今回紹介するのは「チ。ー地球の運動についてー」という漫画です。
地動説といえば今の私たちにとっては当たり前の法則をまとめた学説ですが、そうでなかった時代が長くありました。
この「チ。」は、そんな時代のヨーロッパで地動説を唱えることはどのようなことなのかを表現した漫画です。
今回は漫画の内容に少しだけ触れ、その頃の時代背景や漫画を読むに当たって事前に知っておくと良い人物たちを紹介していきます。
漫画の時代背景
舞台は15世紀ヨーロッパ、アリストテレスが世界の決まりを解き明かしてから、およそ2000年の月日が流れた頃の話です。
この頃のヨーロッパはキリスト教の教義を道徳の規範としていました。
13、4世紀頃のキリスト教は天動説を中心とした宗教観がありました。
その頃に活躍したイタリアの詩人ダンテ・アリギエリが著した“神曲”には、地球を中心に、月光天、水星天、金星天、太陽天……、など天動説を思わせる表現が記されています。
そんな中現代では主流となっている地動説を唱えるってことは、教義の根本を否定することになり、異端として目をつけられる時代でもありました。
そんな時世で地動説を裏付けるべく研究をする人達を描いた漫画が「チ。ー地球の運動についてー」です。
教義に反する説を研究したら異端審問にかけ拷問。
それでも研究をやめないのであれば火あぶりという危険と隣り合わせの中、命がけの環境で研究する者たちを描いています。
ネタバレになるので、これ以上内容に踏み込むのはやめておきますが、本を読むうえで知っておくとより内容が面白くなる人物たちを少し紹介していきたいと思います。
「西洋哲学はこの人から始まった!」
そんな呼び声も高い哲学界のビッグネームです。
なぜ、どうして、本当にそうだろうか……。
問答を繰り返し、“人は無知であることを自覚させる”という使命を全うした人物です。
万学の祖とも言われる古代ギリシャの哲学者です。
自らの経験を通して、事象を徹底的に観察し、世界の物事の仕組みを解き明かした人物です。
その膨大な知見から、かの征服王アレクサンドロス大王の家庭教師としても活躍しました。
しかし彼が天動説を唱えたことで、その後2000年もの間、天動説こそ真理であるとの認識が固まってしまいました。
天文学、地理学、数学などに精通したとされる古代ローマの学者です。
それまでの天文学をまとめ上げた専門書“アルマゲスト”を著したことで、幾何学、数学、地理学などの発展に大きく貢献した人物です。
この頃になると、惑星の逆行の不自然さなどアリストテレスの天動説に反論した学者は数多くいました。
しかしプトレマイオスがアルマゲストを完成させる中、惑星軌道の不均一さは“エカント”という力によって制御されているという計算結果を出しました。
これによって無理矢理地球から見た惑星の動きを説明し、一応はつじつまが合うとして、ますます天動説が優位な立場になっていきます。
ポーランド出身の天文学者でありカトリック司祭であるコペルニクス
当時主流だった地球中心説(天動説)ではなく太陽中心説(地動説)を唱えた人です。
膨大な観測と研究の末、地動説に関する論文をいくつも書いていましたが、カトリックとして地動説を唱えることは、教会への反逆であるということも認識していました。
彼は地動説を表に出そうとはせず、彼の死後ようやく世間にコペルニクスの地動説が公表されることになります。
地動説と言ったらこの人は外せない。
イタリアの自然哲学者、数学者、天文学者であるガリレオ・ガリレイです。
彼が著した天文対話は、コペルニクスの地動説を擁護するものでした。
当然ながらこの頃においても地動説は異説。
ガリレオは宗教裁判のうえ投獄されてしまいます。
地動説が間違いであることを認めることで自由の身になったガリレオですが、晩年には視力を失ってしまいます。
口述筆記にて成果を残しつつ、77歳という大往生を果たした彼は、後に地動説確立のための大きな礎となっていきました。
まとめ
そんなこんなで歴史が詰まりに詰まった地動説。
あるときには地動説に関する書物はおろか、古代ギリシャ時代の叙事詩すらも読むことは禁じられていたとされています。
しかし真理を探求する人間の好奇心が時代を跨いで進化したことで、今の私たちに繋がっていると感じます。
そんな歴史の一部を読みやすい漫画形式で楽しむことができるのが「チ。」です。
試し読みができるリンクも貼っておきますので、気になる方は是非読んでみてください! ↓