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クリスペのオフ会に行ったら小便漏らした(前編)ー新宿観光withゴリラー

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  • Zucky
  • 2022/11/09 10:20

立ち並ぶ高層ビル群、無機質なコンクリートジャングル、息の詰まりそうな路地裏にはチカチカと光る看板が猥雑にひしめき合い、これでもかと目を刺激してくる。その下方、地表を覆いつくして蠢く黒い塊、絶えず流れ続けるバカでかい電子公告の光と音が、アカチャバネめいた群衆の意識を明滅させる…。

交差点では当然のように歩行者妨害、歩道は捨てられた吸い殻で溢れ、そこに腰を落としたむろする若者達...。尻を付けている道路とは対照的に、その身なりはどれも綺麗に着飾られている。さながら路地に浮かぶ看板ごとく、狭く細い空間で主張し合うそのどれもが煩く眩しい…。猥雑だ。

光が光を覆う東京、音が音を消し去る東京、人が人を薄める東京…

夢も欲も全て呑み込み肥大化していくこの街の乱雑な足し算は、エスカレートを続ける。

もっと光らせ、もっと匂わせ誘い込む蠱惑の坩堝。その熱量は果てしない…。

清濁構わぬ鯉の群像 行き交う鱗が千紫万紅

尊卑貴賤のモザイクに 今日も感情の移入先を探す

 

ここは東京新宿歌舞伎町、約束の地に向けてわしは一人歩く…

初めて歩く路地、見慣れない建物の数々、だがしかし、決して悟られてはいけない。自分が田舎者であるとは...。しかし、ここで前からニヤついた顔の3人組がこちらを見ながら歩いてくるのが確認できた…。

 

「おい!ちょっとそこのおっさん!!迷子なん??僕達が道案内してあげよーか???案内料1分1万円ね!ギャハハハ!!!」

 

「うっせ!!小便漏らすぞ!!!?」

 

目をカッと見開き唾を飛ばしながらわしは叫ぶ。勢いが大切だ。

一瞬でもたじろいだり目を泳がせてしまっては負けだ。間髪入れず噛みつきに行くぞという姿勢を見せることが重要なのだ。

 

「ひぃっ!」

 

わしに、臆したのか、ニヤつき顔の3人組は2,3歩後ずさりして固まっていた。

ふん、口だけの軟弱者が、軽い気持ちで狩りに来よって、最近の若い奴らは腑抜けている。そこだけは田舎も都会も関係なく共通しているようだ。あいつ、やべーって!とかいう声を後ろに聞きながら、わしは立ち止まることなく歩みを進める。

 

ふぅ、今日だけで5人目か、まったく都会を歩くのは疲れる。

程なくして角を曲がったところで、向かってきた歩行者に肩をぶつけてしまう。

 

「おっと、失礼…」

「イッテェ…あん?おっさんテメェどうしてくれんだよ!?今ので肩外れちまったよ!いってー!慰謝料よこせよ慰謝料ォ!!」

 

「うっせ!!!小便漏らッぞ!!!!」

 

「あーん?やってみろよぉ…?ほら!さっさと小便もらしてみろよォ!!」

 

おっと、こいつにはわしの覇気が通じないようだ、だが焦ってはいけない。この手のタイプには隙を見せないことが重要だ。中途半端な脅しでは、しばらく付きまとわれてしまうだろう。こんな奴のために時間を無駄にはしたくない。つまり、やるなら"とことん"だ。

 

「あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!(ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!! )」

 

「うっ…!!ヴぉエ!!!」

 

一瞬怯えた表情をした後、辺りにはクソガキの吐瀉物とわしのうんこが撒き散らされた。周囲からは悲鳴があがる。

 

ふん、こいつも威勢だけか…口ほどにもない。わしが小便如き漏らせないとでも思ったのか?馬鹿め。大方せいぜいわしがビビッてちょろちょろとズボンに染みでも付けるのを想像していたんだろうが、そんなもんで済ますものか。その程度の覚悟もなくじじいが歌舞伎町をあるくはずもない、舐められたもんだな。こちとら今日はてめえなんぞとは比べ物にならんぐらいの変態たちに会いに行く予定なんだ。はじめっから漏らす準備はできてんだよ。誤算だったな、若ぇの。

さて、しかし困ったな、替えのパンツが必要になった。とりあえず伊勢丹にでも行って替えの下着を買うとしよう…。

下半身の両面に大きなシミを作ったわしは歌舞伎町を闊歩する。

 

「ひぃっ!」

「臭っ!」

「うわぁ!」

 

道行く人間が不思議とわしを避けて歩くようになった。目には恐怖の色がうかがえる。

人ごみを避けながら歩いていた先程とは打って変わって歩きやすくなった。これはイイ。ついにわしも覚醒したか…覇王色に!

はっはっは!ついに制したか!新宿を!歌舞伎町を!!!まってろGOX!!!いざゆかん!!!

 

ドゥクカッ!!ドゥクカッ!!ドゥクカッ!ドゥクカッ!!

 

突如、歌舞伎町に鳴り響く鈍い音、音の方に目を向けると、眼前から迫りくる大きな黒い影が映る。

まるで原動機付自転車のタイヤかと思わせるような大きな拳をアスファルトに打ち付けながら、ソレは一直線にコチラへと向かってくる。躍動する上腕筋、大型ソファーのように美しい大胸筋、隆々と盛り上がった逞しい僧帽筋はまるで山のようだ。ダンプカーが跳ねてくるような迫力、ソレが近づくにつれ地響きが伝わってきた…。

 

「まえぷーさん!!!」

 

「うっほほぉおおおおおおおおおい♪♪♪」

 

またしても人々の悲鳴が聞こえる。

耳を塞ぎ恐怖する者、目を見開き動けなくなる者…

突然のゴリラの登場に、街は大混乱だ。

 

「会いたかったよ!まえぷーさん!」

 

「クソノニオイデワカッタウホ♪」

 

「流石だよ!まえぷーさん!!」

 

漆黒のゴリラはその逞しい腕でわしを抱き上げると、大きく跳躍する。

ビルからビルへ飛び移るその姿はスパイダーマンも顔負けだ。

どうやらこのまま伊勢丹へと連れて行ってくれるようだ。非常に頼もしい。

そして伊勢丹の前に降り立つじじいとゴリラ。

だが、先程とは周囲の様子が違うことにそこで気付いた…。

鳴り響くサイレンの音、シールドを構え、銃口をゴリラに向ける機動隊が、円形にわし達を取り囲むように迫ってきた。

 

「違うんです!悪いゴリラじゃないんです!!ちょっと気が短いだけなんです!!!いつも本気でナーフしろって言ってるんじゃないんです!!」

 

「そこのじじい!大人しく両手を挙げて背を向けて膝をつけ!!」

 

「まえぷーさんは悪いゴリラなんかじゃない!!!」

 

「モウイイ…ズッキーハ…ニゲロ…」

 

「まえぷーさん……?」

 

「ヴォおええええええええええええ!!!!」

 

大きく雄叫びを上げながらドラミングするゴリラ、その迫力にわしはもう一度クソを漏らした。

 

タンッ!タンッ!ターーーッン!!!

 

刹那、響く銃声、力なく崩れ落ちるゴリラ

 

「まえぷーーーさぁあああああああああああああん!!!」

 

 

4度目の銃声にブラックアウトする世界…

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----夢だった…。

 

恐ろしい、とても恐ろしい夢を見た。こんな夢を見るまで追い込まれるとは...

これは、わしがオフ会の前日に見た夢である。

 

安心してほしい、寝グソも、寝小便もしていなかった。

わしの中の大切な何かはかろうじて守られているし、当日に漏らすクソも小便もまだ残ってるってわけだ。

危ないところだった。

 

というわけで、今回はわしが夢の中で脱糞するまで追い込まれた「恐怖のクリスペオフ会」の感想を書こうと思う。

いきさつは前回の記事を参照

 

といっても、わしは今回オフ会そのものが初めてなので"クリスペ"オフ会にスポットを当てた感想というより、「田舎のおっさんが人生初のオフ会に参加するため東京観光に行ってきた」みたいな内容である。

なんか長くなっていろいろとボケてしまいそうなので、今回は当日クリスペオフ会の会場に入場するまでの新宿観光編と、会場入りした後のオフ会編とわけて書こうと思う。

 

前半の観光編はクリスペ成分はほぼない。あるとしたらクリスペ界の著名的ゴリラである「まえぷー」氏との絡みぐらいである。

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今回のオフ会参加表明後、都会にビビり散らしたわしを見たまえぷー氏からメイドカフェのお誘いを受けたのだ。一人で会場入りするのもコワいし、加えてメイド喫茶にも興味津々だったため、これ幸いと氏にホイホイついていくことにしたのである。

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というわけで、ゴリラさんとの新宿観光日記をだらだら綴っていく。

 

 

わしは電車恐怖症(もう10年ぐらい乗ってない)なので車で新宿へ向かい、予約した駐車場へ車を停める。

道中、街を観察したが、路上駐車の車が多すぎて非常に運転しずらい、左折専用レーンを塞ぐな、警察は何してる?はやくこいつら全員に駐禁切符を切れ!ウィンカーをださない奴はムショへぶち込め!今すぐにだ!

道行く人々に目を向ければ半袖の人もいればコートを羽織っている人もいる…どういうことだ?東京の気候はやっぱりグランドラインなのか?メイクもファッションもそうだ。まるで東京に居ながらも、それぞれが各々の世界を生きているようだ。こいつら全員何かの能力者か??

そして、わかっていたことだが人が多い。駐車場に着くまでに普段わしが見る人間の3週間分ぐらいはすでに視界に収めた気がする…。脳がパンクしそうだ。

だが、見覚えのある建物なんかを見つけると楽しいもので、(うおー!コクーンナントカだ!!モード学園の奴だ!)とか(あ!あのビルは「言の葉の庭」で鳥がバサァッって飛び立ってたビルだ!!やっぱ新海誠パネェ!!)とか一人で興奮したりしていた。

そして無事、道に迷わずに予約していた駐車場へ着弾。この時、待ち合わせの時間まであと10分を切っていた、すぐにまえぷー氏に連絡を取るも「今着いたところ」とのこと。なるほど、紳士なゴリラさんだ。待たせてはいけない、急いで待ち合わせ場所である新宿の伊勢丹へと向かう。が、グーグールマップのナビがよくわからない。クルクルクルクル画面が回って自分がどちらを向いているかわからないのだ。クルクルクルクル、てめーはクリスペか!!おっと失礼。ナビに苦戦しつつもなんとか方向はつかめた、Google先生によると5分で到着できるらしい、すぐにゴリラさんに連絡し、早歩きで向かう。

しかし一向につかない、よく見ればGoogle先生のナビは"歩行者モード"ではなく"車モード"のままだったのだ!つまり自動車ならば5分という意味である。やらかした…。結局わしは30分も遅刻してしまった。

ゴリラさんを伊勢丹の前に30分も無駄に立たせてしまったのだ。これは、会ったらミンチにされるかもしれない。「時間を守れない奴はこの世からナーフ!!」とか言われながら頭蓋を握りつぶされるかもしれない。

土下座しよう、せめてアバラ2,3本で許してもらえるようにあったら即土下座しよう。

しかし、伊勢丹の前に着いても一向に見つからないのだ。

そう、ゴリラが居ないのである。ゴリラが。

いるのは人の姿をした者だけである。おかしいな...。

首をかしげながら指定された場所へ目を向けると、どうやら人を待っている風な男性を発見した。

わしは勇気を出して聞いてみる。

 

「あの、まえぷーさんですか??」

「はい、そうです。」

 

驚いた、ゴリラではなかったのか!!!

 

知的で落ち着いた雰囲気の凛々しい青年ではないか!おかしい、聞いていた話と違う。

 

「遅れてすみません!ゴリラじゃないじゃないですか!!」

「あ、はい。今日はソレ用の器に魂を載せてきてますので」

 

驚いた、やはりゴリラだったのか!!

 

ということはつまり、今目の前にいる物腰柔らかな青年はホムンクルスであり、髑髏島に居る本体のゴリラから思念を飛ばしているということか…恐ろしいゴリラ!もうばっちり都会に馴染んでいる。普通ならば、この青年がゴリラなんて疑うはずもない。皆さんに言いたい。いいですか?あなたのすぐそばに居る誰かも、実はゴリラかもしれませんよ!??

ゴリラが人の姿をしていたことに面食らって土下座するタイミングを失ってしまったが、ゴリラさんはわしの謝罪を快く受け止めてくれるだけでなく、気にも留めていないようだった。

驚いた、これがあのゴリラなのか!?心臓ナーフされるかと思ってたのに、なんて器の大きいゴリラなんだ。

 

「では、いきましょうか。」

 

そう言うとゴリラさんは案内を始めてくれた。

本日のわしとゴリラの第一目標である、メイドカフェへ向けて出発したのである。

ディズニーショップや駅など、この辺りの街について丁寧に説明してくれ、とてもありがたかった。なんて優しいゴリラなんだ。わしは右へ左へきょろきょろと首を回し過ぎて頭がもげるかと思った。

そして目的地であるメイド喫茶りーみんに到着。

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めいどりーみん

来てしまった、ついに来てしまったのだ。無機質なビル群の中に突如現れるファンシーな看板…。

高まる鼓動。まるで初めてホテルに入るかのような緊張…ゴリラと。

ガラス張りの扉の向こうにはメイド服姿の女性が動いているのが見える。

わしは初めてディズニーランドに行ってミッキーに遭遇した時の興奮を思い出した。

 

ひぇえ、入るのこわひ...。

 

幼心で間近に見たミッキーの瞳に生気は感じられず、しかし大げさなジェスチャーでコミュニケーションをとろうと迫ってくる異様さにわしは泣き出してしまった。

まったく動かない表情とは反対に首から下はキレキレに動き回っている。まるで首を切り落とされたトンボの頭に泥団子を乗せたかのようなグロテスクさが、まだ夢と現実の境界を見つけらていない幼少期のわしには、いささか刺激的過ぎた。

 

大丈夫だ、わしはもう、大人だ。あの頃とは違う…。

 

わしが2,3呼吸おいてトラウマを払拭している間に、ゴリラさんは既に扉を開けて待っていた。

 

「ズッキーさんほら、どうぞ!」

 

お、臆するな!!

大丈夫だ!わしは大人だ!自分の意志でクソをも漏らせる立派な大人だ!

たじろいだ瞬間に動けなくなる、こういう時は、止まってしまってはいけないのだ。足を止めた瞬間、恐怖に絡めとられ、沼に沈む。ええいままよ!!なんのためにわしははるばる東京くんだりまで来たのだ!クソを漏らす夢まで見て!!メイド喫茶を!曇りなき眼で見極めるために来たんだろうが!!見極めてやる!新宿のメイドをこの眼で見極めてやるのだ!!南無三ッ!!

 

「2名様ご入国ですにゃ~ん!!」

 

 

入国!?にゃん!??

うぉお!メイド服きちょる!!メイド服きて動いちょるがな!!近ぇ!!

 

メイド服、甘ったるいアニメ声と大げさなジェスチャーでクラクラしているうちにわけもわからず席へ案内される。

店内は思っていたよりも狭い、そして1Fの席はほぼ満席だ。メイドさんは4,5人ほどいる。

まずい、1平方メートル当たりのメイド成分が濃すぎる。危険だ。みんな耐えられるのか?病人が出ても知らんぞ!?しかも全メイドがバッチリニーソを履いてフリフリスカートの下にフリフリパンツ?(ヒュプノスが履いてる奴の短いの)で完璧な黄金比を徹底している。そしてわし達の対面の席にメニューやら料理やらを置くために前かがみになった瞬間、フリフリパンツとニーソに挟まれた黄金比率(背面)がこれでもかと露わになるのだ!!ふぁっ!!いかん、一瞬、意識が飛びかけた。ななな、なんなんだこの背徳感は!しかし!わしは決して目を背けない。むしろガン見である!そうだ、そのために来たのだ、曇りなき眼で見極めるために!全メイドの黄金比率をこれでもかと目に焼き付けてやる!そうとも、ここはメイドカフェ!客はメイド成分を摂取するためにくるのだ、それが店内まで来て照れたり恥ずかしがったりしてメイドさんから目を背けるなど言語道断!むしろメイドさんに失礼というもの!!めいどりーみん!見せてもらうぞ!!貴店のメイド魂を!!!!

 

 

「ご主人様たちは夢の国ははじめてかにゃん??」

 

「はっ、はじめてにゃんッ!!!」

 

わしの心が落ち着いたころに、新しいメイドが席に来て説明をしてくれる。先ほどは少々取り乱したが、もうそんな失態はみせぬ。わしの覚悟は決まった。そう、やるならとことん。だ!

気分が乗ってきたわしはもう「にゃん」と言いたくてたまらなくなってしまっていた。恐るべし、メイド喫茶!

 

なにやらここは夢の国で国民になるにはパスポートが必要らしい。ほう、道理だな。リアリティ溢れる素晴らしい演出だ。つまりここは日本国にあらず、メイド国。法律で語尾にはにゃん付けと決まっているのか。よかろう!このズッキー!夢の国の民にしてもらおうではないか!!

そして夢の国への滞在時間は決まっているらしい。ふん、カラオケ制度か。わかりやすいじゃないか。

その後、ひとしきりメニューの説明を受ける。なるほど料金は、単品ならファミレスの1.5倍程度といったところか?品数も多くいろいろなオプションが付くコースの方は焼肉食べ放題ぐらいだろうか。なるほど理解した。ゴリラさんは慣れた感じにデザートコースを選択していた。メイドさんを一人指名して写真が撮れるコースだ。玄人感でてるじゃねーの…。

わしは、東京着弾前にサービスエリアで「うどんシラス丼セット」をガッツリ食べてしまっていたのでそれほど食欲はなかったが、メイド喫茶のシンボルであるオムライスにケチャップで絵をかいて呪文を掛けるアレをやりたかったのでオムライスにした。最もケチャップを掛ける余地のあるプレーンを選択する。

 

「御用の時は、『にゃんにゃーん!!』とお声がけくださいにゃ。」

 

注文を取り終えたメイドはそう言って去っていった。

 

なるほど、この国では『すいませーん』などという語彙は存在しないということか。

実に素晴らしい、『すみません』。日本人がよく使う言葉ランキング第1位ではなかろうか?

とりあえずこれ言っとけば大丈夫感のある雑な言葉。ゆえに、どいつもこいつも軽々しく『すみません』などと言って頭を下げる。エクスキューズミーとアイムソーリーを混ぜるな!ぼやけてるんだよ!『すみません』の9割はだいたい気持ちこもってない。前置きかポーズだけ。そうやって曖昧に遜ってヘこへこと無難にことなかれと済まそうとするから、知らず知らずのうちに我々日本人は疲弊して擦り切れて、心を無くしてしまうのだ!だいたいなんなんだ?「"済み"ません」って何が"済ま"ないんだ??言ってみろ!!!

それがどうだ!此の国ではその『すみません』が存在しない!!『にゃんにゃーん!!』という可愛らしくあらゆるプラスの感情を内包した音に変わっている。『にゃんにゃん』…すげぇ!すげぇよ!にゃんにゃんって言えば幸せになれてしまう。はやくわしも『にゃんにゃん!』って言いたい!言わせてくれ!!

 

 

なんて思っていたら先ほどのメイドが飛んできた。

 

「ごめんね~、なんかプレーンのオムライス今日無いんだって~」

 

は?

 

デミグラスやカレーのオムライスがあって、プレーンがないってどういうことやねん??

全てのオムライスはみな等しくプレーンをベースに作られてるだろうが!?

プレーンが作れないのに他のオムライスが作れるわけないだろうが!!

米とバターと卵とケチャップ。これがあればオムライスだろ?プレーンの!どうなってんだおい!店長呼べ!

わしはオムライスと白いお皿いっぱいにケチャップで絵をかいて欲しかったんだぞ!?その夢をとりあげるのか??

まさか夢の国のメイドでさえも拝金主義の守銭奴なのか?おいおい、頼むからわしを失望させないでくれ…。

 

しかし、わしも大人だ。郷に入っては郷に従え。夢の国の民となること決めた以上、この国の法律に従おうではないか。よかろう、グレードを上げてやる。デミグラスだ。次はない。いいか、忘れるなよ、このわしが東の果てから曇りなき眼でお前たちを見定めに来たことを!!

 

そして注文を取り直したついでに雑談をしてくれるメイド。

え、距離近いんだけど。物理的にもそうなんだけど、「敬語」使ってないところが近い。店員さん感がまるでない。フレンドリー。そうか、夢の国には「敬語」もないのか、メイドだもんなぁ。なんて素晴らしい国なんだ。あぁ、こんなに近くで生娘と楽しく会話を楽しむのは何年ぶりだろうか…。あぁ、優しくしないでくれ、好きになる。しかもこのメイドさんは声をアニメっぽく作ってないというか、ハスキーな感じでいい。リアルさとギャップが入り混じって素晴らしい。研修中?そっか、じゃあ間違えちゃうかもなぁ、頑張れよ。おじさん応援してるよ。

 

「じゃあ、デミグラスソースのオムライスでいいかにゃん?」

 

「はいにゃんッ!!!」

 

もう、オムライスが何だろうが、どうでもよくなっていた。ここは素晴らしい国だ。永住したい…。

去り行くメイドの尻を凝視しながら、今度は店内の客層に目を向けてみる。

 

大柄な外国人男性2人組、女性2人組、ソロの男性が3人、学生風で常連感のある男、社会人風の常連感のある男、帽子を深くかぶりまるで碇ゲンドウのように手を組み一点を見つめピクリとも動かない壮年の男。

 

驚いた、客層も様々ではないか。中でも女性客がいることに驚いた。

同じ女性でもお金を払ってメイド成分を摂取しに来たくなるということだろうか、恐るべしメイドパワー。

メイドカフェ、もはや古典的ないわゆる女性に相手にされない"オタク"達が集う場所ではない。メイドとはもはや確立された一つのジャンル。日本を代表するパワーカルチャーとして育っているのだ!メイドさんは言うならばこの鬱屈とした社会に輝くアイドル。現代を救うメシア。多くの人間の魂の拠り所なのだ。いずれ世界は『にゃんにゃん』で包まれるだろう。わしはそう確信した。

 

そしてオムライスが届く、わしはウキウキで書いてもらった。「ずっきー」と。

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我が人生史上最も尊きオムライス

はぁーん、やった!ついにわしはやったのだ、メイドさんにケチャップで専用メッセを書いてもらったオムライスを手に入れたのだ!!そして始まる…

 

「じゃあ一緒に美味しくなる呪文を唱えるにゃん。手でハートを作ってもえもえきゅん♡ってするにゃん。せーのっ」

 

「「「もえもえきゅんッッ♡」」」

 

・・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・・感無量だった。

 

わしの憧れは、今現実となったのだ。身をもって体感したリアル。目の前に佇むオムライス、いまなおフリフリをふりふりしながらわしの周りを歩き回っているメイドさん達、対面にはゴリラ。

わしは今まさに…夢の中にいる!!!

 

そして、オムライスを食べようとした瞬間、突如始まるメイドライブ!

店内の照明は暗くなりBGMの音が大きくなってきた。リーダーメイドっぽいメイドがマイクパフォーマンスを始める。

 

「ペンライトを持ってるご主人様はライトを。持ってないご主人様は指を回して応援してにゃ!」

 

スッ…

 

突如、先程確認したソロの男性客3人がものすごく自然かつ洗練された動作でどこからともなくペンライトを取り出した。無表情でさも当然といったような素振り、朝食前のコーヒーよりも繰り返した来たルーティーンだと言わんばかりの自然さ。そして、どことなく溢れ出るドヤァ感…

 

くっ!負けた!!これが高みへ達した上級国民か!

そして鳴り始めるミュージック!踊り出すメイド!!!!

まじか!こんなステージでも何でもない通路みたいなスペースで踊るのか!?

振り付けは完ぺきだ!溢れんばかりのスマイルを作りつつも、どことなく恥じらいのある表情がまた素晴らしい。応援したくなる!

 

まて、碇ゲンドウの様子がおかしい。

 

先ほどまではピクリとも動かなかったゲンドウ、メイドさんとの会話中や注文する際にさえ、頑なに両手を組んで真正面を向き静を貫いていたゲンドウだが、もはやその姿はない。

 

ゲンドウが豹変した。

 

先程までのクールで厳めしいゲンドウの姿はもうそこにはない。

帽子をとり、これでもかと大きな手拍子を送るノリノリのゲンドウ。

 

こいつ…ッ、"解放"してきたな!??

 

てっきりカフェ内に充満するメイド成分を静かに吸入するだけで満足する硬派なタイプかと思いきや、そうではなかった。溜めていた。この男は今この瞬間のために溜めていたのだ。なんということだ、見事なまでに滑らかな静からの動!その効果は抜群だ!このおっさんの本気度がビシビシと伝わってくる。

 

学生風の若者も負けじと顔に似合わず体を揺らして大きなモーションで手を叩いている。

 

くっ…!負けてられねぇ!!わしが今日どれだけの覚悟を持ってメイドカフェに来たと思ってやがる!会場を盛り上げるのはこのわしだッ!!!

 

見様見真似で手拍子をする。

なるほどわかってきた、こういう曲調か。完全に理解したぞメイドライブ!!

 

そんな感じでダンスが終わった。

すると今度はまさかの2曲目が始まったのである。踊り手も別のメイドさんだ。

今度のメイドさんは振り付けだけでなく表情も完璧だ。曲や歌詞に合わせて驚いた表情や困った表情、などを合わせている…プロだ!このメイドはメイドのプロだ!!恐るべし!夢の国!一体このために、どれほどの修練を積むというのだ?もはやバイトの領域を逸脱している…ん、まてよ。メイドさんってそもそもバイトなのか?社員なのか??どうなんだろう、彼女たちのモチベーションは一体なんだ?指名制とかあるんだろうか?とにかくこのプロメイド具合は一朝一夕で身につかないだろう…そうか、きっと彼女たちはメイドになりたくて頑張っているんだ。自分はカワイイプロの"メイド"で在りたいというその信念が、この世界観を忠実に守り、彼女達を素敵なメイドたらしめているのだろう。我々と彼女は夢の国を通して相互に成りたい自分、見たい世界を共有しているのだ!!メイドとは、もはや新たな概念!おっと、忘れていた、ここは夢の国。バイトだの社員だのモチベーションだの野暮な考えはするべきでない。わしは未だなお現実世界に捕らわれていた。こうではだめだ。あいつらには勝てない。もっと真に夢の国の民にならねば…

 

ここで手拍子が変化する、独特の拍子だ。例えるならアイドルのライブで入るコールのような。

ソロ3人衆の手拍子は完ぺきに息が合っている。クソ!初見では到底できない動き…!!!

こいつらやっぱ、ホンモノだ!本物の上級国民だ!!年季が違う、ついて行けねぇ…!!

 

踊っていたメイドさんは、おそらくこのライブをオーダーしたであろう男性客の目の前まで移動して、そこで特別な振り付けをその客にだけやったりもしていた。

 

わしは悔しかった、己の無力さを呪った…

押し寄せる敗北感に唇をかみしめながらわしは猿真似の手拍子を続けた…。

いつかわしも、上級国民になってやる!そう誓ったのだった。

 

そして計3曲のライブが終了した。

オムライスはもう冷めていた。が、写真も撮れたしそれだけでもうお腹いっぱいであった。

 

そして今度はよくわからないが、箱を持ってメイドさんが席を回ってくる。

なんでも景品がもらえるくじが入っているらしい。順々にテーブルを回って、わしとゴリラの席にくる。

とりあえず、周りのテーブルに倣ってわけもわからずに箱の中に手を伸ばす。ゴリラは5等、わしは2等だった!景品は後ほど、ということでメイドさんは去っていく、箱の横には「624円」と書かれていた。

見なかったことにした。夢の国では説明など不要なのだ。住人はとりあえず『にゃんにゃん』と言いながらメイドさんに転がされておけばよい。そういうことだろう。

そうこうしているうちに、二人とも食事を終えた。

器用にスプーンを使ってパフェを平らげたゴリラが目を光らせながら訴えてくる。

 

「さぁ、グラナを賭けた2番勝負、行きましょうか!」

 

スゥっとスマホを取り出すゴリラ。その目の奥には野生的な炎が轟轟と燃え盛っていた。

 

こいつも"解放"してきやがった…!!?

 

生粋のバトルジャンキー。流石は暴力の化身、ゴリラ!

ゴリラ属ゴリラ種ゴリラのゴリラゴリラゴリラがその逞しい腕と眼差しと鼻息でもって訴えてくる。

 

闘おうぜ!と。

 

ここでひいては男が廃るというもの、受けて立つわし。

しかし、夢の国では回線が不通だった。残念そうにスマホをしまうゴリラ。

 

「また後で外出たらやりましょうか。」

 

そう言ってゴリラは人間らしさを取り戻した。

コワかった。電波の悪い店内に怒ってメイドカフェの壁ナーフしろ!とか暴れ出すんじゃないかともうヒヤヒヤだった。

 

そしてゴリラさんとメイドさんとの写真撮影タイムが始まる。

ノリノリでにゃんにゃんポーズを決めるゴリラ。

猫のつもりだろうが、どう見てもゴリラである。

満足そうに帰ってきたゴリラに聞いてみる。

 

「あの、写真とかって奥さんに見られて大丈夫なんですか?」

「大丈夫じゃないですけど、何とかします!」

 

なんとかって、なんだ。流石IT系ゴリラ。スマホのデータ管理に置いてきっと様々な術を修めているに違いない。

 

ちなみに、わしは妻にバレたら困るので、始めから写真撮影コースは選択していなかった。

スマホの中に爆弾をいれたまま隠しきる自信もなかった。断腸の思いで下した英断であったと思う。

 

 

が、

「ズッキーさん、くじで当てた2等。写真が撮れるみたいですよ?」

「え?」

「ご主人様~、どの子と写真をとるにゃん?」

「えっ?」

 

即決で、最初に話しかけてくれたメイドさんに決めた。

優しくフレンドリーにお話してくれた、これだけで田舎のおっさんなどイチコロなのだ。

我ながらチョロすぎると思いながらウキウキで写真撮影に向かう。

 

「「にゃんにゃーん♡」」

 

憧れのメイドさんとのツーショット。僥倖である。

 

「あの、ずっきーさんは写真を奥さんに見られても大丈夫なんですか?」

「大丈夫じゃないですけど、何とかします!」

 

 

男とはそんなものである。

 

そうこうするうちに、ご出国の時間である。

永住したい。ここに永住してずっと「にゃんにゃん」言っていたい…。

 

しかし、わし達にはまだ今日果たさねばならぬ大きな目的がある。

この先に待ち受ける変態(友)たちに会いに行かねば!!

わしはゴリラと共に泣く泣くメイド喫茶を後にした。

 

メイド喫茶でお近付きの印にゴリラさんからクリスペカードと同じイラストを使った紙媒体を頂いた。なんて優しいゴリラさんなんだ!!わしはこのメイド喫茶で得難き友とパスポートを手に入れた。

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アーラってこんなにかっこよかったんだ!
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会場が開くまでには、まだ1時間余りの余裕があった。とりあえず入り口だけでも確認しに行こうと我々は出発した。

ゴリラと歩く新宿歌舞伎町はとても刺激的だった。日も落ちてきて人の数が増えてきた気がする。行交う人々らの喧騒と、灯りだすネオンの数々、都会の妖しくエネルギッシュな活気が満ちてきているの感じる。

 

そして道すがら、なんとゴジラを発見したのだ!

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あのゴジラである!!

びっくりして小便漏らすかと思った。新宿のビル群にゴジラが紛れていたのである!!大丈夫か歌舞伎町!

わしはこの抑えきれぬ衝撃をツイートした。

するとギャルを自称するネカマ(推定)からこんなリプが付いた。(後にこのギャルとは合流することになる)

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うっせぇ!じゃあお前の街にはゴジラがいんのか!!いねえだろ!?

ゴジラがいる街なんて聞いたことねーぞ!

ゴジラと言えばもはや世界のGOZIRAだぞ!ハリウッドだぞ!何本映画出てると思ってんだ!

日本と言えばゴジラか富士山だろうが!!

眼前にゴジラ、隣にはコング(まえぷー)

先日ネトフリで視聴した『ゴジラVSコング』。

あの迫力がわしの脳裏に鮮やかによみがえる。

TOKYOで怪獣映画の2大巨頭に挟まれて圧死しそうなわしは感極まった。

ゴジラにゴリラ。とんでもない事態である。まえぷーさんが威嚇のドラミングを始めないか心配したが、そんな様子はなかった、流石、都会慣れしたITゴリラである。

 

そのまま歌舞伎町へ向かうわし達。

交差点ではもうエンドレス歩行者妨害。歩行者横断中にガンガン車が横断歩道上を右左折していく。

わしの街だったら唯一人通りのある駅前のイオン周辺で警察官が涎垂らしながら待ち構えている重罪だが、

この街ではどうやら日常茶飯事、取り締まる罪にすら値しないらしい。狂っている。

当然のように歩きたばこ。ポイ捨て。でかでかとした風俗店の看板。イリーガルダンジョン・歌舞伎町。

少し路地に入ればキャバクラやホストの看板が立ち並び、ガラスのショーウィンドーには下着姿のマネキンが立ち並ぶ。猥褻物陳列街か?

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わいせつ物陳列街

街そのものがギルティでは?案内所ってなんだ?どこへ案内する気だ?地獄か?あんなところを利用する奴いるのか??恐ろしい、恐ろしすぎる。

そして道が汚い。そこら中たばこの吸い殻だらけである。もはやアスファルトと吸い殻のモザイク。まだ16時半である。これが常態、ニュートラルならばそれを是としているこの街が怖い。そしてその汚ぇ道路に尻を付けてたむろする若者達。

その神経がわからん。せっかくのキレイなおべべが汚れてしまうと思わないのか?不思議だ。

バッティングセンター周辺に多く見かけたが彼らがなぜあんな格好であんな場所に屯しているのかわからない。すれ違うホスト、ゴスロリ、外国人、ゴスロリのばあさん。コワイ。

歌舞伎町ゴールデン街思い出の抜け道とかもアングラ感ビンビンでやばかった。通ってみたかったけどゴリラさんに止められた。血気盛んなあのゴリラさんがビビるぐらいだから相当なのだろう…歌舞伎町すげえ。

そうこうしているうちに目的地であるGOXに到着。

入り口がものすごくわかりずらい、プレオープン期間だからか、看板も何も出ていない。

Twitterの情報によれば薬局の隣にあるエレベーターで4階まで上がり、そこから屋外通路を通って別のエレベーターで6階まで上がったところが入口らしい。なんだこの回りくどさは?ダンジョン?ハンター試験か?

怪しすぎるだろ!それであの内装だろ?しかもドリンク飲み放題?やべーって!知る人ぞ知る秘密のやべーところだろ!入り口と内装のギャップがやべぇ。だれもこんな普通のしょぼい薬局の隣にある何の変哲もないエレベーターが、あんなイケイケゴージャスサイバーパンククラブみたいなところに通じてるって思わないっしょ!!絶対中では皆ラリッてるか人体改造か異星へ人身売買やってるだろ!

とりあえず入り口は確認した。あとは誰かが入るのを確認するか、合流して一緒に入るかだ。

とりあえず時間もまだかなりあるし、コンビニでも寄って情報収集…

 

ここでゴリラがなんとまたカスタムマッチを挑んできたのだ!

 

おまえはポケモントレーナーか!!

所かまわず目があったらバトルを申し込むバトルジャンキーか!

おまえがやるならドンキーコングだろが!!

流石暴力の化身!ゴリラ!その力を振るう機会を今か今かと待ち構えていたのだ!

その瞳の奥に光る野生、バトルジャンキーの本能を感じた。

 

ゴリラさん的には入り口前でクリスペに興じていれば、参加者の誰かの目に止まり合流できる腹だったらしい。しかしこんな人通りの多い交差点の角でゲームに興じるのは、わしのような田舎者にはいささかハードルが高い。

それにもしかしたら、クリスペオフ会を聞きつけたブルジョワカードゲームハンター的な奴らが会場付近でオヤジ狩りを仕掛けてくるかもしれない。とりあえずやんわりとお茶を濁しつつそのまま定刻までゴリラさんが新大久保の辺りを案内してくれる方向になった。

 

新大久保も衝撃的だった。

人、人、人。なに?お祭り?ちなみにわしは昨日2年ぶりに開かれた地元で1番のお祭りに家族で行ってきたけど、多分500mくらいで総人口超されたわ。

しかも一人一人のファッションがうるせぇ!世界観が衝突し合っててめまいがするわ!

なんでお祭りじゃないのに風船もって歩いてる奴がいるんだ?この提灯はなんだ??

そして周りから聞こえてくる声がもう明らかに日本語じゃない。韓国語。普通にみんな韓国語話してる。周りの店からK-POP流れてる。周りも見渡せばハングルだらけ。え?ここ東京だよね?日本の首都、東京だよね?大丈夫なの?日本?文化的に侵略されてない?

化粧品店、化粧品店、化粧品店、焼き肉店、焼き肉店、化粧品店、化粧品店、焼き肉店...韓流アイドルグッズ店…なんなんだこの通りは?結構歩いたけど化粧品店と焼き肉店しかねぇ。この街の奴らは化粧品と焼肉だけ食って生きてるのか?化粧品と焼き肉の密度がやべぇ!露店もぎっしり、通行人のすぐ横で飯を食い酒を飲む客達。あとドンキもなんかやばい。ペンギンを模したネオン菅、トタンっぽい壁や屋根、民家っぽい隣の建物から何本も垂れ下がる電飾…アングラ感がものすげぇ。なのに「新宿店」。新宿代表のドンキの外装がこんなスラムみてぇな外装でいいの??

駅の方まで行くとだいぶ閑静になってきたが、それでも人は多かった。なんか交差点の角にある韓国海苔巻きショップ?にすごい人だかりと行列ができていた。それも若者ばかり。君たちそんなに海苔巻き食べたいの?ここの海苔巻きそんなおいしいの?海苔巻きぞ?最近の海苔巻きはバエるの??納得がいかん。

 

さらにネオンで酒瓶を模した看板の飲食店なんかで普通に家族連れがご飯を食べているのも見えた。

酒瓶が看板ぞ?ネオンで!薄暗い店内でなに子供と一緒に飯食っとんねん!!??

ファミリーがいく飲食店はガストかはま寿司!もしくはイオンのフードコートって決まってるんだろうが!!

おかしい、恐ろしい街だ新大久保。歌舞伎町もそうだ。さっきの猥褻物陳列街のすぐ隣の通りを、看板なんかも普通に目に入る通りを子連れが平然と歩いていたりするのである。どうかしてるぜ。まったく。

 

そして、新大久保駅周辺から目に入る夕暮れ時の摩天楼に目を奪われた。浄化された。

なんかわかんないけど、エモい。遠く静かに佇む大きな建造物とはどこか幻想的である...。

思わず写真に撮った。

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はぁ〜ん、わしの中の新海誠が高架線と信号機に悶えている。たまらん。

そんなかんじにエモくなっていたところに、大荷物を積んだ自転車を漕いでいく人影が横切る。

 

「まえぷーさん、あれってホームレスの方ですか?」

「そうですね~、アルミ缶を集めてらっしゃる方達ですね。」

 

わしの街でメイドさんと同じく、その存在が真実かどうかすらわからないのがホームレスだった。

彼らはこの冬をどうやって越すのだろう。すぐ傍に煌びやかな化粧品や焼き肉店がこれでもか言わんばかりに無駄に密集している中で、彼らは黙々と空き缶を拾い集めて暮らしているのだろうか...。

わしは新宿の光と闇を見た。

 

そうこうしている内に、GOX開場の時刻が近づいてきた、我々は再び会場へと足を向ける。

怪しいエレベーターの前に立ち、まずは4階を目指す。

しかし、ここでゴリラがTwitterを確認し、急遽ギャル(自称)を拾うことなったのだ。

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ギャルのSOS

このネカマ、一人で来たものの入口でビビッて引き返し、酒を食らっているという。情けない奴だ。

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ギャル 土壇場でヤケ酒

うん、その気持ち痛いほどよくわかる。こんな怪しい入り口で、しかも中で待ち構えているのはおそらくやんごとなき変態達。わしもきっと小便漏らしてた。1人でソワソワウロウロしてた。もしかしたら帰ったかもしれん。ゴリラさんと一緒じゃなければ。

 

そして我々は入り口まで引き返す。

少し経つと髭面のおっさんが話しかけてきた。

 

「どうも、クロサワです。」

 

はぁ??

 

ギャルは???

おまえのどこがギャルで17歳なんだ???

ゴリラといい、いい加減にしろよまったく。Twitterは嘘つきばかりだ!

ゴリラも、ギャルもいない。いるのはおっさんだけだ!

しかもゴリラもギャル(自称)もただのおっさんではない。最初から言っておけ!ゴリラは精悍でITだし、ギャルは文化人みたいなオシャ髭してやがる。

うんこ漏らす覚悟で来てなかったらわしは泣いてたぞ??頼むから入場前に漏らさせないでくれ、替えのパンツは一式しか持ってきてないんだ。これ以上わしのケツ穴を刺激するな。勘弁してくれ。

 

とりあえず、こうしてゴリラの威を借るじじいとギャルは邂逅を得た。正直、ここが天空闘技場200Fならば、おそらく出場資格を満たしているのはゴリラさんだけだ。じじいとギャルにとって、非常に心強いゴリラさんである。"ゴリラパス"とTwitterで事前発行済みの"ゆらだいパス"を通行手形に、じじいとギャルも覚悟が決まる。

 

そして我々3人は意を決してGOXへと挑むのである。

 

 

~後編へ続く~

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