京都盆地の北、山の中にひっそりとただずむお寺があります。
そこは、宮崎駿監督が映画「もののけ姫」を着想する契機となった場所。
そして、作家司馬遼太郎が怪奇な現象を経験した場所。
それが、知る人ぞ知る「志明院(しみょういん)」。
ここは、もののけ・魔物が住む場所と言われます。京都市街から追い出された魑魅魍魎が最後にたどり着く場所とも言われ、京都最大の魔所との噂もあります。
志明院公式ツイッターには「京都屈指のパワースポット」と書かれていますが、そんな軽いものでは無いと思います。
本当にもののけが住んでいそうな、深い自然がそこに広がっています。
今回は、そんな知る人ぞ知る秘境のような場所に行ってみましょう。
志明院は京都盆地の北の、奥深い山の中にあります。
なので、簡単にはたどり着くことが出来ません。
公共の交通手段はほぼないのです。
あえて言えば一日に二便(朝と午後)しかないジャンボタクシーのようなバスに乗って、京都盆地の北の山道をくねくねと進んで雲ヶ畑という山間の小さな集落に到着し、そこからさらに山道を歩いて志明院にたどり着くということになります。
これだと参拝には一日かかるし、下手して帰りのバスを逃してしまうと立ち往生してしまいます。熊が出ないかどうかも心配です。
じゃあ、どうやって行くの?
僕にはマイカーがあるのでだいぶマシなのですが、それでもこの写真のような杉木立の中の対面通行ができない山道を慎重に運転することになります。
まさにたどり着くという感じで、秘境感がとてもあります。
やっとたどり着きました。
山道のどん詰まりが志明院。
周りは森で、お寺以外の建物は一切ありません。ポツンと一軒家の状態です。
駐車場はあるので止めさせてもらいます。
車は数台しか止まっていません。お寺関係の車もあるので、参拝者の車は2~3台でしょうか。ゴールデンウィークの真っ只中でこれです。
狭い山道に大型バスは入れないので団体客はもちろんいません。
志明院の良さを知る人、知りたい人しか訪ねない、とても静かな場所です。
駐車場から階段を登ってゆきます。
新緑がきれいで、志明院名物の石楠花(シャクナゲ)などがきれいに咲いています。
志明院山門。
緑にあふれた素敵な光景です。両脇の石楠花がとてもきれい。
この石楠花(シャクナゲ)が名物の一つで、このゴールデンウィークの時期に満開となります。
この時期、僕は一昨年にも訪ねています。
山門をくぐると志明院の境内。
この先にもののけ姫の世界があるのでしょうか?
山門から、本堂へと苔むした石段が続いているのが垣間見えます。
この階段を登ってゆきましょう…、
と、これから先は撮影禁止なのです。
境内は修行の場なので、撮影は固く禁じられています。
どれだけ固いかというと、山門前で荷物すべてを預けて手ぶらで拝観しないといけないほどです。
ということで境内の写真はありません。
上の写真から察することできるように、境内は杉の木々に囲まれ、ゴツゴツした岩場であり、いたるところが苔むして、まさにもののけ姫の世界そのものです。
もののけ姫の舞台のモデルとなったのは屋久島や白神山地ですが、志明院を見るとその根底はここなんだと感じます。
(境内の様子が気になる方は、Googleで画像検索するとこそっと撮ったと思われる写真がいくつも出てきます。ただし、写真と実際の光景は別物と言っていいほど違います。)
石楠花(シャクナゲ)が満開で美しいです。
志明院は作家の司馬遼太郎先生が泊まっていて、ここでの怪奇な体験を記しています。
その後、司馬先生は志明院での体験を宮崎駿監督に話し、そこから宮崎監督はもののけ姫を着想したとのことです。
志明院はそんな興味深い場所なのですが、このことはあまり知られておらず、不便な場所にあることや修行の場であることより、令和の今になっても観光地化されていません。
もののけや魑魅魍魎がそこにいても何の不思議もない。そんな独特の雰囲気を残す貴重な場所になっています。
まさに知る人ぞ知る、行ける人だけがゆく、京都の穴場中の穴場です。
上の京都市の説明を抜粋よると、
志明院は650年に役行者が開山し、829年に弘法大師が淳和天皇の命により創建した。
以来皇室の勅願所としての崇敬が深く、志明院の勅額を天皇から賜った。境内には歌舞伎「鳴神」で有名な鳴神上人が龍神を閉じ込めた所と伝承される護摩洞窟など修験道にちなむ伝承地が多い。
とのことです。
またここは鴨川の源流であり、鴨川の最初の一筋の水を見る(そして飲む)ことができます。
魑魅魍魎やもののけというとおどろおどろしい感じがしますが、印象としては木々や草、苔の緑とどことなく浮遊する優しい魂に包まれる雰囲気で、とても心が落ち着き居心地が良いのです。
御朱印もいただきました。
素朴ながら味のある、素敵な御朱印です。
この御朱印、こうして志明院の住職さん自らが書いてくださっています。
参拝者が少なく御朱印を求める人も少ないため、求めがあればこうやって書かれておられるようです。
とてものどかで、心が和みます。
もう一度振り返り、この異界から去ります。
とても惹きつけられる場所で去り難いのですが、その魅力は魔力かもしれず、うかうかしていると現世に戻れなくなってしまいますから。
いや、惹きつけられているということは、もうすでにもののけに取り憑かれているのかもしれませんね。
Camera: PENTAX K-3II with SIGMA 17-70mm F2.8-4
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