ALISのみなさん、おはようございます!
大麻について話が盛り上がっているようですので、人呼んで大麻王国のオランダ出身の僕も書くしかないと思いました。僕がオランダのアムステルダム出身だというと、日本人だけでなく、他の国の人にも必ず言われます「どうせ毎日大麻すってるっしょ?」と。オランダのドラッグに対する寛容さは世界的に有名ですが、実は皆さんが思われるほどではありません。そして、オランダの一般人における大麻に対するイメージがいいとも言いがたいのです。こういった様々な誤解を解くため、この記事ではオランダの大麻に関する法律を説明していきたいと思います。
しかしその前に、議論のテーマである「日本は大麻を合法すべき?」という質問に対して。意外と思われるかもしれませんが、僕の答えは:100パーNOです。ここでその理由を言ってしまうとネタバレになりますので最後に書きます。
括弧で括られた合法って?となる方が多いと思いますが、こうして括弧で単語を囲むことで、「語弊がある」、「○○というんだけど、実はそうでもない」ということを示します。(英語でも使えます)ゴマ豆腐を豆腐と呼びますが、実は豆腐ではありません。“豆腐”です。という例を挙げると分かりやすいと思います。
これを大麻に置き換えれば、吸ってはいいですが、生産してはいけませんし、厳密に言えば大麻の所持も違法だという、とても紛らわしい法律になります。
実は大麻を持ってはいけません。しかし、18才以上で、5g以内であれば没収されることで済みます。5g以上の大麻を所持していることが警察に発覚されると€75(~7500円)の罰金と大麻の没収になります。30g以上の大麻を持っている場合は、最長2年の懲役、或は最大€16.750(167.5万円)の罰金、或は懲役と罰金を両方受けることになります。
生産の禁止
大麻の生産もある程度まで許されますが、厳密に言えば禁止です。5鉢までであれば家にあっても、5gの所持と同じく、没収されはしますが起訴はされません。5鉢以上が発見されると最長4年の懲役、或は最大€67.000(670万円)の罰金、或は両方を受けます。
1鉢で生産できる大麻は、栽培する腕にもよりますが、1年で100g前後だそうです。お客さんとしてお店で払う平均単価は、大麻1g当たり10ユーロくらいです。大麻の売却は免許がなければそもそも違法だということを少し横に置いて考えても、栽培の費用も入れたら、ぼろ儲けできるとは思い難いです。
大麻の所持と違って、大麻の栽培に対する取り締まりは非常に厳しいです。最近の警察の情報によりますと、オランダに30,000の栽培所があると推定されており、ここ10年で毎年平均5000の大麻栽培所が発見されています。地下、農家の穀物畑の中、住宅、様々な場所で違法栽培が行われています。熱、匂いと電気使用量が大麻の栽培を疑わせる主な要素ですが、電力会社の社員に賄賂を贈って、電気使用量が測定されないようにするなど、様々な工夫をして警察の目を盗み大麻が栽培されます。
実は、僕の家の近くに住んでいた友達が引っ越したとき、(以下の写真に似ている住宅)その家を買った人が家を大麻の栽培所にしました。これが発見されたとき、友達の親ももちろん疑われて大変だったそうです。
大麻の売却
上記に記した通り、大量の大麻を所持することも、栽培することも違法です。そうであればコーヒーショップ(オランダで合法に大麻が買えるお店)はどうやって大麻を卸しているかを疑問に思うのは無理もありません。
実は大麻がお店の門をくぐりぬける瞬間までのプロセスは完全に違法です。コーヒーショップのための特別栽培施設もありませんし、コーヒーショップにだけ配達しているなら大丈夫というような例外も一切ありません。そのため、お店への届け方や、誰から買ったなど、全てそれぞれのお店の企業秘密です。さらには、お店の大麻の在庫は500gを超えてはいけないという法律もあります。つまり、アムステルダムの中心にある人気なお店は、一日に数回は在庫を補充しなければなりません。
他にも、コーヒーショップは、一人のお客さんに一日で5g以上の大麻を売ってはいけません。学校の近くにあってはいけません。18未満の人の来店を断る義務や、お酒の提供の禁止など、数多くのルールを守らなければいけなくて、破ったら即閉店です。
「それだけ守ればいいのなら、オランダに引っ越してコーヒーショップを開店しよう!」と思う熱心な方への悲報です。残念ながらコーヒーショップの開店(大麻の売買が許される)のライセンスはもう新しく発行されません。つまり、既にある店を引き継ぐしか方法がありません。
ここ数年は大麻の法律が変わりつつあります。オランダで大麻を買って持って帰る外国人が多いため、特に隣のドイツからの圧力が強いです。そのため、オランダ在住でない人に売却することを禁止する法案もあります。しかし、それより今の大麻政策のもっとも問題のある部分は大麻の栽培が違法であることです。
今年の公式データによると、オランダの違法大麻栽培の市場価値は約5千億円に値すると推測されています。その中には、ちょっとしか生産していない個人も含まれていますが、オランダの大麻の大半を生産しているのは、俗にいうチンピラではなく、やばい犯罪組織です。栽培が違法だからこそ、犯罪組織が大麻の市場を独占しており、収入源にできます。その解決方法として、大麻の栽培を合法化するという法案ができました。栽培を合法化すれば、コーヒーショップの大麻の購入先を統制できて、犯罪組織が大麻を売れなくなると思われます。
しかし、大麻栽培の合法化は防犯のためだけではありません。最近は色々な国が大麻の合法化を進めています。つまり、世界的に有名で質が非常に高いオランダの大麻は、いずれチューリップと肩を並べてオランダの輸出品にもなれるでしょう。
なぜオランダが大麻を“合法”にしたかといえば、それは政治家が大麻を吸いたいとか、オランダはなんでも許してあげたい文化があるからではありません。あくまでも、違法売買が酷くて、それがもたらした犯罪を取り締まる最終手段として大麻が“合法”になりました。つまり、「人の自由をできるだけ奪わないし、健康的な害もあまりないからいいんじゃない?」という左翼的な理由で合法化されたという訳ではありません。
ここまで、合法化の背景とオランダの法律の説明をしたので、合法化に反対である僕の意見の理由を説明させていただきます。
まずは、合法化に賛成する方々が口を揃えていう「依存成分がない、医療でも使われるし、害がない」、という論点です。これはまさに、大麻を実際見たこともない人の考え方だと思います。大麻が身近な国の人でなければ当然そうなると思います。しかし、僕は生まれ育ちがアムステルダムですので、大麻がなんとなくどこにでもある、というところにずっといましたし、今もいます。
聞いた話ではなく、実際に自分の目で見たことに基づいた僕の意見を聞いてください。
依存成分がなくてもハマることはできます。そして、大麻にはまってしまえば、体への害はあまりないかもしれませんが、人生に害がないとはとても言えません。大麻でハイになれば、人の生産性がどん底に落ちます。そして、はまってしまうと、若い人なら勉強、社会人なら仕事、生き残るために現代社会に必要とされることができなくなります。これはアルコール中毒の人と同じです。
しかし、アルコールと大麻には大きな違いがあると思います。お酒は一杯、二杯飲んでもすぐに酔っぱらいません。それに対して、大麻はほどほどという概念がないのです。ハイになるか否かという感じです。二日酔いになったり、飲み過ぎて吐いたり、酔っぱらってやったことを次の日になって後悔したりするという、罪悪感を覚えさせる要素は大麻にはありません。ゲーム依存になると同じようにずっと気持ちいい。だから気付かないうちに依存してしまって、気付いたら、友達、仕事、お金が全部なくなっていたーー。
本当にそれで大麻に害がないと言えるでしょうか?
この記事を通じてオランダ人として日本人とちょっと違う視点で大麻の議論に貢献できたら、と思い投稿しました。質問があれば、コメントを残していただければお答えします。
様々なドラッグの効果に関して興味がある方は以下のユーチューブチャンネルを見てみてください。いろんなドラッグを試してみる動画がアップされています(英語字幕付き)。以下の大麻の動画を見れば、吸った人が頭良さそうな人からアホに変わることがよく伝わってくると思います。
MALIS様へ、校正していただいてありがとうございます!