「いきなり!ステーキ」のメニュー刷新がネットニュースに取り上げられました。あるフードコートの店舗では9種類のメニューが大きく掲載されています。その中でハンバーグは4種類、チキンは1種類、ステーキは3種、ステーキとハンバーグのコンボは1種と、ステーキよりハンバーグの種類が多くなっていました。「いきなり!ステーキ」ではなく、「いきなり!ハンバーグ」ではないかと不評です(熊田熊男「いきなりステーキがメニュー更新するも ファン「敗北宣言にしか見えない」」しらべぇ2020年9月7日)。
とはいえ、ハンバーグは株式会社ペッパーフードサービスの代表的メニューです。ステーキとハンバーグの二枚看板と言っても良いものです。ペッパーフードサービスの最初の店舗である炭焼ステーキくに両国店にもワイルドハンバーグがあります。ハンバーグも鉄板で焼かれて提供されます。中の方はステーキと同じく火が十分に通っていない状態です。ハンバーグの肉は柔らかいです。ナイフを入れると、肉汁がジュワーと流れ出します。コーンがついています。ライスは大盛無料です。ステーキとハンバーグ300グラムは炭焼きのステーキとハンバーグを両方味わえます。
ハンバーグは、ステーキをガッツリと食べる気がしないという時でも食べられます。フードコートのメニューとしてハンバーグ中心は悪くない選択です。「いきなり!ステーキ」は不景気な話題が続いています。そのために普通のことでも悪く見られる面はあるでしょう。
「いきなり!ステーキ」の不景気な話題として肉マネー廃止があります。ペッパーフードサービスは2020年8月31日、「いきなり!ステーキ」のプリペイドサービス「肉マネー」の使用を2021年12月に終了すると発表しました(「いきなり!ステーキ 『肉マネー(プリペイド機能)』の終了、及び、『肉マネー入金(チャージ)』の停止、『肉マネーギフトカード』販売終了のお知らせ」2020年8月31日)。
プリペイドのメリットは消費者に前払いしてもらえる点ですが、いつか消費者が使うものです。プリペイドに頼ることは問題の先送り、自転車操業に陥りかねません。肉マネーを使い切ろうとする消費者が増えて、肉マネーによる注文が増えて、店舗にとってキャッシュレスの支出が増えたのでしょうか。
もっと深刻な話題にペッパーランチの事業売却があります。ペッパーフードサービスは2020年7月3日にペッパーランチを投資ファンドJ-STARに売却すると発表しました。苦戦が続く「いきなり!ステーキ」に集中することで事業再建を目指します。「一瀬邦夫社長はこれを機にキッチンカーといった新業態で巻き返したい考え」とされます(神田啓晴「ペッパーランチ売却、いきなり方向転換の成算」日経ビジネス2020年7月7日)。
事業売却は6月の時点で報道されていました(若井琢水「ペッパーランチ売却検討 「いきなり!ステーキ」に集中」朝日新聞2020年6月19日)。これには批判的な反応が続出しました。問題児を立て直すために普通の事業を犠牲にすることに矛盾を感じるためです。「いきなり!ステーキ」ブームの成功体験に囚われているのでしょうか。
「いきなり!ステーキ」はペッパーランチに比べると内装などが高級志向であり、コストカットの余地があります。カジュアルにステーキを食べたいならばペッパーランチが勝ります。「いきなり!ステーキ」は逆にワインなどアルコール類で客単価を高めています。
カジュアルにステーキを食べたいというニーズはペッパーランチの方が合っています。ペッパーフードサービスがキッチンカーなどの新業態に取り組む路線ならば、カジュアルなペッパーランチを残して、「いきなり!ステーキ」を売却する方が良いでしょう。
逆に「いきなり!ステーキ」は買い手がなく、ペッパーランチでないと高値で売却できなかったということでしょうか。そうであるとすれば「いきなり!ステーキ」がペッパーランチの良さを取り込んでいくことになるでしょう。このように考えればフードコートの店舗がハンバーグに傾斜することも不思議ではなくなります。
ペッパーランチや「いきなり!ステーキ」の魅力はコスパです。リーズナブルな値段でカジュアルにステーキを腹いっぱい食べられます。ステーキやハンバーグを食べたい消費者に余計なものを出さないという消費者本位の美点があります。値段と味が比例しないコスパの高いチェーン店です。コスパを求める消費者の期待に応え続けて欲しいと感じます。
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肉料理