中学時代友人に「面白い漫画がある」と勧められてまず書店で立ち読み、即購入したもののド田舎の本屋では全巻揃うこともなくそのうちフェードアウトしていったのを数十年ぶりに読了。
後の快進撃も宜なるかな、デビュー作とは思えないクオリティにして、腐女子層はもちろん孔雀王や天空戦記シュラトで揉まれた我々密教フリーク(?)をも取り込む設定の妙には舌を巻くしかない。
インド神話を換骨奪胎した異世界絵巻なのに、敢えて漢字の仏教名を振って異国情緒をもう一捻りさせるなんて、若手の考えることじゃないっての。
今読んでも大傑作。
暴君と思われたラスボス帝釈天にすら抗えぬ運命の相剋があったように、どのキャラにも背景があり、物語に奥行きや深みを与えているのは当然として、取り分け印象的なのは初読時と変わらず孔雀だ。
典型的トリックスター、紫の瞳は魔族の証と幾度も示唆され、謎めいた出自を仄めかすも本人は至って暢気なお調子者。
修羅刀の継承式を執り行うなど絶対に只者ではないのに、正体は終盤まで明かされず、最後の最後までおいしいところをかっさらい続ける。
ラストシーンは抱擁する二人、ではなくその傍らで燦々と光を浴びる彼の錫杖と黒い羽なのだ。