料理を科学する真面目なDMグループの知見まとめです。
うま味とは、動物肉由来のイノシン酸・シイタケやボルチーニ茸由来のグアニル酸・植物由来のグルタミン酸・貝由来のコハク酸が有名だ。異なるうま味成分を掛け合わせることでうま味の相乗効果が生まれる。
特にグルタミン酸ナトリウムは『味の素』として市販されている。
なぜグルタミン酸とコハク酸は相乗効果を生まないのか。
味を感じるのは舌表面にある受容体(センサー)がそれに対応した物質と結合することで「○○味」と感じる。これはうま味受容体にも存在する。
そこでイノシン酸・グアニル酸・グルタミン酸・コハク酸の分子構造を見てみる。
イノシン酸とグアニル酸、グルタミン酸とコハク酸は構造が似ていることが分かるだろう。イノシン酸とグアニル酸は核酸系、グルタミン酸とコハク酸は有機酸系のうま味と呼ばれる。
また、うま味を感じるセンサーはグルタミン酸のセンサーとイノシン酸のセンサーとで分かれていて、両方のセンサーが反応している状態が「うま味の相乗効果」とされている。
ここでグルタミン酸とコハク酸を合わせても劇的に美味しくならない(「うま味の相乗効果」を生まない)のはセンサーにグルタミン酸とコハク酸が競合するからではないかと考えた。
となると、グルタミン酸やコハク酸と似た構造を持つ炭素の短いジカルボン酸、アスパラギン酸もうま味として認識されそうである。
事実、アスパラギン酸はうま味として認識されるとのことだ。
日本のだしは、グルタミン酸と弱いうま味をもつアスパラギン酸、そしてイノシン酸からなるシンプルな構成になっています。
Q. コハク酸の炭素鎖を伸ばしたり縮めたジカルボン酸はうま味として認識されるのか
Q. グルタミン酸から脱アミノ化したグルタル酸、アミノ基を3位に結合させた3-アミノペンタン二酸はうま味として認識されるのか
Q. 別の修飾、ヒドロキシ基などではどうなるのか
例えばコハク酸の炭素鎖をヒドロキシ基で修飾したものはリンゴ酸である。爽やかな酸味として知られている。
ここでコハク酸は酸味として認識されないのかという疑問があり、調べたところ酸味としても認識されるそうだ。
酸味と化学についてはまた別の研究となるであろう。
次にイノシン酸とグアニル酸、核酸系うま味について考える。
イノシン酸とグアニル酸の構造は非常に似通っており、違いはプリン基の2番目の炭素にアミノ基があるかないか。
Q. これらを区別できるのか。
A. MKS「直で比べてもわからん」とのこと
仮説:イノシン酸とグアニル酸など核酸系うま味認識部位は、有機酸系うま味認識部位に比べてフレキシブルな構造になっているため、複数の核酸系うま味を利用することで複雑なうま味として認識されるのでは。
コクの定義「味・香り・食感などの刺激がバランスよく与えられ、持続性や広がりがあるときに感じられるのがコク」
バランス×持続性=コク
辛味や甘味の一点特化ではなくバランスが重要なので、辛いものに苦いものを足すなど全体のバランスの味を整えること、刺激が十分であること(味の重厚感)、持続させるために脂やゼラチン・蒸発で粘性を高めるといった工夫でコクを出すことができる。
コクの受容体の基質はカルシウムであるが、カルシウムそのものがコクとして認識されているわけではない(カルシウムが多いほどコクがあるとは思えない)。
グルタミン酸、システイン、グリシンの3つのアミノ酸が繋がったペプチド、グルタチオンがコク受容体の感度を上げることが分かっている。
システインをバリンに置換したグルタミルバリルグリシンはグルタチオンの10倍の作用があることが分かっている。
Q. 他の1アミノ酸置換したものでは?
A. 味の素がやってるだろう
タマネギ中の植物ステロールが香り成分を保持することが分かっている。
タマネギを加熱濃縮すると香りのコクに繋がる。
植物ステロール、つまり植物油が香り成分を保持し、食事中に徐々に放出されていくため香りの持続性が高まりコクとなる。
MKS「オリーブオイルにニンニクの香りを移すということ」
そのため香味油は香りヨシ、味覚ヨシ、油なので食感としてもコクが加わるということで流行る。
MKS「食べるラー油は揚げタマネギの甘味と食感・唐辛子でバランスを取って、オイルで香りを持続させていたんや」
以上。