夏に終わりがあるように、雨のち晴れがあるように、川越にも天下一品がある。
天下一品。
そういうラーメン屋。鳥ベースのやべえくっせえスープ。ぺらっぺらのチャーシューと乾燥しきったネギ。ほっそいメンマ。でも、それがいいのよ。唯一無二だから。唯一無二はすべて許される。
この日は暑かった。
初夏も過ぎてた。蝉ファイナルはまだ息を潜め、みんみんみんみんうっさかった。
俺は部屋でナンバーガールを聴いてた。ザゼンボーイズを聴いてた。向井秀徳が深夜にポテトサラダ喰いてえって言ってた。
俺は天下一品が食べたくなっていた。真っ昼間にくっせえくっせえ天下一品をかっこみてえ。
久しぶりに。
きちゃった。
頼んだのはラーメン+豚キムチ+ライス少な目。
確か900円くらい。
リニューアルして前より高くなった。前はランチ800円くらいだったからね。爆安。だからリニューアルしたんだろうけど。
天一に行ったとき必ずニンニク薬味を頼んどく。うめーんだこれがよ。たまらん背徳感。背徳漢先生お世話になってます。
それで、全然溶けない。スープに溶けない。味噌より溶けない。なめてんのか? お前ほんとにスープか? ピーナッツバターちゃうんか?
でも溶かす。無理やり溶かす。それがいい。
スープにニンニク薬味を頑張ってとかしこむ。でも、実はそこまでニンニクガツンと来ないふしぎ。でも口はくっさくさ。なんでだろ。そしてうまい。
豚キムチはソース感強い。前もこうだったか? つまみ感がすごい。これは豚キムチという名の別のもんや。ビールくれ。銀色のやつ。エセヒスーパァデェラァイ。
ライスが合うんじゃ。
ライスに合うラーメン王座決定戦上位に食い込むね。家系としのぎを削ってる。
このもったり濃厚スープと白米。
カロリーの、あしおとが、します。あー、きこえないお。
結局スープまで飲み干す。しゃーねえ。俺は悪くねえ。
天下一品はやっぱ下品なんだよなあ。どう取り繕っても、綺麗じゃない。どんなにリニューアルしても机ぴかぴかにしても、値段上げても、そのどうしようもないくさうまさからは逃れられない。俺も逃れられない。あー、どうしようもねえ。
あー、夏が暑い。
それは天一のスープを飲み干すように、当たり前のこと。どうしようもない。