19歳の時。
友達2人と、静岡までバイクのツーリングに出かけた。
静岡のどこに行くかとか、特に目的地は無かった。
ツーリングに行ったのは夏。
朝から蒸し暑い日だった。
首都高に乗ると、地面と車の排気ガスで更に熱い。
この日は朝から大渋滞していた。
そのせいで首都高だけの気温が猛烈に上がっていた。
我々は、車の間をすり抜けて走り続けた。
トラックに幅寄せされるが、もうこれは首都高の文化みたいな物だ。
そんなの全く気にせず、東名高速までノンストップで走り続けた。
東名高速に乗れば、渋滞もなく一気に静岡まで行ける。
そして、予定通り東名高速にノンストップでたどり着けた。
東名高速をしばらく走って、途中のPAで休憩をする。
この時、Tシャツを着ていた。
そのTシャツを見たら、なんだか黒ずんでいる。
高速道路を、走って来た時に排気ガスまみれになっていたのだった。
いつもの日常では、排気ガスなんてほとんど感じない。
でも、高速道路での排気ガスの多さにはびっくりした。
一応、Tシャツの替えは持って来ていた。
でも、まだ汚れるからこのまま行く事にした。
そして我々は、静岡に到着し適当な所で高速を降りる事にした。
高速道路を降りた場所は「浜松IC」。
ここに来たは良いが、何も目的は無かった。
そこで我々は、目的を探すため地図で行く場所を調べてみた。
そうしたら、近くにイチゴ狩りが出来る所がある。
我々は、男2人でいちご狩りにシャレ込む事にした。
イチゴ狩りの場所は確か「ブラウンクルー」という場所だった。
そこのイチゴ農園は、狩りながらイチゴを好きなだけ食べられた。
甘い物が大好きな俺は、ここは天国かと思えた。
俺は、ここでイチゴをむさぼり食い狩るのは後回しにした。
そして、イチゴをたらふく食べて、ご満悦になった。
この後、イチゴをがご一杯に詰め込んで、スキップしながら会計をした。
我々は、そのイチゴをバイクの後部座席に固定して持ち帰った。
多分イチゴの量は、1㎏位あったと思う。
このイチゴが、全部俺の物だと思うと嬉しくて仕方ない。
家に帰ったら、家族に少し分けて後は全部自分で食べる決意を固めた。
このツーリングは、凄く有意義なツーリングだった。
俺は、たくさんのイチゴを持ち帰れて、超ご満悦まま家に到着した。
そして、イチゴを降ろそうとしたら、バイクの後方が赤く染まっていた。
嫌な予感がして、急いでバイクからイチゴをおろした。
イチゴの箱の中を見てみたら、ほとんどイチゴが潰れている。
バイクで走った振動で、イチゴがジュースになってしまっていた。
俺は、呆然と立ちすくみ、この世の終わりを見た気がした。
俺の大好きなイチゴが、全部なくなっている。
もう半べそ状態で、そのイチゴの箱から生還したイチゴを取り除いた。
案の定、数十粒のイチゴしか生き残っていなかった。
俺は、泣きながらその生還したイチゴをその場で食べた。
その後、後方だけシャア専用に赤く染まったバイクをゴシゴシ洗った。
この時の気持ちは、何とも空しい気分だった。
この時、もうバイクでは、イチゴ狩りには行かないと決意を固めた。