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同じ姿勢で立ちっぱなしは要注意

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  • 2024/11/04 15:21

近年、デスクワークを中心とした座りがちな生活習慣が健康に及ぼす悪影響が注目され、「立つこと」が健康を維持する方法の一つとして広く推奨されています。

 

特にスタンディングデスクの導入が進み、職場でも長時間座りっぱなしにならないようにする工夫が行われるようになりました。

 

以前紹介したノルウェーのトロムソ大学による過去の研究では、立っていることが代謝マーカーの改善に関連する一方で、座っている時間が増えると健康に悪影響があることが示唆されています。

 

しかし、オーストラリアとオランダの研究者による新しい研究結果によると、長時間立っていることが健康に良いとは限らず、むしろ命に関わるリスクを潜んでいる可能性があることが判明しました。

 

以下に研究の内容をまとめていきます。

 

参考記事)

Your Standing Desk Might Actually Be as Bad as Sitting All Day(2024/11/03)

 

参考研究)

Device-measured stationary behaviour and cardiovascular and orthostatic circulatory disease incidence(2024/10/16)

 

 

研究の内容と結果

Content image

 

シドニー大学による研究から、長期的に見ると、立っている時間が長い場合でも心血管の健康状態(冠状動脈性心疾患、脳卒中、心不全)は改善されず、立位に関連する静脈瘤などの循環器系の問題のリスクが高まる可能性があることが示されています。

 

本研究は、英国の「UKバイオバンク」から収集された83,013人の成人データが用いられ、平均約7年間にわたって参加者の活動データが追跡されました。

 

参加者はリストバンド型のデバイスを装着し、そのデバイスを通じて日々の活動、睡眠、座っている時間、立っている時間が記録されました。

 

さらに、各参加者が心血管疾患や循環器疾患に罹患した頻度についてもデータとして集められ、座っている時間や立っている時間がこうした疾患にどう影響するかが分析されました。

 

その結果、約6.9年の追跡期間中に、6829件の心血管疾患イベントと2042件の起立性循環疾患イベントが確認されました。

 

【結果の要約】

・静的時間が12時間/日を超えると、起立性循環疾患のリスクが平均で毎時間0.22(信頼区間0.16〜0.29)増加

・10時間/日を超えて座ると、さらに1時間ごとに起立性循環疾患リスクが0.26(信頼区間0.18〜0.36)増加

・2時間/日以上立つと、さらに30分立つごとにリスクが0.11(信頼区間0.05〜0.18)増加

 

Content image
Device-measured stationary behaviour and cardiovascular and orthostatic circulatory disease incidence より

 

立っている時間は心血管疾患のリスクには関連しませんが、起立性循環疾患のリスクを増加させることが確認されました。

 

一方で、1日に10時間以上座ることは、起立性循環疾患リスクと主要な心血管疾患リスクの両方に関連していました。

 

静的時間の悪影響は主に座位での時間によるものであると考えられます。

 

この研究結果から、単に立つ時間を増やすだけでは心血管疾患のリスク低減に十分ではなく、むしろ循環器疾患リスクを高める可能性があることが示唆されました。

 

調査の対象となった心血管疾患には、冠状動脈性心疾患、心不全、脳卒中などが含まれ、循環器疾患には立位低血圧、静脈瘤、慢性静脈不全、静脈潰瘍といった疾患が含まれていました。

 

 

立ち時間と心血管疾患リスクの関連性

シドニー大学の公衆衛生科学者であるマシュー・アハマディ氏は、「立っている時間が心血管疾患リスクの軽減にはつながらない」と述べています。

 

多くの従来の研究では、立つことが血圧改善やインスリン感受性の向上、トリグリセリド(中性脂肪)値の低下などに寄与する「ソフトエンドポイント」を指標としていました。

 

しかし、アハマディ博士のチームは、より確かな証拠とされる「ハードエンドポイント」を調査の基準としました。

 

ハードエンドポイントとは、実際の疾患による入院や死亡といった、測定方法に影響を受けない、より具体的な健康状態のデータことです。

 

その結果、長時間座っているか立っているかにかかわらず、心血管疾患リスクの改善にはほとんど効果がないことがわかりました。

 

アハマディ博士は、「座っている時間が長いからといって心血管疾患リスクが上がるわけではないが、それによって循環器疾患リスクが増加することは確認できた」と述べています。

 

1日2時間以上立っている場合、その後さらに30分立つごとに循環器疾患のリスクが11%上昇することが判明しました。

 

これは、長時間立って作業をする小売業や接客業の従業員、あるいはスタンディングデスクを長時間使用する人々にとって注意が必要な結果です。

 

 

座り続けることもリスクがある

一方で、長時間座っていることもリスクを招く可能性があります。

 

特に1日に10時間以上座っている場合、さらに1時間座るごとに循環器疾患のリスクが26%増加することが確認されました。

 

このことから、座ることも立つことも、動かないで長時間過ごすことも循環器疾患リスクの上昇につながっている可能性が示唆されています。

 

こうした循環器疾患のリスクには、立ち上がったときに血圧が急激に低下する「立位低血圧」や、血流が滞って下肢に血液がたまりやすくなる「静脈瘤」などが含まれています。

 

 

歩行など体動かすことが大切

研究者は、長時間立っているだけでは健康リスクが軽減されない理由として、「動かずに立っていることで血液が下半身に滞りやすくなり、静脈に負担がかかるため」と説明しています。

 

アハマディ氏は、「立つことだけを解決策として考えるのではなく、歩行や他の運動を取り入れて体を動かすことが重要である。」と述べています。

 

立っているだけでなく、適度な運動を組み合わせることで、下肢に滞る血液を流し、循環器系の健康を保つことができると考えられます。

 

今回の研究は非常に大規模なデータをもとにしたものであり、サンプルサイズが充実している点で信頼性の高い研究とされています。

 

しかし、観察研究であるため、因果関係を証明するものではありません。

 

そのため、立つことや座ること自体が直接的に循環器疾患や心血管疾患を引き起こすとは断言できませんが、それでも体を動かすことの重要性を改めて強調する結果となりました。

 

【研究についてのアフマディ博士による見解】

 

ここでアフマディ氏は、「動かないで立ち続けることで、下肢に血液が溜まるため、ウォーキングやその他のアクティブな活動を取り入れて体全体の血液循環を促すことが望ましい」と説明しています。

 

たとえば、1日の中で数回立ち上がって軽いストレッチやウォーキングを行うことで、心血管疾患や循環器疾患のリスクを軽減できる可能性が示唆されているとし、体を動かすことの重要性を述べています。

 

この研究結果は、今後の健康政策や職場環境の改善においても重要な指針となる可能性があります。

 

 

まとめ

・スタンディングデスクの使用は健康に良いとされてきたが、動かずに立ち続けるだけでは心血管疾患リスクの軽減には不十分である可能性が示された

・長時間の座り姿勢もまた循環器疾患リスクを高める(1日に10時間以上座り続けることが循環器疾患のリスクを上昇させることが確認され、座り続けることも注意が必要)

・歩行など他の運動と組み合わせることが健康維持に重要

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