古生物たちとマントル
見た目も生態も個性的で魅力のある生き物たち……。
最近は生物関係の記事にて古生物を中心に書いています。
彼らの痕跡の多くは産出される化石に、そのヒントが多く隠されています。
しかし、地球の表面からさらに深いマントル層においても、彼らの生きた証が残されていることが最近の研究から明らかになってきました。
今回はそんな5億年前の古き生物と地球の研究について紹介していきます。
マントルの奥で発見された生命の痕跡
今回参考にするのは以下の研究です。(学術誌Science Advancesより)
スイス連邦工科大学(略)のアンドレア・ジュリアーニ教授らの研究によると、地球上の生命活動が地中の奥深く、マントル層まで影響を与えていることが分かったとされています。
彼らは地中深くで形成されるキンバーライトという火成岩を調べました。
キンバーライトは先カンブリア時代の大規模な地殻変動(造山活動)によって形成された鉱物と考えられています。
そのため古い頃の地球の歴史を知る指標として使える鉱物でもあります。
カンブリア爆発と地球の活動
研究チームはそんな鉱物のサンプル約150個を対象として炭素同位組成を調べてみました。
すると、2億5千万年未満の若いキンバーライトのサンプルとそれ以前のサンプルではかなり異なることが分かりました。
その原因として考えられたのは、5億4千年前の出来事でした。
地球上の生物の種が爆発的に多様化していったと言われる“カンブリア爆発”です。
カンブリア爆発によって海での生命活動が盛んになると、生物の死骸が海中に積もることになります。
そのときはまだ分解者(微生物)も十分に存在しなかったため、生命の痕跡がプレートの変動によって地球の内部に運ばれていったと考えたのです。
長い年月をかけてマントルでの生成物に科学的な影響を与え、火山噴火によって再び地上に舞い戻ってきたというわけです。
最後に
なんともロマン溢れる話です。
かつての生物の痕跡が、地球の活動を超えて現在の私たちのもとへ表れているのですから。
地中の奥深くの活動が地球の表面に影響を与えることは多くありますが、逆に地球の表面での活動が地中に影響を与えることが分かった研究でもあります。
この研究によって、生命活動に関係するリンや亜鉛、はたまた石油、石炭などの化石燃料への影響を解明する手がかりになるかもしれませんね。