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第一章  白き者と黒い世界 (ep.17-18)

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  • 2024/09/06 03:06

       17

 

「ここが長老の家だ……。誰にも見つからないようにしないと」

 マブが低く囁く。

 二匹は慎重に家の周囲を調べ、裏手の窓がほんの少しだけ開いていることに気づいた。ティグがそっと窓を押し上げ、中に手を伸ばして閂を外した。音を立てないように注意深く窓を開けると、二匹は素早く家の中に忍び込んだ。

 家の中は薄暗く、重厚な家具が並んでいた。壁には古い絵や巻物が掛けられ、どれも村の歴史や伝説を描いているようだった。ティグとマブは、無言のまま家の中を探索し始めた。

 何か怪しいものがないか、隅々まで探してみよう、とティグが言うと、二匹は別々の部屋へと分かれた。マブは奥の書斎のような部屋に入り、古い棚の引き出しを一つ一つ開け始めた。ティグは大きな寝室に入り、床下に隠された何かがないかと調べていた。

 しばらくして、マブが声を上げた。

「ティグ、こっちだ! これを見てくれ!」

 ティグが急いで駆けつけると、マブは古びた棚の奥から引き出した重厚な箱を手にしていた。二匹は箱の中を覗き込むと、そこには古い書物に紛れて真新しい書類が束になって挟まっている。

「これは……何だ」

 ティグが書類に手を伸ばす。貸して、と言ってマブはティグの手からひょいと書類を抜き取る。それを一枚ずつ机の上に広げ、二匹は一緒になって上から覗き込み、注意深く読み始めた。

 

 

 

 【論文】アドレクサム(Adrexam)の製造プロセスと精神薬理作用に関する研究

 

 要旨

 本研究では、アドレクサム(別称「うさぎの涙」)と呼ばれる強力な向精神薬の製造過程およびその精神薬理作用を分析する。アドレクサムは、生きた子供から採取される視神経血液を主成分とし、特殊な精製過程を経て生成される。本研究は、アドレクサムの生理学的および倫理的側面に焦点を当て、その高い依存性と精神的・肉体的副作用について論じる。

 

 1 はじめに

 アドレクサム(Adrexam)は、その強力な精神刺激作用および高い依存性により、特定の社会層において広く使用されている。特に権力者層においては、支配のツールとしての利用が顕著である。本研究の目的は、アドレクサムの製造プロセスにおける重要な要素と、その作用メカニズムを明らかにすることである。

 

 2 製造プロセス

 アドレクサムの製造において最も重要な要素は、生きた子供から採取される「視神経血液」である。眼球の裏にある視神経に流れる血液は、脳に最も近い部分から抽出されるため、「生命力」を最大限に含んでおり、アドレクサムの効果の根幹を成している。

 

 ㈠ 血液採取の方法

 視神経血液の採取は、極めて高い技術と繊細さを要するプロセスである。この過程では、子供が生きたままの状態でのみ血液を抽出することが必須であり、死亡した場合、その血液は直ちに劣化し、アドレクサムの品質が著しく低下する。視神経血液は、特殊な針と冷却装置を用いて慎重に採取される。

 

 ㈡ 精製と結晶化

 採取された血液は、専用の精製装置により不純物が取り除かれ、その後、低温で結晶化される。結晶化されたアドレクサムは、透明で光を反射する美しい結晶体となり、これが「うさぎの涙」として市場に出回る。この過程で、薬物の純度と効果が最大限に高められる。

 

 ㈢ 粗悪品の生成と流通

 視神経血液の採取に失敗し、死亡した子供から得られた血液は、劣化が早く、アドレクサムとしての品質が著しく低下する。これらの粗悪品は市場で安価に取引されることが多いが、その効果は不安定であり、重度の精神的副作用を引き起こすリスクが高い。粗悪品の使用者は、幻覚や妄想、さらには突然死の危険性にさらされる。

 

 3 精神薬理作用

 アドレクサムの摂取は、脳内の神経伝達物質、特にドーパミンとノルアドレナリンの急激な放出を引き起こす。これにより、使用者は強烈な幸福感と高揚感を経験する。視覚や聴覚が過度に鋭敏化し、世界が異常に鮮明に感じられるのが特徴である。

 

 ㈠ 感情制御と抑制解除

 アドレクサムは感情の抑制を解除し、使用者に強い快感と解放感をもたらす。しかし、これにより理性が失われ、衝動的かつ暴力的な行動を引き起こす可能性がある。この作用は、権力者が他者を支配するための手段として利用されていることが多い。

 

 ㈡ 長期使用の影響

 長期使用は依存を引き起こし、精神の安定が崩壊する。依存症状としては、常習的な使用への欲求が高まり、幻覚、妄想、重度の精神疾患が進行する。中毒状態に陥った使用者は、アドレクサムの効果を求め続け、最終的には精神的および肉体的に破滅へと向かう。

 

 4 肉体的および精神的副作用

 アドレクサムの使用には深刻な肉体的・精神的副作用が伴う。血圧の上昇、心拍数の増加は使用後直ちに発生し、長期使用者においては心臓発作や脳卒中のリスクが著しく高まる。また、血液の粘度が増すことで循環器系に深刻なダメージを与える。

 精神的な副作用としては、睡眠不足による精神錯乱や情緒不安定が顕著であり、現実と幻覚の区別がつかなくなることがある。これにより、重度の精神疾患を引き起こし、最終的には使用者の社会的機能が失われる。

 

 5 結論

 本研究は、アドレクサムの製造プロセスにおける生理学的要素および精神薬理作用のメカニズムを明らかにした。アドレクサムは、その強力な効果と依存性により、使用者に深刻な影響を与えるが、その製造過程には重大な倫理的問題が含まれている。今後の研究では、これらの問題に対する解決策を模索する必要がある。

 

 【参考著】

W. Eldor, T. Matkins. Neural Pathways and Psychoactive Compounds: An In-depth Analysis. Journal of Neuropharmacology, 214(3), 184-199, 2032.

A. Draken, R. Letham. The Extraction of Neural Fluids in Juveniles: Ethical Implications and Pharmacological Use. Ethics in Modern Medicine, 89(2), 120-136, 2029.

G. Haversham, P. Quinlan. Psychoactive Substances in Ritualistic Practices: A Historical Perspective. Cultural Pharmacology Review, 57(4), 332-348, 2035.

M. Strindberg. The Societal Impact of Adrexam: A Psychoactive Dilemma. Sociology of Drugs, 102(7), 412-426, 2031.

J. Karamatsu. Adrexam and Its Role in Modern Societies: A Cross-Cultural Study. Global Mental Health Journal, 67(1), 95-112, 2034.

 

 

 

【国家機密文書】「アドレクサム(別称「うさぎの涙」)の流通戦略と統治国家形成計画」

 

 目次

 1 はじめに

 2 アドレクサムの特性と重要性

 3 主な取引先および流通経路

 ㈠ 都市圏における流通戦略

 ㈡ 研究所施設への供給

 4 うさぎの涙を軸とした統治国家の形成

 ㈠ 統治計画の概要

 ㈡ 宗教との結びつき

 ㈢ ノクタルシアにおけるスラム問題と排除計画

 5 結論

 

 

 1 はじめに

 本計画書は、惑星マグネッツにおけるアドレクサム(別称「うさぎの涙」)の流通およびその戦略的活用により、統治国家を形成・維持するための機密文書である。本計画の成功は、惑星全土における支配の安定化および宗教的権威の確立に寄与するものである。

 

 

 2 アドレクサムの特性と重要性

 アドレクサムは、その極めて強力な精神刺激作用および高い依存性により、特定の社会層において広く使用されている向精神薬である。その作用は、精神の制御を弱め、使用者に対して絶対的な支配を可能にする。本物質は、特に権力者層および富裕層をターゲットに取引され、社会的秩序を維持するための重要な手段として位置づけられている。

 

 

 3 主な取引先および流通経路

 

 ㈠ 都市圏における流通戦略

 アドレクサムの主な取引先として、以下の大都市圏を中心に流通が行われる。

 

【主要都市名】

 ゼノポリス(Xenopolis)― 惑星マグネッツ最大の経済中心地であり、アドレクサムの主要な市場である。ゼノポリスでは、富裕層および権力者層に向けた取引が盛んに行われ、秘密裏に取引が行われる専用の施設が存在する。

 ノクタルシア(Noctarcia)― マグネッツ東部に位置する都市で、夜間経済が発展している。ここでは、娯楽産業と結びついたアドレクサムの流通が行われており、特に高級クラブや秘密集会において消費されている。

 

【流通方法】

 オークション―主要都市の地下オークションにおいて、アドレクサムは富裕層向けに取引される。これらのオークションは高度なセキュリティの下で行われ、取引内容は厳重に管理されている。

 限定供給ルート― 特定の信頼できる仲介者を通じて、都市内の上層部にのみ供給される。この供給ルートは厳密に管理され、情報漏洩を防ぐための対策が講じられている。

 

 

 ㈡ 研究所施設への供給

アドレクサムはまた、惑星マグネッツの研究機関(研究施設都市「アークゼル(Arkzel)」)にも供給されており、その用途は以下の通りである。

 

【主要研究施設】

 サイバーソルス研究所(Cybersource Institute)―精神薬理学の研究を主導しており、アドレクサムの作用メカニズムを解明するための実験が行われている。

                                          ――研究総責任者サムラ

 

 ノヴァマインド研究センター(NovaMind Research Center)―精神刺激薬としての応用研究が進められており、軍事および民間利用の両面からの開発が行われている。

                                          ――研究総責任者サトリ

 

 

【供給方法】

 研究用サンプル―研究所には、品質の高いアドレクサムが供給され、その効果や応用可能性についての研究が進められている。研究結果は機密情報として扱われ、軍事的利用も視野に入れた開発が行われている。

 

 4 うさぎの涙を軸とした統治国家の形成

 ㈠ 統治計画の概要

 アドレクサムを中核とした統治国家の形成は、惑星マグネッツ全土における社会的支配を目的としている。本計画は、アドレクサムの依存性を利用して、支配階級および特定の集団を意図的に薬物依存状態に陥れることで、その支配を強化するものである。

 

【戦略的目標】

 権力の集中―アドレクサムを使用することにより、使用者が心理的に支配者に従属する状態を維持し、権力の集中化を図る。

 統治層の強化―アドレクサムの依存性を利用して、特定のエリート層を支配下に置くことで、支配層の強化と体制の安定化を実現する。

 

 ㈡ 宗教との結びつき

 アドレクサムは、宗教的儀式や集会においても重要な役割を果たしている。特定の宗教指導者がアドレクサムを「聖なる物質」として扱い、信者たちに対してその使用を促すことで、宗教的支配を強化している。

 

【計画の詳細】

 宗教儀式での使用―アドレクサムを宗教儀式において神聖視し、その摂取が「啓示」や「神の恩寵」を受ける手段であると教え込む。

 信者の支配―アドレクサムの依存性を利用して、信者たちを無自覚のうちに宗教指導者の支配下に置き、その影響力を拡大する。

 

 ㈢ ノクタルシア統治強化およびクルクタウン再開発計画書」

 

 1 計画の目的

 本計画の目的は、ノクタルシア全域における統治強化およびクルクルタウンの再開発を通じ、惑星マグネッツ全体の安定を図ることである。これには、アドレクサムの供給安定化、スラム地域の排除、内部紛争の誘発によるスラム街の自滅を含む。

 

 2 スラム排除計画

 ステップ1 ― 粗悪品の流通「偽装アドレクサムの製造」

 

 統治局は、クルクタウンのスラム地域(クルクタウン北地区、通称「カロウクスラム」)において、粗悪なアドレクサムを製造・流通させる。この粗悪品は、品質の低い原材料を使用し、製造過程で意図的に不純物を混入させたものとする。

 

【粗悪品の流通経路の確立】

 カロウクスラム内の密売人を介して、偽装アドレクサムを高品質品として流通させる。これにより、スラム内での使用者間での争いが激化し、内部崩壊を促進する。

 

 ステップ2 ― 内部紛争の誘発「品質への不信」

 粗悪品の流通により、スラム住民間での品質に対する不信感が増大し、対立を煽る。これにより、スラム内での暴力事件や派閥争いが発生し、統治局による排除計画を容易にする。

 

「反乱分子の孤立」

 スラム内での対立が激化することで、反乱を計画する者たちは孤立し、住民からの支持を失う。これにより、統治局の干渉なしにスラム内での自滅が進行する。

 

 ステップ3 ― 強制的な再開発

 カロウクスラム全域を強制的に再開発し、現住民を他地域に移住させる。スラム地域を一掃し、その土地を新たな経済拠点として再利用する計画を立案する。

 

 再開発後、アドレクサムを新たな住民層に再導入し、統治の強化を図る。これにより、新たなエリート層を形成し、クルクルタウンの再発展を促進する。

 

 5 リスク評価と対応策

【リスク評価】

 情報漏洩のリスク―排除計画や粗悪品流通計画が外部に漏洩するリスクが存在する。

 スラム住民の反乱―排除計画に対する住民の反発が予期される。

 経済的・社会的混乱―スラムの再開発が失敗した場合、ノクタルシア全体の経済や治安が悪化する可能性がある。

 

【対応策】

 情報管理 ― 取引先や供給ルートにおいて、厳密な情報管理体制を敷き、情報漏洩を防ぐ。

 強制力の行使―反乱の兆候が見られた場合、軍事力を用いて迅速に鎮圧する。

 経済支援 ― 再開発に失敗した場合には、迅速な経済支援を行い、影響を最小限に抑える。

 

 6 結論

 アドレクサムを中核とした惑星マグネッツの統治国家形成計画は、その独特な作用と流通戦略を駆使することで、持続的な支配体制の確立を目指している。本計画では、クルクタウンのスラム地域「カロウクスラム」の排除と再開発を含む包括的な戦略を展開し、都市全体の安定と統治の強化を図ることが求められている。

 

 機密レベル―極秘(閲覧制限・国家上層部のみ)

 

 

 

 

【機密文書】「アドレクサム供給安定化のための協力契約書」

【契約書番号】0087-XA-MG

【発効日】2034年8月20日

【契約締結者】

第一当事者 惑星マグネッツ中央統治局

第二当事者 炎虎村(Ent la Village)

代表者 エルダー・ド・トラファン(Elder de Gorfan)

 

 前文

 本契約書は、アドレクサム(別称「うさぎの涙」)の供給安定化および持続的な流通を実現するため、社会的立場の弱い地域である炎虎村と惑星マグネッツ中央統治局(以下「統治局」)との間で結ばれる協力契約である。両当事者は、以下の条件に基づき、本契約を締結する。

 

 第1条 契約の目的

 本契約の目的は、アドレクサムの安定的な供給を確保し、富裕層および権力者層への供給を持続可能とするために、炎虎村がアドレクサムの製造および関連活動に協力することである。

 

 第2条 村の協力内容

【原材料の供給】

 炎虎村は、アドレクサムの製造に必要な原材料の提供に協力する。具体的には、視神経血液を含む特殊成分を安定的に供給するため、適切な資源を確保し、統治局に引き渡す。

 

【人材の提供】

 炎虎村は、アドレクサムの製造および関連作業に従事するための人材を統治局に提供する。これらの人材は、製造過程において必要な技術と知識を持つ者とする。

 

【製造施設の設置】

 統治局は、炎虎村内にアドレクサム製造施設を設置し、村の協力を得て運営する。村は、施設の安全と稼働のために必要な支援を行う。

 

 第3条 中央統治局の義務

【種の存続の保証】

統治局は、炎虎村が本契約に基づき協力する限り、その村および住民の種の存続を保証する。また、村の安全と繁栄を保つための保護措置を提供する。

 

【経済的支援】

 統治局は、炎虎村に対して定期的な経済的支援を行い、村の発展と生活水準の向上に寄与する。

 

【教育および医療の提供】

 統治局は、炎虎村における教育および医療施設の充実を図り、村民が持続的に健康で文化的な生活を送れるよう支援する。

 

 第4条 供給に関する規定

【供給の優先順位】

 本契約に基づく供給は、富裕層および権力者層への安定的供給を最優先とする。供給量が不足する場合、炎虎村は速やかに追加の協力を行う義務を負う。

 

【品質管理】

 提供される原材料の品質は、統治局が定める基準に従うものとし、村はその品質を維持するために必要な措置を講じる。

 

 第5条 秘密保持

【機密情報の管理】

 炎虎村およびその住民は、本契約に関連するすべての情報を機密とし、第三者に漏洩してはならない。違反が発覚した場合、統治局は厳正な措置を講じる権利を有する。

 

【監視体制】

 統治局は、契約内容の履行を監視するための体制を整備し、定期的に村の状況をチェックする。必要に応じて、追加の監視措置が講じられる。

 

 第6条 契約の解除

【契約不履行】

 炎虎村が本契約の義務を履行しない場合、統治局は契約を即時解除する権利を有する。その場合、統治局は村に対するすべての保護および支援を停止し、必要な制裁を行う。

 

【相互合意による解除】

 両当事者が合意した場合、本契約は相互の同意により解除されるものとする。その際、契約解除に伴う影響を最小限に抑えるための措置が取られる。

 

 第7条 紛争解決

【紛争の解決】

 本契約に関する紛争が発生した場合、当事者はまず友好的な協議を通じて解決を図るものとする。協議が不調に終わった場合、惑星マグネッツ中央裁判所の管轄に従うものとする。

 

 第8条 その他の規定

【契約の修正】

 本契約は、当事者の合意に基づき修正されることがある。修正が行われた場合、その内容は本契約書に追加されるものとする。

 

【言語】

 

 本契約書は、惑星マグネッツの公用語で作成され、当事者双方が理解できる形式で提供される。

 

【署名】

 第一当事者

 惑星マグネッツ中央統治局

 署名____________________

 日付____________________

 

 第二当事者

 炎虎村

 署名 トラファン

 日付 ___________________

 

 

      18  

 

 そこに書かれていたのは、「うさぎの涙」と呼ばれる精神刺激薬に関する詳細な記述だった。さらに、その製造方法や流通経路などが記されており、ティグやマブが知らない別の街のことが書かれている。

「これは……」

 ティグは息を呑んだ。

 その文書には、村の子どもたちがどのように利用され、彼らの命を犠牲にして「うさぎの涙」が製造されるかが克明に記載されている。

「こんなものが、ずっと長老たちによって?」

 マブは震える手を抑えるようにグッと拳を握りしめた。

「これは村のみんなに知られたら大変なことになる……」

 でも、とティグは続けた。

「このことが本当なら明らかにしないと。もし消えた子どもたちが犠牲になっているのだとしたら……」

 ティグの声には、震えてはいるがどこか決意が込められていた。

 二匹は文書を箱に戻し、できるだけ元通りにして棚にしまった。家を出る前に、何も見つからなかったかのように慎重に手がかりを隠した。そして、素早く家から抜け出し、村の広場へと戻ってきた。

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