今回は剰余群についてまとめます。(この記事では一切C++は出ません)
群の定義は以下のようになる。
1, a,b ∈ A に対してa・b ∈ A
2,(結合律)a,b,c ∈ A に対して(a・b)・c = a・(b・c)
3,任意のs ∈ Aに対して、s1 = 1s = sとなる1 ∈ A(単位元)が存在する。
4,任意のs ∈ Aに対して、s^-1 s = s^-1 s = 1になるs^-1 ∈ A(逆元)が存在する。
上記四つの条件を群の公理と呼ぶ。
5,(可換律)ab = ba
剰余類とは次にまとめられる右剰余類、左剰余類の総称です。
Gが群、HがGの部分群とする。Gの元aをHaの形で演算させる時、GにおけるHの右剰余類と呼び、aHの形だと左剰余類と呼びます。
剰余類を考えるのは、群の定義5である可換律が関係しています。可換律の場合だと右から左から演算しても結果が一緒です。しかし、今回は右左で分けて考える必要があるので、剰余類は非可換律であることが分かる。
また、eH = He = Hである為、Hも単位元の剰余類との演算では剰余類である。
右余剰類、左余剰類の全体を示すことがある。その場合は右余剰類の全体をH\G、左余剰類の全体をG/Hと記述する。
また、各右剰余類の代表元aiの集合{ai}i∈IをH\Gの完全代表系という。
左も同様。
※I : 添字集合
右剰余類Ha = Hbが満たされている時、a,bはHを法として右合同という。また、
左剰余類aH = bHが満たされている時、a,bはHを法として左合同という。
これらの合同は同値関係である。
証明(合同)
x~y ↔︎xy^-1 ∈ H が同値関係であることを示す。
1, xx^-1 = 1 ∈ H より x~x
2, x~y ↔︎xy^-1 ∈ H より (xy^-1)^-1 = yx^-1 ∈ H よって y~x
3, x~y, y~zとし、xy^-1, yz^-1∈ H より、 xy^-1, yz^-1 = xz^-1∈ Hよって x~z
また、aを含む同値類がHaであることを示す。
x~aとなる任意のxに対し、定義よりxa^-1 ∈ H なので
h ∈ H で xa^-1 = h となるものが存在するので、x = ha ∈ Ha。
逆に、任意のha∈ Ha に対して (ha)a^-1 = h∈ H より、a~ha。
よってaを含む同値類はHaとなる。
また、G/Hが有限集合の時、H\Gも有限であり元の個数も同じである。
この時、HのGにおける指数と呼ぶ。これを|G:H|と表記する。
また、有限個の群のことを有限群という。有限群の位数に関しては、以下の定理が基本的。
有限群Gの部分群Hにおいて以下を満たす。
1, |G| = |G:H| |H|, すなわち|G:H| = |G| / |H|
2, Hの位数も指数も共にGの位数の約数
また、Gの部分群Nが
a^-1 Na = N (任意のa ∈ A)
を満たす時、NはGの正規部分群である。G▷Nで記述。
注意
・Na = aNと同値。よって正規部分群Nの右剰余類と左剰余類は一致し、余剰類となる。
・Gが可換群である時、任意の部分群は正規部分群。
G▷Nの時、Nの二つの剰余類Na,Nbの積とする。
(Na)(Nb) = NaNb = NNab = Nab
となる、この積に対してN : 単位元, Na^-1 : Naの逆元, G/Nは群。
この時のG/Nを剰余群という。