今回は、仮想通貨(暗号資産)版の預金口座・貯金口座に該当するプロジェクトを紹介してみたいと思います。
この記事を執筆している最中、「預金口座の維持のため手数料をとることを検討」しているというニュースを見てついに預金してるだけで手数料を取られるという、マイナス金利の時代に突入していくような動きもみられ、日本円や米ドルなどの法定通貨による貯金や現金に対する見方やが今後大きく変わってくる兆しが感じられました。
(参考:預金口座に手数料検討の動き マイナス金利で収益悪化も背景に)
そんな中、米ドルとほぼ変わらない値動きをする仮想通貨(ステーブルコイン)にもかかわらず、年率7%を超える金利が稼げる仕組みがあると聞いたら、皆さんどうお感じになりますでしょうか。
仮想通貨のDAIは、イーサリアムのスマートコントラクトの仕組みを活用した、分散型金融(Decentralized Finance、略してDeFiと呼ばれます)を主導するようなプロジェクトになり、この仮想通貨や世界経済の停滞の中でひそかに注目を集めているんです‼
今回はこのDAIを取り巻く環境やDAIを支えるMakerの仕組みを、仮想通貨初心者でもわかるようにわかりやすく解説していきたいと思います🐱
目次
1.そもそもそんなに流行ってるの??
2.ステーブルコインって??
3.MakerとDAIの関係
(補題1)使ってるのはイーサリアムのスマートコントラクト
(補題2)DAIの価格を安定させる様々な価格安定メカニズム
(補題3)Makerトークンの役割および価格上昇の可能性
4.実際にDAIを預け入れたい場合は?金利7%って本当?
5.支払っているのはリスクプレミアム(注意喚起)
冒頭、分散型金融=DeFiが注目を集めていると述べましたが、2019年は特にブロックチェーン技術を使った金融システムを活用するプロジェクトの乱立という流れ・流行があったように感じています。
一例を挙げると、DeFi Pulse(ディファイ・パルス)というサイトでは、どの程度の価値分の米ドルがDeFi関連でロック(≒”預入れ”の意味)されたかの統計をとっていますが、ここ1年間うなぎ登りで預け入れされている金額が増えており、2019年9月現在、5.94億ドル(=600億円超)の米ドル価値が分散型金融の分野、プロジェクトに預け入れされています。
これ、よく言う年率換算の成長率で言うと200%Upくらいの成長を達成していますよね?まさに伸びている分野といっていいのではないでしょうか。
ちなみに市場占有率は本日紹介するMakerが55.68%で1位となっていますが、2位のCompoundは有名ブロガー(イ〇ハヤ)さんが100万円単位でお金を突っ込んで話題になっていましたね!( ̄ー ̄)
では、今回説明するステーブルコインのDAIですが、いったん初心者でもわかるように、ステーブルコインの定義から振り返ってみたいと思います。
ステーブルコインの定義は以下のようになります。
ステーブルコインとは・・・一般的には「価格変動(ボラティリティ)の無い通貨」を指し、価格が一定である通貨のことをさします。ステーブルコインの名前ですが、ステーブルには「安定した」という意味があります。
(参照:Coincheck ステーブルコインとは?種類や特徴などについて紹介)
そして、ステーブルコインの種類として
法定通貨担保型➡ドルや円など中央銀行が発行した法定通貨を担保とするタイプ。
仮想通貨担保型➡ビットコイン、イーサリアムなどの仮想通貨を担保とするタイプ。
無担保型➡担保を持たず、需給等によって通貨供給量を調整するタイプ。
があるのですが、「法定通貨担保型」の例として、USDT・Paxos・USDC・TrueUSDなどが基本的には仮想通貨1単位を発行するのに米ドル1単位を裏付け・担保にするという性質を持つのに対して、今回紹介するDAIは「仮想通貨担保型」のステーブルコインという位置づけになります。
法定通貨担保型の仮想通貨が、例えばその裏付けとなる通貨(例:米ドル)と値動きが連動するのに対して、仮想通貨担保型の仮想通貨はその裏付けとなる通貨(例:ビットコイン)と連動するはずですが、それでは裏付けとなる仮想通貨の値動きが激しすぎて日常決済や価値保存の観点から使い勝手が悪いという事で、ソリューションとして生まれたのが米ドルに連動する仮想通貨担保型のステーブルコイン、DAIになります。
DAIは基本的にはイーサリアム(という、時価総額がビットコインに次いで2位の仮想通貨)を担保にしていますが、値動きはイーサリアムと連動はせず、米ドルと同じ値動きをするように設計されています。
DAIが仮想通貨を担保にしながらも、米ドルと連動するようにするため、MakerDAOというプロジェクトがMakerという(いわゆる一般的にいわれるような価格変動の激しい)仮想通貨が関係してきます。
言い換えると、MakerDAOというプロジェクトが、Makerという仮想通貨とDAIという仮想通貨を仕組んでいるととらえていただけるとわかりやすいかと思います。
以下で詳しく見ていきたいと思います♬
先ほどMakerDAOというプロジェクトがDAIとMakerを仕組んでいると説明しましたが、MakerDAOというプロジェクト名の由来はMakerという仮想通貨を自律分散型の組織(=Decentralized Autonomous Organizationのこと。略してDAO)で運営しますよという事を示しています。
自律分散型組織とは、政府や中央銀行、経営者などの特定の管理者を置かず、契約プロトコルにより世界中に散らばったネットワーク参加者・利害関係者がインセンティブ設計などにより組織を自律的に管理する仕組みのこと。
では、どのような管理の仕組みでMakerとDAIという仮想通貨を運営しているのか、以下で見ていければと思います。仕組みが若干複雑ですが、ここさえ乗り切れば後はその仕組みが信頼できるかどうか判断するだけなので頑張ってください!
まずはじめに、特定の企業なり団体がイーサリアムを持っていて、これを担保に資金を調達したいと考えていることを想像してみてください(一般的な企業が不動産を担保に運転資金などの借り入れをするイメージです)。
【需要サイド】
企業(借り手)…イーサリアムを担保に資金の借り入れがしたい(´-`).。oO
そこで登場するのがMakerDAOの仕組みです。イーサリアムを担保にDAIという米ドルとほぼ値動きを共にする仮想通貨の借り入れが可能となります(実質的には米ドルを調達可能となる)。
【DAO(自律分散組織)の仕組みで提供すること】
・イーサリアムなら担保価値の2/3に当たるDAI(米ドル)を貸しますよ!※1
・その代わり手数料はMKRで払ってね! ※2
・担保価値が割れた場合は自動清算させてもらってペナルティも貰うよ! ※3
※1 例えば300ドル分のイーサリアムを持っていたら、最大で200ドル分のDAIが借りられるイメージです。
※2 MKRとはMakerトークン(仮想通貨)のこと。また、手数料とは具体的には時間の経過とともに債務に累積された安定化手数料を指します。安定化手数料は確認時点で12.5%(/年)となっています。
※3 ペナルティは確認時点で13%となっており、担保価値が一定割合を下回ると担保としているイーサリアムから自動的に徴収されます。
一方で供給サイドをみてみるとこちらは単純にDAIの貸し手を想像してください。
【供給サイド】
預金者(貸し手)…DAIなら米ドルと価格が固定されていてただ単に持っていても仕方ないから、金利が貰えるなら貸しますよ!
文字ではなかなか想像しづらいと思うので、実際の数字を当てはめて図示してみたいと思います。
【▼MakerDAOを使った借り手と貸し手の契約関係図】
上の図の流れを時系列で説明すると…
①イーサリアムを保有している人が、新たに資金を借り入れたいと考えています。
②MakerDAOの契約プロトコル(担保付債務ポジションというMaker独自のスマートコントラクト)へ、イーサリアムを担保提供します。
③提供されたイーサリアムを担保にMakerDAOの仕組みがDAIを新規発行します。
④DAIを借りた「借り手」は時間の経過とともに発生する安定化手数料(=一般的にはローン金利のような性質をもつ)を払うことで担保価値が一定割合を割れない限りDAIを自由に使うことができるます。
⑤ポジションはいつでも清算可能です。清算時、借り手はイーサリアムを返却されますが、借りていたDAIも同額返済しなければなりません。また、安定化手数料をMKRトークンで支払わなくてはなりません。
といった感じでしょうか。
全体的な流れは以上のような通りなのですが、正直この図はわかりやすさ重視で説明しており実際の仕組みはもっと複雑です。
注:複雑な仕組みを説明するので、実務的・技術的な部分に興味のない方は次の(補題)項目は読み飛ばしてください!
MakerDAOの仕組みを使ってDAIの貸し借りを行うと簡単にいっていますが、裏で動いてる技術はイーサリアムのスマートコントラクトを使った担保付債務ポジション(Collateralized Debt Positions、略してCDP)という仕組みです。
上の図で示した通り、主にイーサリアムなどの担保資産を持っている人は誰でもそれを活用し、担保付債務ポジションというMaker独自のスマートコントラクトを通じてMakerプラットフォーム上に担保をロックして新規にDAIを発行できるのですね。
なので、上の図で示した例では貸し手と借り手がP2P(1対1)でお金を融通しあってるように見え誤解を与えるような図になっていますが、実際のところは担保付債務ポジションを持つことによって借り手には新規にDAIを発行するだけで、DAIを貸したい人(貸し手)はいてもいなくても構いません(あえてわかりやすさ重視の図にしています)。発行されたDAIは将来的に、担保としてロックされたイーサリアムによってその価値を棄損しないように保護されながら、返済され、また返済されたDAIはバーンされるためDAIの数量が新規発行によって増え続ける一方ということにはなりません。
また、担保付債務ポジション(CDP)を使う理由は、国や特定の企業などの中央集権型の第3者を介在させずスマートコントラクトで契約を完結させることができるからだと理解してください。ここが自律分散型といわれる肝の部分でもあります。
ホワイトペーパーでは価格安定メカニズムとして目標価格の設定、目標レートフィードバックメカニズム、感度パラメーター、グローバル決済(プラットフォームの強制決済と巻き戻し)、グローバル決済の具体的な手順などが定められています。
価格安定化構造については以下のブログが詳しいです
MakerDAOは、ICOを行わず機関投資家から資金調達をしている(参考:アンドリーセン・ホロウィッツ、ステーブルコインのMakerDAOに17億円投資)のですが、出資に際し対価として渡されるのはステーブルコインのDAIではなくMKRになるという理解です。MKRトークンは担保付債務ポジション(CDP)で発生した手数料を支払うために使われ、支払われたMKRはバーンされる仕組みになるため価格上昇圧力が働きます。そういった意味ではMKRトークンの価格上昇の可能性は、MakerDAOを利用したDAIのレンディング需要が増えれば増えるほど、手数料的としてMKRトークンが多く必要になるため希少性が上がっていく(価格上昇がしやすい)仕組みと言えそうです。
ただし、DAIの価格が急落した際などにはMKRを新規発行して資金調達を行い、DAIの買い支えなども行われる性質もあるため、一概に買い圧力のみが発生するものではありません。ここがMKRトークン保有者としてもDAIの価格を安定させようとするインセンティブを与えられる点でもあります。
また、MKRはガバナンストークンとして、アクティブな提案への投票をすることができるため、保有数量によってはシステムに重大な影響を及ぼすことが可能となります。
次にDAIをめぐる金利動向について説明していきたいと思います。
わかりやすさを重視するあまり、これまでの説明で誤解を与えてしまっていそうですが、MakerDAOのページではDAIを貸すことはできません(借りることはできる)。複数担保型Dai(Multi Collateral Dai)が導入される段階でDAIに金利が付き始めるというニュースはあるようですね。
MakerDAOの公式ページ:https://cdp.makerdao.com/
MakerDAOの公式ページではイーサリアムを担保にDAIを借りたい人が担保付債務ポジション(CDP)を利用したDAIの借り入れを行うことができるのみで、DAIを貸したい人は基本的にはMaker以外のプロジェクト(例:Compound、Fulcrum、dy/dxなど)を利用する必要があります。
なので、MakerDAOの使い方を検索すると、大体がイーサリアムを預け入れてDAIを借りる方法が出てきます(参考:MakerDAO のステーブルコイン DAI とは!? スマホでの発行方法!)。
ただ個人的にはMakerDAOでもっとも魅力的な点は米ドルとソフトペッグされたステーブルコインであるDAIを貸して7%を超える利回りを預金利息的に稼ぐことにあると思っています。
よく考えてみてください、イーサリアム100ドル分を預けて66ドル分のDAIを借りることができ、その66ドル分のDAIを使ってイーサリアムを買って…としていけば確かにイーサリアムの大量保有者はレバレッジをかけてイーサリアムを保有しつつ、担保となるイーサリアムの維持率を安定化する事ができますよ、というのがMakerDAOの本来的な使い方ですが、個人投資家目線ではイーサリアムをレバレッジをかけて購入したければ取引所のマージン取引をすればよく、わざわざMakerDAOを使う必要はありません。
むしろ個人投資家目線で注目すべきはMakerDAOのエコシステムを取り巻く、ステーブルコインなのにもかかわらず利回りが7%を超える利息を出すレンディングなどの業者にあり、特に同じく米ドルにペッグされたステーブルコインのUSDTなどの保有者などはこの辺の利回り動向にもっと意識的になるべきと思っています。
実際、冒頭紹介したDeFi Pulseというサイトの利息を稼ぐ(Earn Income)という項目(https://defipulse.com/income)では、CompoundをはじめとしたサービスがDAIを預け入れるだけで7%を超える利回りを出しますよ、という表記が確認できると思います。
なので、実際にDAIを貸し出ししたいという方がいたら、まずはDeFi Pulseなどを調べていただき、プロジェクト名+使い方などでググっていただくと使い方などがでてくると思うのでそちらを参照してください(わたしも今後実際に使ってみた記事を書いていきたいですが、まずは導入記事としてこのような内容の記事になっています)。
なお、時価総額的に見てもMakerトークンはCMCの時価総額ランキング23位(時価総額5.3億ドル)、DAIの時価総額はランキング62位(時価総額8721万ドル)と仮想通貨市場に存在感を見せており、今後DeFiの市場規模が大きくなってくるにしたがって、ステーブルコインDAIの高利回り性はますます注目を集めてきそうな印象を持っています!
ここまで長々とDAIとMKRをめぐる動向をお伝えしてきましたが、最後に注意喚起を…💦
ステーブルコインなのにもかかわらず7%を超える利息を出す、というのは金融の世界ではリスクプレミアムという言葉で説明されます。
リスクプレミアム・・・投資家がリスクのある商品(危険資産)に投資する際、リスクのほとんどない商品(安全資産)に比べて期待する上乗せ分のリターン(収益、運用利回り)のこと。
参照:コトバンク
語弊をおそれず簡単な例を出して言うと、日本国債はマイナス金利の時代、米国債は10年国債で年率1.722%(参照:楽天証券 債券・国債利回り)しかつかないなど、一般的に無リスク資産とされる国債に対しては現状は雀の涙ほどの金利しかつきません。
また、日本の銀行に10年定期預金をしても利息は年率0.001%(参照:MUFJ スーパー定期)の利息しかつかないのはすでにご存じの通りかと思います。銀行はつぶれる可能性のある一般企業なので0.001%という利息と、つぶれることのない国が発行する国債の利回りが-0.215%(参照:楽天証券 日本国債10年物)だとして、その差額がリスクプレミアムと呼ばれる部分になります。
今回紹介したDAIというのは投資商品としてみた場合、上の例で挙げたような無リスク資産ほど安全性が確保されておらず、今後失敗する可能性もあるけど、その代わり高い利回りを出せますよ、そのリスクを理解して(DAIを預け入れる形で)投資してくださいね、7%というのはそのリスクに対する保険料(プレミアム)ですよ、と言っているのと変わりありません。
かつて銀行の定期預金が5%の利息を出していた時代もあったんだと思いますが、これは言いかえると銀行が破綻して銀行に預け入れたお金が返ってこないリスクに対する対価として5%の利息を出しますよという意味だったはずで、銀行がよほどのことがない限りつぶれない、つぶれても1000万円までは返すように法整備しますよ、と仕組みを整備してくるとその金利は徐々に下がってきます。
MakerDAOに関しても今回調べていて、半年以上前の記事では9%を超える金利が出しいたようですが、わたしが調べている時点では7%程度の金利ですので、ここ最近のDeFiの調子のよさというか、盛り上がりもあってかMakerDAOに対する評価が上がるに従って、金利(稼げる利息)が若干下がってきている傾向も確認できるようです。
ステーブルコインで7%を超える利息!と注意をひくような書き方をしていますが、7%というのはMakerDAOの仕組みが今後うまくいかない可能性もありますよというリスクへ対するプレミアム(保険料)としてそれだけ高い利息を貰えますよ、と読み替えていただき、リスクがありつつも、USDTなどをただ放置しておくだけならUSDTをDAIに変えて利息を稼ぐ手段もあるんだ、他の選択肢もあるんだという風に考えてくれたら本記事を書いた意味があったのかな、と思います。
最後までお読みいただきありがとうございます。