■3TIPS
・ベースはgoogleの研究した「効果的なチーム」のためのロジック。「誰がチームのメンバーであるか」よりも「チームがどのように協力しているか」が重要。
・安全=ヌルい ではなく、目標達成のために生産的で健全な衝突がおこる土壌。率直な意見や素朴な疑問、そして違和感の指摘がいつでも、誰でも気兼ねなく言える環境であることが大事。
・日本の組織では「話しやすさ・助け合い・挑戦・新奇歓迎」という4つの因子がキーになる。
・「責任」と「心理的安全性」マトリクスで4象限に分けて考える。
・無関心ゾーンでは、リスクを冒してまで他人と関わろうとしない、事なかれ主義の「サムい職場」になる。
・不安ゾーンは「キツい職場」。ここではメンバーは罰を避けるために努力することになる。
・ぬるま湯ゾーンは、「ヌルい職場」。目的意識を持てず何もしない。
・学習ゾーンでは、メンバーは健全な衝突を起こし、多様なアイデアを効果的に活用することができる。このような職場では、離職率が低く、収益性も高くなる。
■心理的安全のためのアプローチ
・変えやすい順に3点
●「行動・スキル」- 一つ一つの行動を変えチームが変わる。その土台が「その時々に応じて、本質的に役に立つことをする、心理的柔軟なリーダーシップ」だ。「困難と変えられないものをマインドフルに見分け受け入れたうえで、明確に言語化された大切なことへ向かい、変えられるものに取り組む」「大切なこと」
●「関係性・カルチャー」- 「自分物語」に固執していると心理的柔軟性は失われる。私視点の「物語としての私」ではなく「私=世界を眺めているカメラ」という「観察者としての私」の視点を持つ。
●「構造・環境」ー 組織構造や意思決定プロセスなどが含まれるため変革は難しい。現在の心理的安全性の度合いは、組織やチームの歴史が積み重なった結果である。メンバーが不安や罰を避けるために意見を言わないのだとしたら、それが染み付いてしまっているカルチャーだ。
■人の「行動」は「きっかけ」と「みかえり」によって制御される。
行動の結果、良いみかえりがあればその行動は増え、悪いみかえりがあればその行動は減る。この考え方を用いると「個人攻撃の罠」を避けることができる。
「彼はやる気がない」といった個人の内面を責めるような発言の中身は、じつは「やる気」という言葉で具体的な複数の行動に「ラベルを貼っている」にすぎない。しかし、そうして内面を責めたところで、行動の変容にはつながらない。
本人や周囲がアプローチできる、行動の「きっかけ」と「みかえり」にフォーカスを当てて、行動に影響を及ぼすことを考えた方が健全だ。
(言葉による)未来の「みかえり」は、行動分析学でいうところの「ルール支配行動」という強制力を持つ。そのルールへの従い方は
「言われた通り行動」
「確かにそうやな行動」
「そんな気してきた行動」
の3種類に分かれる。
「言われた通り行動」とは、ルール通り行動し、行動そのものからみかえりを得るのではなく、「ルールを守ったことを称賛される」というみかえりを得るものである。ルールを定めた人の顔色をうかがうことになり、この行動が多いチームは心理的「非」安全なモードに陥りやすい。
「確かにそうやな行動」は、ルール通り行動し、行動そのものから「みかえり」を実感しているものだ。そのため、ルールが機能していない場合は、自分で修正を試みるといった心理的柔軟性を発揮しやすくなる。
「そんな気してきた行動」のみ「みかえりの力を変える」効果がある。
例えば、仕事を楽しむ人には、すでに「仕事自体が楽しい」という行動のみかえりがある。加えて、評価の言葉があれば「みかえりの力が上がる」ことになる。逆に、「その仕事は重要でない」と心ない言葉をかけられたら、その人は仕事が楽しくなくなってしまうことになるだろう。このように、みかえりの持つパワーを増強・減退させるのが、「そんな気してきた行動」の「言葉のルール」だ。
■リーダーから始める、心理的安全性
現在、チームに心理的安全性が足りないとしたら、リーダーから率先して行動を変えてみよう。そのためのアイデアのひとつが「感謝から始める」ことだ。最も伝えることが簡単で、かつエンゲージメントにも効くと考えられる「理由をつけて感謝を伝える」ためには、3つのステップがある。まずは、「いつ・どんな時に、誰が、何をしてくれたのか」を具体的に思い出す。次に、「私にとって、それは何がありがたかったのか」を掘り下げる。そして最後に「実際に伝える」ようにする。
これを実践しようとすると、普段からメンバーを気にかける必要があることに気がつくはずだ。これをきっかけに、あなた自身が、メンバーをよく見ている良いリーダーに変わることができる。
■「ホウレンソウ」よりも「ザッソウ」(雑談と相談)
雑談と相談を一緒にすることで、創造性が求められる仕事を、気軽に相談しながら進めていけるチームをつくるためのコンセプトである。
■「サムい」組織の理不尽を増幅するディスコミュニケーションの論理 2点
・「情報の非対称性」
人は、自分の課題を他人も把握していると勘違いしがちだ。もしくは、把握していてほしいという願望に基づいて行動する傾向にある。
・「限定合理性」
個人の認知能力には限界がある。そのため、限られた範囲でしか合理的な行動がとれないケースが生じる。
以上2点はいずれも、意識しなければコミュニーケーションを歪ませ、組織におけるすれ違いと理不尽の増幅装置となってしまう。
■ 機能させるための3観点
・チームの目標がはっきりしている
よって立つための指標として、明確な意思と行動が必要になる。
・プライベートなことも共有している
お互いの多面的な部分を知れば心理的安全性は高まる。上司から率先してプライベートの一面を見せることで、メンバーも自己開示しやすくなる。上司はこれも仕事のうちだと割り切って、自己開示に取り組むのが望ましい。
・判断基準と価値観を共有している
組織と個人で対話をもち、フランクさと敬意を忘れず、共感と肯定を大事にしたうえで合意形成された共通の基準があれば、誰もが安心して踏み込んだ発言がしやすくなる。
効率化を進めていく中で、チーム内のゆとりがなくなり、息苦しい職場になってしまったという経験はないだろうか。効率化によって成果は上がっていても、その状態を放置したままだと、やがてチームが崩壊してしまう恐れがある。それはなぜか。
人間関係が希薄なチームは、仕事の情報共有はしていても、成果に直結しない話をする余裕がなく仲間がどんな人たちなのかを知る機会もないままだ。組織が経済合理性だけを求めていると、そこで働く人も経済合理性だけを求めることになる。
すると、従業員の自社への愛着が育たず、他にもっと条件の良さそうな会社があれば簡単に転職してしまう。
あるいは転職しなかったとしても、そのようなチームは、誰かが困っていても手を差し伸べないし、困ったときに他人に話しかけることをためらってしまうだろう。
相談できないと、聞けば一瞬でわかることがわからず、ミスしたとき大きな手戻りが発生し、チームの生産性が下がる。そのほか、チームで働く意義が感じられない、弱みを見せることができない、新しいことに挑戦しなくなるなど悪影響を及ぼす。
報告と連絡は過去の出来事の共有である。未来に向けた発展的な議論、たとえば、新規事業のアイデアを出したいときやチームワークを高めたいときには不充分だ。
締め切り直前までねばった末の、完全さを求め、求められての相談は、発展性と柔軟性にかけ時に遠回りとなる。進行段階でフォローできれば補い合うことで組織としてのパフォーマンスを発揮しやすい。
以下の問いに対してポジティブである。
・質問①:「チームの中でミスをすると、たいてい非難される」
・質問②:「チームのメンバーの間で、課題や難しい問題を指摘し合える」
・質問③:「チームのメンバーは、自分と異なることを理由に、他者を拒絶することがある」
・質問④:「チームに対してリスクのある行動を取っても安全である」
・質問⑤:「チームの他のメンバーに助けを求めることは難しい」
・質問⑥:「チームメンバーは誰も、他人の仕事を意図的におとしめるような行動をしない」
・質問⑦:「チームメンバーと一緒に仕事をするとき、自分のスキルと才能が尊重され、活かされていると感じる」
■手法①:発言機会を均等に与える
メンバーは自分の意見を自由に言えてこそ、心理的安全性が高いチームだと感じることができます。しかし実際には、チームの中で特別優秀なメンバーや目立つメンバーの意見の方が優先され、他のメンバーの意見が軽視されるというケースがあります。心理的安全性を高めるためには、上司が誰か特定の人の意見ばかり優遇するのをやめ、全てのメンバーが発言できる機会を均等につくりましょう。
会議で対等に意見を出しやすくする手法の一つに、「ラウンドロビン方式」があります。これは、付箋紙に参加者全員が意見を書いた後、一人1枚ずつ順番に内容を読み上げながら付箋紙を貼り出していき、同様の意見を持っている参加者の近くに貼る、という流れを繰り返す方式です。一方で、会議の場に慣れていないと意見を出すこと自体が難しい場合もあるため、会議前に参加者へ個別に話しかけ、あらかじめ意見を考えてもらったり、開始前にアイスブレイクの場を設けたりするなど、事前の準備も行うとよいでしょう。
常にメンバー同士の間で競争が求められていると、リラックスして仕事をすることは難しいかもしれませんが、逆に「困ったときは誰かに助けてもらえる」と感じられれば、安心して仕事ができます。そのため、上司は心理的安全性を高めるために、メンバー間の競争よりも協力を促す必要があります。一人ひとりにわからないことやできないことがあるのは当然のこととして考え、相互に協力し合えるチームを構築しましょう。また、各自が仕事の目標や成果を公表し、互いの業務の「見える化」を行うことで、信頼関係をより強固にすることも、メンバー間の協力を促す上では重要です。
見つかった課題や起こった問題への反応がネガティブなものばかりでは、必要以上に周囲を気にするようになるため、前向きに仕事に臨むことが難しくなります。しかし、言い方や考え方を少し変えるだけで、物事をポジティブに捉えることができるようになる効果が期待できます。心理的安全性を高めるためには、上司を含めたチーム全員がポジティブな受け答えや振り返りをするように意識しましょう。そのためには、一人ひとりの意識改革も重要です。
上司と部下の信頼関係も、心理的安全性を高める上では重要な要素の一つで、そのためには上司がメンバー一人ひとりの存在や意見を尊重する必要があります。たとえば、目の前にいるメンバーを一人の人間として承認する、相手の目を見て会話をする、価値観の多様性を認める、否定・批判ばかりせずにサポート役に徹するといったことが挙げられます。これらを行うことにより、「自分はチームにとって必要な人間だ」「自分のことを上司はわかってくれている」とメンバーが認識し、心理的安全性が維持しやすくなるでしょう。
メンバー一人ひとりの目標や成果を確認するため、1on1で上司と部下との対話を実施している企業もあります。上司に自分の意見を話せる場である1on1をうまく活用することで、心理的安全性を高める効果が期待できます。部署や期間を限定せず全社的に頻繁に行うことで、1on1がチームに根づくでしょう。業務内容についての話だけにとどまらず、質の高い雑談をしてメンバーの価値観を知ることが心理的安全性を高める上では重要です。上司から、相手が質問したくなるような雑談をしてみたり、「Yes」「No」では答えられない「オープンクエスチョン」を投げかけたりすることで、1on1の時間がより価値のあるものとなり、心理的安全性を高めることにつながります。
仕事をする上で、適度な緊張感を持つことはある程度必要ですが、あまりに職場の雰囲気が張り詰めていると萎縮してしまい、本音を言えないメンバーも出てきてしまうでしょう。心理的安全性を高めるためには、時折メンバーの緊張を解き、腹を割って話せるきっかけをつくる必要があります。日常的に実施しやすい方法の例として、会議などを始める前に、自分の内面が伝わるような「自己紹介」やメンバー同士を紹介し合う「他己紹介」、簡単なゲームをするといったアイスブレイクの時間を設ける方法が挙げられます。また、メンバーにとって精神的負担がかからないようであれば、飲食をしながらミーティングをしたり、仕事終わりに飲み会を開いたりするのもよいでしょう。
新入社員や中途採用の社員、異動したばかりの社員など、チームにとっての「新人」は、新しい環境や業務に馴染むまで何かと不安を抱えがちです。不安を抱えていることで、自分の能力を十分に発揮できないケースもあります。新人にとっての心理的安全性を高めるためには、チーム全体で新人をサポートすることが重要です。たとえば、OJTを中心とした新人教育、ブラザー・シスター制度やメンター制度によるメンタルケア、1on1での定期的なフィードバックなどが挙げられます。
(参照:『OJTとは?メリットデメリット、やり方、手順を徹底解説【受け入れシート付】』『ブラザー・シスター制度は早期離職防止に効果アリ?OJT・メンター制度との違いとは』『メンター制度導入のメリット・デメリットとは。 押さえておきたい制度運用のコツも解説』)
個人の成果に基づいてメンバーをランク付けする評価方法は「ミスができない」「周囲の人の成功が気になる」といった点で、安心して仕事ができないケースも考えられます。そのため、心理的安全性を高めるためには、思い切って評価方法を見直してみるのも効果的です。個人評価の代わりにチーム・プロジェクト単位で評価する、あるいはメンバーのランク付けをしない代わりに定期的な1on1の場で評価や振り返りを行う「ノーレイティング」を実施する、といった方法が挙げられます。
(参照:『ノーレイティングとは「ランク付けしない」新たな評価制度。事例や導入方法を解説』)
日本の企業の多くは、管理力や統率力を重視したトップダウン型の組織形態です。そのような組織では、現場で働く社員が自分の本音を上層部伝えることは難しいでしょう。心理的安全性を担保するために組織を変えるのは容易ではありませんが、役職や年齢、雇用形態に関係なく全てのメンバーが対等な立場で意見交換ができるような風通しの良い組織をつくることが重要です。
さまざまな方法を試してみても、チームの心理的安全性が担保できない場合は、メンバー同士の相性に問題がある可能性があります。チーム内の人間関係が良くなければ、いくら上司が心理的安全性の高いチームを構築したいと思っていても難しいでしょう。もし、なかなか心理的安全性が向上しなければ、チーム編成の見直しを行ってみましょう。チーム編成を変えることで、メンバー間のコミュニケーションの円滑化が期待でき、心理的安全性を担保しやすくなります。
■参考文献
・エイミー・C・エドモンドソン 「チームの心理的安全性」
・石井遼介 「心理的安全性のつくりかた 心理的柔軟性が困難を乗り越えるチームに変える」
・倉貫義人 「ザッソウ 結果を出すチームの習慣ーホウレンソウに代わる雑談+相談」
・パーソルキャリア 「Google流、生産性を高める方法を取り入れるには」