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No.60 番外編 『パワポによる資料作成の3原則』 当たり前を実践するのが難しい

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  • 人見知りと戦うアナリストの『企業時々人間』分析
  • 2020/03/09 07:32

法人営業を担当する社内の若手に勉強会を開く機会が年に何度かある。人見知りではあるが人前で話すことは決して嫌いではない。そこでよく取り上げるテーマが、すでに紹介した『企業分析に関する3つの視点』に加えて、『パワポによる資料作成の3原則』である。新型肺炎の影響で決算説明会が相次ぎ中止となるなか、勉強会で話している内容のエッセンスを番外編として今回は紹介したい。

『パワポによる資料作成の3原則』は、今日から使える実践的・実務的・実利的な原則である。すなわち、(原則その1)『コメント・図表一致の原則』、(その2)『スライド構成シンメトリーの原則』、(その3)『タテ・ヨコ整理の原則』である。いずれもわたしの経験則にもとづいているが、書店に並んでいる資料作成のハウツー本も、だいたい似たようなルールを勧めているのではないだろうか。古今東西、わりと普遍性のある3原則ではないかと思う。

(原則その1)『コメント・図表一致の原則』とは、「ヘッダー部分のコメントを敷衍するために本体部分の図表は存在することを意識しよう」という原則である。コメントに関係のない図表を載せてはならない。図表はコメントを補足する役割を担う。なお、図表に関して付け加えるならば、円グラフや棒グラフを使用する場合、『スライド1枚につき2つまで』と予め決めておくと良いだろう。それ以上は紙面がどうしてもビジーになる。

(原則その2)『スライド構成シンメトリーの原則』とは、「2つ以上の図表をレイアウトする時には左右上下が対称になることを意識しよう」という原則である。シンメトリーは見た目に美しい。メルセデスベンツのインパネが優美なのは、左右の対称性が徹底されているからであろう(たぶん)。美しさは細部に宿る。面倒と思わずシンメトリーにこだわってほしい。

(原則その3)『タテ・ヨコ整理の原則』とは、「図表に書かれていることを、タテとヨコで項目として抜き出して整理することを意識しよう」という原則である。例えば、『企業分析に関する3つの視点』にもとづいて、担当企業を自分なりに分析した結果を表にまとめるとしよう。タテの項目として、『市場の成長性』、『業界での位置づけ』、『企業における各事業の位置づけ』、またヨコの項目として各事業セグメントの名称をそれぞれ抜き書きしてみる。そのうえで、項目ごとに中身を埋めていくと良いだろう。スライドで表現したい内容が読み手にひとめで伝わりやすくなる。

社内の勉強会では自作のテキストを使って3つの原則を伝えているのだが、それをそのまま掲載するのは差し障りがあるので、3つの原則を反映しているスライドを参考までに1枚だけ添付しておこう。オーガニック化粧品の市場をまとめた資料からの抜粋である。数年前に作成したものだ。

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3つの原則はいずれも「言われてみれば当たり前」。決して大仰な話ではない。しかし、『企業分析における3つの視点』と同様、当たり前のことが日々の業務で完徹できているかといえば結構あやしいのではないか。知識としてインプットしたら、あとはひたすら反復練習して身体に覚え込ませる作業が必要である。

何事にもお手本があると良い。わたしがみなさんにお勧めしたいのが、外資系コンサルのプレゼン資料を『完コピ』することである。それではどうやって外資系コンサルの資料を手に入れるか。「プレゼン1つで6000万円」。ネットで検索すると、外資就活サイトがヒットするはずだ。そこに経済産業省が主要コンサルに発注した調査報告書が掲載されている。 なかでもわたしのお勧めは、アーサー・D・リトルとローランド・ベルガーだ。『トンマナ』(トーン&マナー)がしっかり統一されており、内容もさることながら見た目も美しい。

最後に、『パワポによる資料作成の3原則』の補足事項を3つ記しておきたい。(補足その1)『伝えたいメッセージをはっきりさせること』、(その2)『自分が理解できたことのみ表現すること』、(その3)『余白の美を意識すること』。実はこの3つは相互につながっている。自分の伝えたいこと、理解できたことのみにコンテンツをグッと絞り込めば、できあがったスライドには意味のある余白がおのずと生まれるはずである。文字や図表でスライドをぎっしりと埋め尽くしたい強迫観念に負けてはならない。

パワポによる資料作成に悩んでいる方の一助になれば幸いである。

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  • 人見知りと戦うアナリストの『企業時々人間』分析
  • @kigyoanalyst
金融機関で企業を分析して22年。人並みに社会人だがひきこもりの人見知り。でも人が嫌いなわけではない。むしろ好きである。そんな私が考える企業のこと、人間のこと、みなさんに知っていただけたら幸いです。

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