「痴漢に対して、安全ピンで対抗する」ということが数ヶ月前にtwitterでバズりました。安全ピンという解決策に対しては、賛否両論ありましたが、概ね、こんな感じだと思います
賛成:「そもそも、痴漢をしているやつが悪いのだから当然。」
反対:「冤罪の可能性は?」「傷害罪で訴えられたらどうなる?」
私は、そもそも「安全ピンを刺す」という反応ができないと思いました。痴漢にあうというのは、とても自尊心を傷つけられる行為で、なんというか相手と対等に戦える気がしなくなるものです。
これは、30代の私が「痴漢にあった時にどうすればいいか」考えて実践していることです。10代の時に知っていたら、もうちょっと楽に生きれたかもしれないし、知っていても実践できずに、何の役にも立たなかったかもしれません。
男子学生が9割の理系の大学に入り、男子が9割9分の会議にでても、意見を述べて帰ってきている(つもりの)今の私は、女子校に通う高校生だった頃と比べたら、かなり図々しくなったし、男の人と話すことにも慣れたと思います。だから、高校生の時に知っていたからといって、今できることを当時実践できたか、までは自信がありません。
ただ、今日、痴漢に関してのツイートをいくつか読み、「あぁ、今でも痴漢にあっている子が沢山いるんだ」ということを、本当に久しぶりに思い出したので、10代の頃より図々しく、世の中を生きている私の対処法を書いてみます。少しでも、朝から絶望する気持ちになる人が減るといいです。
高校生の時「痴漢にあった時にどうすればいいか」ということを誰も教えてくれませんでした。痴漢関連のことで高校で習ったのは、スカートを短くしていると「痴漢を誘発する」という警察指導があったことだけです。警察は、加害者を捕まえ、一方で被害者には自衛を求めるという活動を、色々しています。例えば「最近この辺りで空き巣が増えているので、戸締りをしっかりしましょう」という案内があったら、ありがたいなと思います。だから「痴漢に気をつけましょう」という警察指導が高校で行われた、ということは「最近、高校生が痴漢にあう傾向が高いので、気をつけてね」くらいのことだったのだと、今となっては思います。
しかし、それが「スカートを短くしていると痴漢を誘発する」という内容だったせいで、痴漢にあうような自分にも悪い点があったのではないか、と思わせるように働きました。私にも悪い点があったと考えることは、痴漢という犯罪に対して、向き合うよりは、やり過ごす、受け流すという行動につながったと思います。
けれど、今となっては間違っていたと分かります。痴漢は通り魔と同じです。満員電車にたまたま居合わせた、立場が弱い人が狙われるだけです。痴漢にあう人は1mmも悪くありません。通り魔に対処する方法がないように、痴漢する意思がある人が電車に乗っている状況で、痴漢を防ぐ方法はありません。しかし、対処法がないということは誰にでも起こりうる、怖いことだから、被害にあった人は「スカートが短い」という構図が必要なだけです。実際、私の身の回りでは、スカートの長い子も、短い子も、痴漢にあったり、あわなかったりしていました。
(性犯罪も同じだと思います。多くの人が私は大丈夫、ということを思い込みたいがために、「露出度の高い服を着ていたから、性犯罪にあった。」という分かりやすい構図を作りたいのだと思います。本当はそんなことないのに。先日行われた、女性がレイプ被害に遭った時に着ていた服のファッションショーを見ると、そのことがよく分かります。)
痴漢にあうのは絶対に被害者のせいではありません。洋服に工夫するくらいで痴漢にあわないようにできるなら、今頃、痴漢なんてないはずです。残念ながら、通り魔よりはるかに多く、痴漢する意思がある人がいる現在では、痴漢にあわないということは、運が良いくらいのことを意味します。では、運悪く「痴漢にあった時にどうすればいいか」ということを考えるしか、ありません。そして今の私の結論がこれ。
これに尽きます。「ちょっと待って、そんな当たり前のことを聞くために、こんな長く文読まされたの?」って思った方が大勢いると思います。それができないから困っているんだよ、と。大丈夫です。ちゃんとどうやったら、「NO!」を発信できるかという方法も書きます。
そもそも、世の中には、断り上手になるハウツー本がでるほど、「NO!」と言うのは難しいことです。高校生にとって、もしかしたら中学生にとって、大人の、しかも男の人に対して「NO!」を言うのは中々難しいことです。だけど、ちょっと下記の順序を試してみて欲しいのです。
1.絶対に自分は悪くないことを思い出します。
2.こんなことをしてくる大人に対して、諦めではなく怒りの感情を持ちます。
3.出来るだけ、嫌そうに咳払いをします。(ここで止める痴漢もいます)
4.(咳払いが効かなかったら、)舌打ちをします。
驚くべきことに、私の経験では痴漢は、こんな少しのことで止まります。この方法だと、痴漢の方が勝手に止めてくれるので、駅員さんに知らせる必要もないし、冤罪もないし、痴漢か痴漢じゃないかかグレーっぽい嫌な行為にも使うことができます。覚えているのは首筋に向かって、ため息をかけるおじさん。満員電車だから仕方ない、って最初諦めようとしましたが、顔を確認すると、なんか反応をみてニヤニヤしている。たとえ、わざとではなくても「首筋に向かって、ため息を吐き出す」というのは、さすがに配慮が足りなさすぎる!と思って、怒りの感情を呼び起こし、咳払い→舌打ちをしました。そしたら、止みました。(止んだという事は、意図的だったんだろうな、と思いました。)
これは、私の経験ですので、こんなんでは、太刀打ちできない痴漢もいるかもしれません。ただ、日々痴漢をしている人の多くは、痴漢を受け流されることがほとんどのため、犯罪の自覚が希薄なんだと思います。そういう人は、怒りというものをぶつけられるた経験があまりなく、びっくりして、犯罪行為をできなくなるようです。一度、「舌打ちまでしなくったっていいじゃんか」という、弱々しいつぶやき声が聞こえてきた時もあります。
もし、この順序でやってみても、痴漢が止まらなかったら、ごめんなさい。けれど「絶対に自分は悪くない」ことを常に覚えていることは、きっと助けになると思います。年々、痴漢に合う回数が減り、どんどん当時の気持ち悪さを忘れていっています。でも、このことを10代の時に知っていたら、たとえ実践できなくても、もうちょっと楽に生きれたかもしれないと思うので、書いてみました。
ただでさえ、憂鬱な満員電車で、絶望を感じる女の子が少しでも減りますように。
※ちなみに、痴漢は日本だけの悪い文化ではありません。私が NO!を覚えたのは、フランスにいた時に痴漢にあって、身の危険を感じたからだし、ロンドンのアンケートでも乗客の10%が何らかの痴漢行為にあった、と答えているそうです。痴漢という卑劣な犯罪を、日本人の性質と結びつけて話す人が多くいるみたいだけど、それはちょっと違うんじゃないかな、と思っています。
*コメントいただいたので、文の意図が伝わるように、加筆修正しました。
MIO
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