まずは 「考えるとは、どういうことか」 から。
思う・・・ 感情、感覚、瞬間の判断
考える・・・分析的、理性的、筋道を立てる
考えが不十分、不適切だとこんな問題が・・・
・原因の掘り下げが不十分なために同じ問題が繰り返し発生している。
・よく考えて整理していないために相手に自分の言いたいことが伝わらない。
・考えるべきことが的外れでよい結論が出ない。
「物事を適切な方法で十分なレベルまで考える」のに役立つのが
今回のテーマ。「考える技術」である「ロジカル・シンキング」。
効用は
・感情や感覚に流されず、自分の頭で客観的に筋道を立てて考え、正しい結論を導くことができる。
・効率的な問題発見や問題解決ができる。
・斬新な発想ができたり、これまでは見落とされていた機会や脅威を発見できたりする。
・相手の言いたいことをより的確に理解したり、自分の主張をより説得力をもって伝えられたりすることで、効果的なコミュニケーションができる。
ベースの心構えがあり・・・
「当事者意識をもつ」 「言葉づかいにこだわる」 「ねばり強く問い続ける」
そのうえに、方法論。
「目的を押さえる」、「枠組みを決める」、「正しい論理展開をする」
そして応用、実践として
「客観的に筋の通った正しい結論を導く」
「効率的に問題発見や問題解決ができる」
「見落とされていた機会や脅威が発見できる」
「相手を的確に理解し、自分の主張に説得力をもたせられる」
という積み上げ構造になっています。
「じぶんごと」として「限られた情報をこの状況でどう解釈し、今どういうことを決めて、どういう行動を起こすべきか」という、中途半端ではない切迫感、熱い思いがないと思考は深まらない。
たとえ自分とは直接関係のない事柄でも、「自分だったらどう考えるか、どういうアクションを起こすか」と、日頃から自分自身に問いかけて思考を鍛える。
1、思考停止の「ビッグワード」に逃げない。
抽象語、あいまいな表現のこと。例えば、サービス/付加価値/組織の活性化/ソリューション/差別化/戦略/ソフト/見直す/整備する/検討する/再構築する/生産性を上げる など、の人や状況によって、内容や解釈に幅がある言葉。
↓
言葉をきちんと定義して周囲の人たちと認識を合わせる、それはどのような状態なのかまで具体的に落としこむ、あるいは、5W1H レベルまで明確にする。
2、「主語、述語、目的語を明確にする」
論理の基本単位は「主語と述語の組み合わせからなるひとまとまり(主張、論旨)
↓
例えば、「組織の問題は何?」→「コミュニケーションです」では不足。
どの範囲の話か、誰との話か、量なのか、質なのか。などを明確に。
3、「ねばり強く問い続ける」ための4つの問い
・Why? を5回繰り返す。
もっともらしい原因が出てきても、さらになぜ?なぜ?と何度も、あきらめずに問いを繰り返し、より本質的な解決策にする。5回の Why? を繰り返す。
・So What?
一見、自分とは関係あるとは思えない事象であったり、情報がほとんどなかったりしても、そこであきらめて思考をとめるのではなく、そこから何が言えそうか、だから何なのか( So What? )という問い(解釈)を繰り返し、「仮説 」を作っていく。
「仮説」とは・・・「限られた時間や情報の中で、最大限の想像力と論理を駆使して考えられるもっとも確からしい、判断やアクションにつながる仮の結論」のこと。
・True?
常識的な情報や権威と目されているような人の意見などもうのみにしないで、True? (本当か?、現在でもそれは当てはまるのか?)と疑ってみること
・Others?
1つの理由や根拠で満足しないで、Others? (ほかにないか? それだけか?)と幅広く探ってみるという「問い続け」
ここが甘いとおこる問題は・・・
・会議などで話がかみ合わなかった。
・論点と関係ないことで時間を使ってしまい、議論が進まず、結論が出せなかった。
・上司や顧客に「それは私の聞きたいことではない」などと言われた。
これらのほとんどは、「今何を考えるべきか」「今何を論ずべきか」「ここで解決すべきことは何か」をきちんと押さえていないことが原因です。
途中で混乱、脱線したときも「ここでの目的は何だったか」に立ち返って軌道修正し「目的を押さえ続ける」ことで、目的に沿ったコミュニーケーションが成立します。
「問い」に落とし込む。
主論点「考え、論ずべきこと」は疑問形にすると思考が深まり答えやすくなる。例えば 研究開発体制の問題について よりは 研究開発部門の意思決定が遅いのはなぜか? というように、具体的な、良い問いに落とし込む。
「よい問い」のポイント3点。
・具体的にどう答えればよいかのイメージがしやすい(みんなで意識が共有しやすいもの)。
・それを考えれば仕事が前に進む、優先順位が高い内容(考える意味があるもの)。
・伝えたい相手が聞きたいもの(ターゲットの関心事・懸念点を押さえたもの)。
主論点の設定「考える目的地図」を描いてみる
全体の流れは 大枠/抽象→細部/具体、問い→解決 へです。論点の適切な設定には、上記の流れが順番通り踏めているか、今どの象限か意識しながら、俯瞰して全体像をとらえる。
「これを考える前に、考えなくてはならないことはないか?」あるいは「これを考えるのはなぜか?」という問いで、一度順番を逆に引き戻して確認する。
■ 枠組み/切り口 を決める 何について考えるのか?
「どのような項目(群)について考えると、目的を果たすことができるのか」という、適切な「項目のセット」を考えることを「思考の枠組み」といいます。
ポイントは、「それを判断をするうえで考慮すべき点」と「その主張をするうえで必要十分な項目(群)」が押さえられているかです。
例えば、
ダイエットなら インプット(摂取)と、アウトプット(消費)という枠のセット。
企業や製品の比較検討なら
Q( Quality:品質)C( Cost:コスト)D( Delivery:納期)という枠のセット。
枠組みを考えるときに陥りがちな「習性」3つ。
1.全体像把握不足
いきなり細部の項目を決めたり、思いつきでリストアップしたりというように、物事の全体像を広くとらえていない。
【防ぐための自問】
自分は巨大な象の一部しか見ていないのでは?
今、自分がとらえている範囲は、もっと大きな全体像の一部分にすぎないのではないか?
2.一点豪華主義
1つの可能性や要因を考えたらそれだけで満足してしまい、ほかのいろいろな可能性や別の要因をゼロベースで複数考えていない。
【防ぐための自問】
「目的を果たす(理想的な状態)にはどんな条件がそろっている必要があるのか?
この要因だけを満たせば本当に理想的な状態になるのか?
3.自己中心主義
自分に都合のよい項目(群)や切り口で主張を組み立ててしまい、コミュニケーションの相手側(反対側)から見て押さえるべき項目を無視している。
【防ぐための自問】
自分は徹底的に相手(反対側)になりきって見ているのか?
聞き手や読み手だとすると、どのようなことに興味関心、懸念があるだろうか?
問題の枠組みはMECE=「モレなくダブりなく」
「モレなくダブりなく」 という意味のMECE とは、
Mutually (お互いに)
Exclusive (ダブりがなく)
Collectively (全体として)
Exhaustive (モレがない)の略。
複数の要素に分解し、枠組みを探す術です。
重要な点を見落としたり(モレがあったり)、同じことをダブって考えたりすれば、効果的・効率的な問題解決や納得感のある説明につながりません。
所謂ビジネスフレームワークという定番の形がいくつかあります。
代表的なタイプは以下。
とはいえ完璧なMECEにすることは難しい場合もあるし、そもそもそれ自体が「目的」ではありません。7~9割の人が見て妥当と思い、活用に耐えられれば十分です。大切なのは実用性です。
MECEの切り口をたくさん出すための4WX (ダブリューエックス)
What = 何を (対象物に着目)
Who = だれが (人に着目)
When = いつ (時間に着目)
Where = どこで (場所に着目)
X = ×÷などの変数
という大枠から、それぞれについて詳細を出していく。
例えば 花屋なら・・・
What
事業別(販売事業/スクール事業)
[販売事業にかぎり]
花のジャンル別(生切り花/ドライ/プリザーブド/鉢植え)
花種別、花の長さ別、花の色別、
花のアレンジタイプ別(切り花/花束/ブーケ)、
価格帯別、用途別(日常花、仏花、ギフト用)、…
Who
[お客]
個人/法人、性別、年齢別、職業別、年収別、家族構成別、来店所要時間別、…
[店員]
性別、年齢別、既婚/未婚、経験年数別、花関連保有資格別、…
When
月別、曜日別、休日/平日、天気別、季節別、時間帯別、…
Where
店舗別、地域別、競合店立地状況別、店舗規模別、立地特性別(郊外店/都心店)、…
X
客1人当たりの単価×客数、店員1人当たりの売上高×店員数
■ 効果的な切り口は?
どの切り口が問題解決やコミュニケーションに役立つかを探る。
「最近は仏花を買う人が減っているのではないか」「近隣のライバル店が影響しているのではないか」などの「仮説」から効果的な切り口を想像する。
物事を MECE で分けている目的は、「重要でないところ」「問題でないところ」を「捨てる(見ない)」=「問題個所のみを拾い出す」「問題点を絞り込む」こと。
ある部分に問題が集中している個所が見つかれば、一網打尽 にしたり、重要な部分を浮き彫りにしたりできる、切れ味のよい切り口といえる。
前編は、心構えと考え始めるための準備についてでした。
後編は、いよいよ実践です。