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BCAAは本当に必要なのか?徹底的調査

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  • Jimmy
  • 2020/07/05 09:02
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サプリというのは、筋トレについて調べたら必ず出て来る概念です。最近ではプロテインの次によく聞くのはBCAAかもしれません。効果的なトレーニングと筋肉作りに必要不可欠なサプリだという記述をよく見かけます。

自他共に認める懐疑主義者である僕はBCAAについて初めて聞いたときにもちろんまず根拠について調べてみました。当時は軽く調べたところ、あまりはっきりとした答えが見つけられなかったので使用を控えました。しかし、最近はまたよく目に入るからしっかりと調べてみようと思います。

このBCAAというサプリにお金をかける意味があるのでしょうか。

注意
複数の論文をしっかり読んで、出来るだけ科学に基づいて書いたものの、僕は専門家ではありません。全体的な結論が間違っていない自信はありますが、ここで提示される情報をどう受け止めるかはよく読んでから自分で判断してください!

まとめ

徹底的調査とのことなので、かなり長くなってしまいました。先に結論をまとめてみますと以下の通りです:

1. BCAA自体は筋肉作りに大いに関わっています。しかし、他のタンパク質源に十分含まれているので、ビーガンなど高質タンパク質の摂取ができない方以外はBCAAをサプリとして飲んでも特に意味がないようです。
2. BCAAを飲むことによってトレーニング中の疲労感を遅らせられるという説もありますが、根拠がかなり薄いかもしれません。筋トレ中の疲労感に影響すること自体はまだはっきりと証明されていませんし、もし影響があるとしても日中に既に食事から摂取しているBCAAをわざわざ筋トレの時間に合わせて補給することが良いとの根拠は見つけられません。

BCAAとは?

まずBCAAっていうのはそもそもなんなのかちょっとは分かった方がいいと思ったので先に調べてました。

BCAAは合計9つある必須アミノ酸の中のバリンロイシンイソロイシンという3つの総称です。

アミノ酸

アミノ酸は体内で様々な役割を果たしており、タンパク質の構成要素です。タンパク質は筋肉を作ることに必要なので、アミノ酸が筋トレでも注目されます。アミノ酸は必須アミノ酸非必須アミノ酸という2つに分けられ、前者は体内で作ることができなくて、食事から摂る必要があります。

タンパク質は摂取してから一旦アミノ酸へ分解され、体の各部位でまた必要とされるタンパク質に再合成されるらしい。

BCAAに話を戻して..

非必須と必須アミノ酸を合わせて20種類のアミノ酸はそれぞれ役割が違って、BCAA(バリン、ロイシン、イソロイシン)は特に筋肉の構成に関わってるから注目されます。以下は立命館大学スポーツ健康科学部の藤田教授著の『眠れなくなるほど面白い図解ータンパク質の話』から引用したBCAAの働きです:

バリン:筋肉を強化し、身体の成長を促す。血液中の窒素量を調整する。
ロイシン:筋肉を強化し、肝臓の働きを促す。摂りすぎると免疫力が低下するので注意。
イソロイシン:筋肉を強化し、身体の成長を促す。肝臓などの働きを高める

タンパク質は本当にアミノ酸に分解されるのか?必須アミノ酸は本当に存在するのか?など、上記の情報は基本事実として捉えてもいいと判断して続けます。

BCAAの期待できる効果

BCAAを本当にサプリとしてとった方がいいのか知るために、BCAAがもたらすと言われる効果をGoogleで「BCAA 効果」と調べてまとめてみました。

BCAAの摂取は主に2つの効果があるとされているようで、サプリで補給した方がいいとされています:

1. 筋トレの効果が上がる。つまり、筋トレで促される筋肉の構成がよりうまく行って、摂った方がより早く筋肉が付く
2. 筋トレ中の疲労感が下がって、より質のいいトレーニングができる

上記の検索結果の記事内では特に引用元が述べられていません。

それに、記事で様々なアフィリエイトのURLでBCAAの購入が促されますし、BCAAを売っている製薬会社によって書かれた記事もありました。これは少なくとも怪しむには十分理由があるでしょう。

では、BCAAサプリが「疲労感の遅らせ」と「筋トレの効果向上」の効果があるという主張はどこから由来しているかそして本当なのか次に探してみました。

 

1. 筋トレの効果向上

最初に1番目の主張される効果について調べました。本当にBCAAをサプリとして摂ることで、筋肉がより早く付くのでしょうか。

筋肉の作り方について

まずは、筋肉が作られる条件を調べてみました。

Muscle Protein SynthesisがMuscle Protein Breakdownを上回るときに筋肉が作られるそうです:

ーー骨格筋肥大、または単に骨格筋量の 増加は、筋タンパク質合成(MPS)と筋 タンパク質分解(MPB)のバランスに 依存し、MPSがMPBを上回る際に生じる。ーー
https://www.nsca-japan.or.jp/journal/25_4_19-22.pdf

つまり、「MPS+MPB>0=筋肉💪」ということなので、BCAAの「筋トレの効果向上」というのはMPSの促進か、MPBの抑制かその両方に関係しているという意味でしょう。ちなみに、MPSがMPBを上回っている状態はアナボリック状態といいます。

MPBについて

いつでも体内に必須アミノ酸がある状態にするため筋タンパク質が分解されます。その70%ぐらいがまたMPSで筋タンパク質に戻り、残りの30%が他の部位で使われたり、無くなったり(oxidize)します。僕の理解が正しければ、食事で摂取している必須アミノ酸が十分であったとしても、MPBは起きています。

BCAAとMPSの促進の研究

MPBの抑制ではなく、MPSの促進が気にされているようです。そして、実際にBCAAがMPSの促進に貢献していることが明らかになった研究も複数あるようです。

例えば、この研究では、BCAAを摂取した場合のトレーニング後のMPSへの影響がテストされます。結果は、BCAAだけの摂取が筋トレ後のMPSを22%も促進したのです。BCAAはつまり筋肉作りに大いに貢献しているということです。

即座にBCAAのサプリをアマゾンのカートに入れようと思う人はもうちょっと待ってください!

一旦冷静になってちょっと考えましょう。そもそも僕が明らかにしようとしているのは、BCAAの働きではなく、サプリとして摂るべきかどうかです。

BCAAは他のタンパク質源(肉、プロテインなど)から摂ることができるからです。また、BCAAによるMPSの促進だけではなく、この促進によってMPSがMPBを上回るかどうかも大事です。なぜかというと、MPSが促進されてもMPBを上回れなければ筋肉が作られないからです。

実はBCAAのMPS促進の効果を証明した上記の研究では次のようなことも明らかにされています:

ーーThe magnitude of this increased response of myofibrillar-MPS was ~50% less than the previously reported myofibrillar-MPS response to a dose of whey protein containing similar amounts of BCAAs
本研究で示したBCAAによるMPS促進の程度は、同じぐらいのBCAAが含まれるホエイプロテインがもたらしたMPS促進の約50%である。ーー
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5461297/

つまり、BCAAはMPSを促進していることが明らかになったのですが、サプリとしては必要ないと主張されています。むしろ、ホエイプロテインを摂取した方がBCAAのみ摂取する場合の倍の効果があるようです。その理由はBCAAによるMPS促進は、BCAA以外の必須アミノ酸の有無によって左右されるかららしいです。ホエイプロテインには、このBCAA以外の必須アミノ酸も含まれています。

また、BCAAだけの摂取でアナボリック状態(MPSがMPBを超えていて、筋肉が増加する)が作れるのかどうか、違う論文では不可能だとされています。

さっき示した通り、MPSを促進するためにはBCAA以外の必須アミノ酸が必要です。BCAAだけをサプリで摂取すると他の必須アミノ酸を一緒に摂っていません。そのため、MPSのために足りない必須アミノ酸を他所から摂るしかないです。先ほど説明した通り、MPBによって体内に必須アミノ酸が常に提供されますのでそこから摂っていきます。しかし、筋タンパク質の分解で体内に流される必須アミノ酸(MPB)を使って、その分解の程度を超える筋タンパク質の合成(MPS)をするのは不可能だと論付られています。https://jissn.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12970-017-0184-9

つまり、BCAAだけの摂取ではアナボリック状態(筋肉が作られる状態)になることができません。

 

BCAAと筋トレの効果向上の結論

では、BCAAは本当に筋トレの効果を向上させているのでしょうか?

研究結果からは、大いにその向上に貢献していることが分かります。

しかし、アナボリック状態になるためにはBCAAだけではなく、他の全必須アミノ酸も食事などからバランス良く摂る必要があります。そして、筋トレをしているのなら、既に肉やホエイプロテインなどのような質の高いタンパク質からその必須アミノ酸(BCAAを含む)を常に摂っているはずです。

つまり、ビーガンなどのように、必須アミノ酸が比較的乏しいタンパク質源から摂取する人でない限り、筋肉をより早く付ける目的でBCAAをBCAAサプリで補給することはあまり意味が無いみたいです。

 

2. 疲労感の遅らせ

上記では筋肉作りという過程自体にはBCAAのサプリは基本的に無意味だと論付ました。しかし、トレーニング中の疲労感を遅らせるような効果があるという説もあります。

ここで気になるのは主に2つです:

1. BCAAはそもそも疲労感を本当に軽減するか
2. BCAAが疲労感を軽減するとしても、わざわざトレーニングの時間に合わせて飲む必要があるのか。

このため、まずBCAAがそもそも疲労感を遅らせるか調べてみました。

 

BCAAと疲労感の軽減の研究

結論からとても簡潔にいうと、特に筋トレの場合だと、トレーニング中のBCAAの摂取は疲労感に対して影響していないようです。

BCAAの摂取が脳内のセロトニン(疲労感の原因の一つ)の分泌を減少させる効果があるという説はありますが、研究ではうまく証明されていないようです。セロトニンの分泌を抑える効果を見せたのは、例えばこの研究ですが、ネズミにBCAAを与え120分走らせるというものでした。また、こちらの研究では被験者にいくつかのパズルをきつい運動の前後に行わせ、BCAAを運動中に摂取したグループとしていないグループのパフォーマンスを比較するというものでした。検証のポイントは認知行動能力と機嫌にフォーカスされていますし、運動と言っても一般的な筋トレなどとは運動量の異なる30kmのクロスカントリー競技での実験でした。

他にもトレーニング中のBCAA摂取の効果を明確にできなかった研究もあります。同じようにトレーニング初心者に有酸素運動させた研究もありましたが、パフォーマンスの向上というのは特に研究結果として得られなかったようです。

 

BCAAと疲労感の遅らせの結論

上記から疲労感の遅らせを目的としたトレーニング中のBCAA摂取にはあまり効果を期待できないと思えます。効果の可能性を示した研究結果が、筋トレにも有効と考えるにはまだまだ証拠が不十分なようです。

 

まとめ

この記事ではBCAAサプリについて提唱されている効果について調べてみました。

残念ながら理想の自分の体に早くなれるサプリを見つけることはできませんでしたが、調べることで色々新しいことを学ぶことができ、楽しかったです。

BCAA自体は筋トレにとって必要不可欠のアミノ酸ですが、ビーガンじゃない自分は、日中に摂取している高質タンパク質から摂っているBCAAをさらにサプリで補給することは、筋肉作りのためにも、トレーニングのパフォーマンス向上のためにも意味がないようです。

 

終わりに

やっぱり、Aの説が広く受け入れられることによってある特定なグループが得する場合、その説をそのまま信じるのは危険ですね。BCAAのサプリは、業界が研究の結果をうまいように研究の文脈から取り外して、商品のマーケティングに使う事例の一つだと思います。

不明なところ、追加質問や批判などがあれば、コメントを残してください。ぜひ議論などを通して自分の知識を深めたいと思います。

 

 

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