入院中、「今日は階段を昇る練習をしよう」と、とある美人看護婦さんが言った。僕が階段を昇っていくとき、彼女は後ろから付いてきた。僕は尋ねた。「もし、僕が今、転倒したら、どうするんですか?」彼女は「私が受け止める」と断言した。「自信あるんですか?」と聞くと彼女は「自信ある」と言ってにっこり笑った。
退院してからNPO法人のガイドヘルパーのそれぞれが、どのような資格を持ち、どんな訓練を受けているのか尋ねた。そのときにこの話をするとYさんから「その看護婦さんと比べてはだめ」とちょっと怒られた。「ガイドヘルパーは利用者が育てるの。関係性の中でね」と言われた。その意味はすぐピンときた。教師は生徒が育てることを私は身をもって知っていたから。
しかし、中ではMさんはガイドヘルプのプロだ。片手に杖、片手をMさんと繋いで、初めてMさんと長い道のりを歩いていったとき、Mさんは僕が道の環境に不安を感じる局面で、僕が不安を感じるのと同時に、あるいはむしろ一瞬早く、「うーん」と声を出して、手をほんの少し強く握りしめた。
僕に不安を感じる隙を与えなかった。
この話をまたYにすると「そう、彼女はプロなの。だからMさんにはまる人がいるの。ガイドヘルプは彼女じゃなきゃダメだという子供や、その親がいるの」と言っていた。僕にもその気持ちはよくわかった。つまり完全なプロは依存を生じるから、これまたよくないという意味です。
障碍者のガイドヘルプとはいったい何だろう? これは一筋縄ではいかない関係性だ。