると、致命的な損失を被る可能性があるからです。今回解説するのは、人気海外FX会社「XM」のロスカットの仕組みと水準について、です。もちろんXMにもロスカットの制度があります。
・XMではどのくらい負けるとロスカットが発動するのか?
・ロスカット水準の計算はどのようにすればいいのか?
について、今回はお話していきます。
その前に、ややこしいFX用語によって混乱しないために、以下の3つの違いを明確にしておきましょう。
・ストップロス・オーダー(損切り)
・ゼロカット
・強制ロスカット
ストップロス・オーダーとは、トレーダーが自ら設定する損切りのポイントのことです。FX会社から強制的にポジションを解消させられる前に、自ら損失をコントロールすることができます。
ゼロカットとは、海外FX業者だけに設けられている制度のひとつで、トレーダーの最大損失を元本までに限定することができます。つまり100万円を入金しているトレーダーの最大損失は100万円までとなるため、借金を負うことはありません。
そして最後の強制ロスカット(単に「ロスカット」とも)とは、ゼロカットが発動される前に、FX会社がトレーダーのポジションを強制的に決済(解除)する仕組みのことです。先ほどご紹介した「ゼロカット」が最後のセーフティなら、「ロスカット」はその前段階の措置であると言えます。では、ロスカットはどの段階で発動するのでしょうか。これは、業者によって違ってきます。海外FX会社の多くは「証拠金維持率」を20%に設定しています。XM、HotForex、AXIORYといった業者も、証拠金維持率は20%です。一方で、国内のFX会社の場合、証拠金維持率は最低でも50%以上です。DMM FX、FXネオなど大手も、証拠金維持率を50%としています。証拠金維持率が低いということは、いわば、トレーダーが損失を出しているとき、FX会社がギリギリまでポジションを持つことを許してくれるということ。つまり、他の条件が同じなら、50%、40%、30%の順で、ロスカットが発動し、ポジションが決済されていくことになります。
XMの証拠金維持率は20%。これは海外FX会社としてはごく標準的、国内のFX会社と比較すると低い水準です。つまり、国内のFX会社よりもロスカットされにくいということです。これはトレーダーの立場からすると、よいことなのでしょうか。結論としては、一長一短ではあるものの、トータルとしてみれば「よい」ことであると言えるでしょう。それはなぜなのか、以下、証拠金維持率が20%と低いメリットとデメリットをご紹介します。
【メリット】
証拠金維持率が20%と低いことによるメリットのひとつは、ロスカットされにくいことです。ロスカットが発動すると、トレーダーのポジションは無条件に即、反対売買されます。つまり手動で損切りをしたのと同じように、損失が確定してしまいます。「ロスカットされていなければ、相場が戻っていたかもしれないのに……」という、悔しい思いをすることになるのです。これは一見すると悪い考えのように思えるかもしれません。損失を受け入れずに塩漬けする、メンタルの弱いトレーダーの典型ではないかと。しかし実際には、ロスカットが発動するほど相場が一方通行に動いているということは、その後には回帰するような動きが見られることがとても多い。しかもチャートの「ヒゲ」の先端でロスカットに引っかかってしまったとあれば、投資家の悔しさはどれほどのものでしょうか。そうしたことから実際には、トレーダーは証拠金維持率の低いFX会社を好む傾向にあります。これは初心者トレーダーから上級者トレーダーまで共通しています。
【デメリット】
一方で、あなたが懸念しているように、証拠金維持率が低いことにはデメリットもあります。それは、証拠金維持率が低いとロスカットはされにくいものの、もしロスカットされてしまうと立ち直れないほど元本が失われてしまうことです。XMを含め海外FX会社にはゼロカット制度があることが多いので、元本以上の損失を被ることはありませんが、元本のほとんどを失ってしまうことは十分にあり得ます。ただし筆者としては、これが「証拠金維持率が低いデメリット」と言えるかは難しいと考えています。なぜなら証拠金維持率が何%のFX業者であれ、トレーダーはストップロス・オーダー(損切り)を設定することができるからです。トレーダーは、FX会社で設定されている証拠金維持率の下限を引き下げることはできません。つまり証拠金維持率が50%なのに、20%に引き下げることはできないのです。しかし、20%のXMで、ストップロス・オーダーを設定することで50%相当でポジションを切ることは可能です。こう考えると、「証拠金維持率の低さ」はあくまで自由度の高さであり、トレーダーはそれを使うかどうか自由です。
ここからはXMのロスカット水準の計算方法についてご紹介します。しかし実際には証拠金維持率からロスカット水準を割り出すための計算式は非常に複雑で、ここに式を記したとしても、感覚的に理解することはできません。そのため、計算式を示すのではなく、「証拠金維持率20%のXM場合、何pips負けることができるのか」というケーススタディをご紹介します。
【証拠金2万円、5万通貨の計算方法】(レバレッジ888倍、ロスカット水準20%)
5万通貨 ÷ 888倍 × 100 = 5,630
5,630 × ロスカット20% = 1,126円
証拠金20,000円 – 1,126円 = 18,874円
18,874円 ÷ 5万通貨 × 100 = 37.7pips
証拠金2万円、5万通貨、レバレッジ888倍の条件の場合、18,874円(37.7pips)まで負けることができます。この水準を超えると、ロスカットされてポジションを解消させられます。
【証拠金2万円、5万通貨の計算方法】(レバレッジ500倍、ロスカット水準20%)
5万通貨 ÷ 500倍 × 100 = 10,000
10,000 × ロスカット20% = 2,000円
証拠金20,000円 – 2,000円 = 18,000円
18,000円 ÷ 5万通貨 × 100 = 36.0pips
こちらはレバレッジを888倍→500倍に落とした場合の例です(XMでは、スタンダード口座・マイクロ口座がレバレッジ888倍、ゼロ口座は500倍となっています)。レバレッジ500倍の条件の場合、18,000円(36pips)の損失が出た段階でロスカットされます。このように、レバレッジが高いほど同じく証拠金維持率でも「ロスカットされない限界点」が遠いことがわかります。これは、レバレッジの高い海外FX会社は、国内FX会社と比べ、「証拠金維持率のパーセンテージ以上に、ロスカットされにくい」ことを意味しています。
上で紹介した計算は手動で行なうと難しいので、http://fxsoft.x0.com/fxsimu/というサイトで自動で計算してくれます。
先ほどの手計算だと18,874円(37.7pips)だったので、少し誤差はありますが、だいたい合ってます。
先ほどの手計算だと18,000円(36pips)だったので、少し違いはありますが、だいたい合ってますね。
もしあなたの損失が拡大し、証拠金維持率20%を下回ってしまったとします。この時点で、ロスカットされることは確定となりますが、では、いったいどの「タイミング」でポジションを決済させられるのでしょうか。結論として「リアルタイム」です。つまり、その瞬間に反対売買されることになります。自らストップロス・オーダーを入れたときも、リアルタイムで損切りされます。それと同様です。ロスカットは、損失がこれ以上広がらないようにするための「緊急措置」なのです。
もしXMにポジションを解消させられるタイミングを決められたくないのなら、あなた自身がストップロス・オーダー(損切り)を設定するようにしましょう。しかしそれでも、ロスカットされるタイミングを(早めることはできても)先延ばしにすることはできません。
それでは、もっと本質的にロスカットを避ける方法はないのでしょうか。XMは証拠金維持率が20%であり、またレバレッジが最大888倍と高くなっています。つまり、もともとロスカットされにくいFX業者なのです。しかし、その上で以下のロスカットを避ける方法を使えば、いっそうロスカットされにくくなります。
・証拠金を余裕を持って考える
まず、証拠金に余裕を持たせるようにしましょう。これは2つの方法があります。
・「ポジションに対し、証拠金を多めに入金する」
・「証拠金に対し、ポジションを抑えめにする」
このどちらかです。こうすることで、同じpipsを負けても証拠金に対する損失が少なくなるので、証拠金維持率が下がりにくくなります。
・損切りルールを決めておく
もうひとつは、そもそもロスカットされる前に、自分で損切りしてしまう方法です。証拠金維持率ギリギリまで損失に耐え、ロスカットされるまでに相場が反転してくれたら勝ちという「お祈りトレード」は確かに一時、大きな利益を手に入れられるかもしれません。しかし長期的には、「元本の3%を失ったら、損切りする」などのルールを決めておく方が望ましいでしょう。痛みを感じないレベルの浅い損切りを設定することがポイントです。
・両建てをしてロスカットをしのぐ
「もうすぐ反転しそうなのに、ロスカットされてしまう」「しかしポジションは切りたくない」という場合、「両建て」という方法もあります。売りポジションと買いポジションを同時に持つことです。これによってその間、ポジションの損益を相殺することができます。たとえば上図のように、ロングポジションを持っていてロスカットされてしまいそうな場合、ショートポジションを同じLot数保有します。ロングポジションを切ることは精神的に簡単ではありませんが、ショートポジションを持つだけなら、その抵抗は少なくて済みます。そして、「反転し始めそうだ」というタイミングまで待ってから、ショートポジションを解消するのです。XMでは両建てが禁止されていないので、この手を使うことができます。
最後に大切なポイントをいくつか振り返っておきましょう。
・XMの証拠金維持率は「20%」
・国内のFXの平均「50%~」と比べ、ロスカットされにくい
・海外FX業者としては、20%は平均的な証拠金維持率
もちろん、ロスカットされるかどうか?のスレスレまで含み損を抱えることは、本来、好ましい状態ではありません。しかし、資金の少ないトレーダーがハイレバで倍々ゲームを繰り広げ、成り上がるためには、積極的な運用も場合によっては必要でしょう。もしリスクを承知で積極的運用を行うなら、最低限、「証拠金維持率」には注意するようにしてくださいね!