



地球で生命が誕生できる様な環境が
約何年前にできたのか?
これをコンピューターで計算し
突き止めました
研究者が注目したのが
「RNAワールド」という
生命のかなり初期の段階です
研究チームの計算では
RNAワールドが成立するのに
最も適した時期は
約43億3000万年前だったと
推定してます
ただしこれは43億3000万年前に
生命が誕生した事が証明された
という意味ではありません
ここは非常に重要で
この論文が調べたのは主に
生命が生まれる為の温度や環境が
その頃存在できたか?
という問題です

現在の地球上の生物では
DNA → RNA → タンパク質
という仕組みが生命活動の
中心になってます
DNAは生命の
設計図の様な物です
しかし生命が誕生したばかりの時代は
現在の様な複雑な
DNA・タンパク質システムは
まだ存在しなかったと考えられてます
そこで出てくるのがRNAワールド
という考え方です
RNAは
遺伝情報を保存できる
化学反応を助ける事ができる
条件によっては自分自身の
複製に関係する働きができる
というDNAとタンパク質の
両方に少し似た性質を持ってます
そのため生命の非常に初期には
RNAを中心とした原始的な
生命システムが
存在したのではないか?
という仮説があります

現在の地球は
液体の水がある
海がある
温度が比較的安定している
生物が暮らせる場所がたくさんある
という環境です
でも地球が出来たばかりの頃は
全く違いました
当時の地球には
小惑星・彗星・微惑星などが
大量に衝突してました
これをこの論文では後期集積
と呼んでます
簡単に言えば地球ができた後も
宇宙から大量の巨大な岩石が
地球に降ってきてたという事です

巨大な天体が地球に衝突すると
もの凄い熱が発生します
場合によっては
海が蒸発する程の高温になります
論文によると月が出来た原因の
約45億1000万年前の
地球サイズ惑星衝突後は地球全体に
巨大なマグマの海が出来たと
考えられてます
その後も
直径500km以上の巨大天体などが
衝突する事で海を一時的に蒸発させ
地表温度を300℃以上にする様な
出来事が起きた可能性があります
こんな環境では
RNAや生命に必要な分子が安定して
存在するのは非常に難しい訳です

これはこの論文の重要なポイントで
研究者達はコンピューターを使って
隕石衝突により地球の地下が
何℃になるのかを計算しました
地球を3次元のモデルとして作り
隕石がどこに落ちるか
どのくらいの大きさか
どのくらいの速度か
衝突によってどれくらい熱が発生するか
地下がどのくらい冷えるか
等を計算しました
なんとこれは地球全体を
対象にしたシミュレーションです

計算結果では
約44億5000万年前ごろまでは
生命にとって非常に
厳しい状態だったとされてます
特に約44億7000万年前ごろには
衝突による地殻の溶解が
非常に激しくなりました
地殻の温度も非常に高くなったけど
時間が進むにつれて隕石衝突の回数が
急激に減っていき
地球は少しずつ冷えはじめました

ここがこの論文で非常に面白い所で
地球全体が一気に
「生命に適した惑星」に
なった訳ではありません
最初は熱すぎる場所ばかりでしたが
時間が経つと地下に比較的
温度の低い場所が少しずつ
増えていきます
研究では
地下300mまでの範囲について
調べてます
約44億年前以降生命にとって
比較的穏やかな環境が
急速に増えていったと
計算されました
約43億年前には
モデル上では地下のかなり
大きな部分が穏やかな温度条件に
なってます

ここは少し意外で
隕石衝突によって地下が熱くなると
地下水が温められます
すると熱水場という所ができ
イメージとしては
地球の地下にできた巨大な
天然の温泉・化学工場の様な物です
水が岩石の中を通り熱と鉱物を運び
その過程で化学反応に必要な
エネルギーや物質が
集まりやすくなる可能性があります
研究者達はこの様な場所を
生命誕生の為の化学工場の様な
候補として考えてます

ここが非常に重要で
隕石が衝突すると
200℃以上になる場所もできます
しかしそのすぐ近くに
50℃以下の場所が残ってる可能性が
あります
つまり地球全体が
同じ温度だったわけではない
という事です
熱い場所と比較的冷たい場所が
モザイク状に存在してました
研究では
約44億5000万年前の時点でも
隕石衝突の影響を受けていない
地下100~300mの場所には
50℃以下の領域が存在したと
計算されてます

⑨RNAが壊れない温度も調べた
研究者達はRNAやDNAなどの分子が
どの程度の温度なら
安定してられるか
という点も計算に入れてます
特にRNAワールドについて
約60℃以下がRNAワールドを
成立させる為の
かなり慎重な目安として使いました
また
DNA:約140℃未満
RNA-DNA複合体:約60℃未満
等の基準もモデルに使用してます
ただしこれは
60℃なら生命が必ず生きられる
という意味ではありません
あくまで生命に必要な分子が
長期間壊れずに存在できる可能性を
評価するためのモデル上の基準です

隕石衝突には悪い面の
地面を溶かす
海を蒸発させる
高温にする
生命や生命の材料を壊す
という面があります
しかし同時に良い可能性の
地下を温める
地下水を循環させる
化学反応のエネルギーを作る
鉱物を反応の材料として
利用できる環境を作る
という面もあります
つまり隕石衝突は生命を邪魔する
「破壊者」であると同時に
生命誕生に必要な化学反応を助ける
エネルギー源になった可能性もある
という事です

研究結果を簡単に時間順にすると
こんな感じです
時期地球の状態約45.1億年前
月を作った地球大惑星衝突
地球は非常に高温約45~44.5億年前
巨大隕石が多数衝突
約44.7億年前衝突による
地殻の加熱・溶解が非常に激しい
約44億年前巨大衝突が
大幅に減る
約43.3億年前RNAワールドに
適した条件が特に整った時期
約43億年前熱水環境が多く存在
約42億年前ごろLUCAが
存在したと考えられる時期
約38.3億年前
既に生命圏が存在した事を示す
地球化学的証拠
この論文では
特に約43億3000万年前を
重要なポイントとして扱ってます

⑫LUCAって何?
ここでLUCAという
言葉が出てきます
これは「最後の共通祖先」と
呼ばれます
簡単に言えば
現在地球上にいる生物全てが
遠い昔に共有していた祖先です
人間も犬も魚も植物も細菌も
全ての現生生物をずっと遡ってくと
共通する祖先がいたと言う考えが
LUCAです

⑬ LUCAは「最初の生命」ではない
ここは非常に重要で
LUCA=最初の生命ではありません
LUCAが登場するまでに
それより前の生命や生命に近い物が
長い時間をかけて進化してた
可能性があります
論文もLUCAはDNAを使う生物の
最初の存在を意味する物ではないと
注意してます
つまり
生命の誕生
↓
原始的なRNAなど
↓
RNAワールド
↓
さらに進化
↓
DNAを使う生命
↓
LUCA
↓
現在のすべての生命
という様な長い歴史があった
可能性があります

研究チームの計算では
RNAワールドの「最適な時期」が
約43億3000万年前
LUCAは
約40億9000万~43億3000万年前
とされてます
LUCAの推定には幅があり
研究者達はその平均的な時期を
約42億年前として
RNAワールドに適した環境ができた
約43億3000万年前からLUCA迄には
約1億3000万年程度あったとしてます

研究では
熱水システムの数も調べてます
結果として約43億年前ごろに
熱水環境が非常に多く存在したと
計算されました
その後地球内部が冷えていくにつれ
熱水システムも減ってきます
つまり約43億年前の地球には
生命誕生に使える可能性のある
温かくて化学反応が
起こりやすい場所が
たくさん存在したという事です

研究者たちは
この問題も調べてます
約45~44.8億年前ごろは
海を完全に蒸発させる程の巨大衝突が
かなり頻繁に起きる可能性が
ありました
しかし約44億年前を過ぎると
そのような巨大衝突は急激に
減少しました
約44億年前以降は
研究モデルで海を完全に
蒸発させるような衝突は
1000万年あたり0~1回程度
という非常に低い頻度になってます
そのため生命が長期間生き残り
進化できる環境が
徐々にできていったと
研究者達は考えてます

ここもこの論文を読むうえで
大切です
この研究は生命の誕生そのものを
再現した研究ではありません
主に温度・熱・隕石衝突・地下環境を
計算してます
生命が実際に誕生する為には
水
炭素
窒素
リン
水素
有機物
エネルギー
鉱物
化学反応
等様々な条件が必要です
しかも「温度が丁度よかった」=
「必ず生命が生まれる」
ではありません
研究者自身もRNAがどの様な
化学反応を経て
生まれたのかについては
まだ大きな不確実性があるとしてます

現在「RNAワールド」という
考え方だけでなく
「RNA+ペプチド」の様な
世界だった可能性も研究されてます
つまりRNAだけが
最初に存在したではなく
RNAと小さなタンパク質の様な
分子が一緒に進化した可能性も
あります
論文でもこの様な
「RNAペプチド世界」
という別の考え方を紹介してます

この研究は
「43億3000万年前に生命が誕生した」
と証明した訳ではありません
あくまで地球の熱環境を
コンピューターで再現した結果
RNAワールドが成立するのに
適した条件が最も整っていた時期が
約43億3000万年前だった
という研究です
更にモデルでは
隕石衝突による熱水循環を
完全にシミュレーションしている
わけではありません
熱水システムについては
主に温度と地熱勾配から
「こういう場所があり得る」と
推定してます
また隕石が地球に落ちた時の
熱い岩石の破片や蒸発した岩石が
遠くまで降り注ぐ影響なども
モデルに完全には入ってません

いろいろな条件を合わせると
約44億年前
↓
巨大衝突が減る
約43億年前
↓
地下に比較的安定した場所が増える
↓
熱水環境が多く存在
↓
化学反応に利用できる
エネルギーがある
↓
RNAなどの分子が安定して
存在できる場所が増える
約43億3000万年前
↓
RNAワールドにとって最も
条件が良かった
「スイートスポット」が完成
という結果になりました











