科学「一人で二人」

【不倫疑惑】

この世に生まれてこなくて
存在しないはずの兄弟の子供が
奥さんの体に妊娠しました。

この夫婦の夫の名前は
「サム」氏

この事が解ったのは
あかちゃんの血液型が夫婦の血液型では
誕生しないはずの血液型だったからです。

そこでサム夫婦は
一体誰の子供なのか
DNA鑑定をしてもらいました。

結果あかちゃんは
サムの子供でない事が判明しました。

こんな事が起こる可能性は
2種類しかなく
体外受精に使われた精子が別人だったのか
妻が不倫をしたのかのどちらかになります。

しかし妻は
不倫してないと言います。

A case of chimerism-induced paternity confusion: what ART practitioners can do to prevent future calamity for families | SpringerLink

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【存在しない子】

サムは
この事を信じて体外受精を行った病院側に
別人の精子と間違えてないか
調査依頼を出しました。

しかし病院側は
ミスが無いという調査結果を出しました。

そこでサムは
自分の父親のDNAも含んだ
より高度で精密な検査を
再度してもらう事にしました。

結果
衝撃的な事実が判明します。

精密検査の結果
サム夫婦に出来た赤ちゃんは
サム以外の血縁者と言う結果が出たのです。

でも
このDNAを調査した研究機関は
ふと気になる事を思い出します。

サムは
白人男性なのですが
体が部分的にはっきりと
黒人のように黒い部分があったのです。

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【キメラ】

サムは
この肌の色の違いを火傷の跡と
ずっと思い込んでました。

しかし
DNAの検査を行った「ベアード」氏は
「火傷と違う全く別物の原因じゃないか？」
そう感じてました。

人の中には
たまに肌の色を2種類持ち
2人分の遺伝子が混在する
特種なDNAを持つ人がいます。

その遺伝子は
「キメラ遺伝子」と言い
凄く特殊な遺伝子なのです。

そこでベアード氏は
サムに研究所に来てもらい
再度精子を調べる事にしました。

その結果サムの精子の10％が
この世に誕生してない
サムの兄弟の遺伝子だったのです。

しかもサムの兄弟は
死産でなく元々妊娠すらしていない
この世に存在しないはずの人間です。

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【双子妊娠】

これで解った事は
2人の人間が合体して誕生したのが
サムだという事です。

しかも
サムの睾丸の繁殖細胞までもが
合体してしまったもう1人の兄弟の細胞に
浸食されてしまっていたのです。

つまり肌の色の違いは
細胞分裂の際たまに出来る失敗分裂でなく
細胞そのものが全く別人の
サムの兄弟の細胞なのです。

なら何故サムは
こんな特殊な体になったのでしょう？

キメラになった始まりは
母親が最初妊娠した子が
「二卵性双生児」だったのです。

最近の妊娠研究では
8/1の確率で双子妊娠から始まるそうです。

しかし正常なら
やがてどちらか片方が子宮に吸収され
1人で生まれてきます。

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【吸収】

しかしサムの場合は
更に特殊な生まれ方をしてきます。

双子妊娠をすると
高確率で片方が子宮に吸収されますが
サムの場合その片方を
サムの細胞が吸収してしまったのです。

その結果
二人の人間が合体する形になり
そのまま成長して
サムが生まれてきてしまったのです。

でも問題は
吸収した兄弟の細胞が精子にまで及び
サムの精子が
二種類になってしまった事です。

その結果
奥さんの子宮にたどり着いた精子が
サムの物でなく兄弟の精子だった為
サムじゃ作れない子供が誕生しました。

その後奥さんは
無事に子供を出産し
命に別状なく育っているという事です。

しかし
このようなキメラの事例は
世界で100例しかなく
非常にまれな現象です。

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【不倫問題】

今回のサムの例は
繁殖機能にまでキメラ細胞が及び
世界初の現象でした。

この事により
不倫を疑う前にDNAの精密検査をし
自身の体に異常が無いか
気にした方がよさそうです。

これが原因で
生まれてくるはずのない血液型の子が
誕生するかもしれません。

今回の事例は
サムが最後まで奥さんを信じ抜き
その結果が生んだ幸運です。

そして
DNAによる親子診断にも
盲点がある事が判明しました。

今後は
DNAによる親子診断を
もっと慎重に行う方が
良いのかもしれません。

あと奥さんの
「不倫なんてしてないも～ん」と言う
このような回答も
あながち嘘じゃなくなってきましたね。